2014年10月の記事一覧

民力指数

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数学月間SGK通信 [2014.10.28] No.035
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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今年の「数学月間懇話会」で松原望さんから「民力指数」についての
講演がありました.指数といえば「消費者物価指数」などが有名です.
数学で指数というのは桁(比率)の表現なので,例えば,基準年の物価
に対して何倍の変化があったかという「消費者物価指数」を,
指数というのは適当でありましょう.

しかし,「民力指数」の指数の意味はこれとは違うようです.
地域の「民力指数」とは,正の数値(スカラー)で,その地域の
生産・消費・文化,および,人口などの基本指標の関数として
(26種の経済統計量の関数として)定義されます.
これは朝日新聞が30年以上前に発案した定義だそうです.

地域の「民力指数」は,地域の経済活動力の表現になります.
都道府県に対する「民力指数」は全国を1,000に,市町村に対する
「民力指数」は全国を100,000になるように規格化します.

「民力指数」は数学的には測度であるので加法的であることが
松原さんの講演で指摘されました.
地域Aと地域Bの合併の「民力指数」の試算も合理性があり
色々な利用が期待できます.

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結晶で見られる多面体(その2)

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数学月間SGK通信 [2014.10.21] No.034
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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◆黄鉄鉱の結晶粒の外形には,多面体がいろいろ現れることを,
028号で述べました.整理すると下図のようです.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/55/16194255/img_0?1413100917

さて,この図の中に正12面体や正20面体の外形が見られるようですが,
結晶(周期的な内部構造をもつ)では,5回対称軸は存在できず,
5回対称のある正12面体や正20面体は外形にも生じないはずです.
詳しく調べてみると,黄鉄鉱の正12面体のような5角12面体は,
(2,1,0)面で囲まれているようです.→◆ミラー指数
両者の多面体で二面角の比較をしてみましょう:
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黄鉄鉱    126.89° (2回軸を挟む二面角)
正12面体  116.57°
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黄鉄鉱の外形(5角12面体)は正12面体ではありません.

◆ミラー指数
ミラー指数とは面の傾きの表示です.
下図のブロックのサイズは,x,y,z各1単位
(x,y,zの各単位は等しくなくても良く,斜交軸でもかまいません)
例えば,(2,1,0)面の,x軸,y軸,z軸との切片は,1/2,1,∞です.
切片の逆数の比をとると,ミラー指数 2,1,0 が得られます.

結晶は単位ブロックが積み重さなった周期的な世界です.
周期的な世界(格子点が並んだデジタル世界)の格子点を載せた
面の傾きは有理数ですから,すべての結晶面のミラー指数は整数となります.
http://sgk2005.sakura.ne.jp/htdocs/?action=common_download_main&upload_id=88

周期的な世界に5回対称軸は存在できませんので
結晶(周期的な内部構造を持つ)は,正20面体の外形になることはできません.
(注)“準結晶”には5回対称がありますが,周期的な世界ではありません.
◆黄鉄鉱の6面体,5角12面体と準結晶(正12面体)
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/55/16194255/img_1?1413100917
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/55/16194255/img_2?1413100917
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/55/16194255/img_3?1413100917

◆柘榴石garnetも立方晶系の結晶構造ですので
外形もさいころのような対称性を示します.
菱形12面体~24面体(これらは正多面体や半正多面体ではありません)
の晶系の変化があります.
http://www.museum.tokushima-ec.ed.jp/bb/chigaku/minerals/img/2-32.jpg

写真はwebで拾った岩手県和賀仙人鉱山産の柘榴石結晶です
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/36/16196636/img_0?1413101685

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大阪大学オープンキャンバス

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数学月間SGK通信 [2014.10.14] No.033
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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大阪大学理学部数学教室は,
現代数学の様相と数学研究の実際,自然科学や社会科学に及ぼす数学の影響,
文化としての数学の在り方などについて,多角的な視点から易しく解説する公開講座を,
高校生を対象に夏休みのこの時期に開催しています( オープンキャンパスも同日実施されます).
まさに数学月間の模範になるイベントで,毎年,杉田洋教授より情報を頂きSGKのwebに掲載しています.
今年のテーマは,“多面体の不思議”でした.
2014年8月12日(火),10:00~12:00
会場:大阪大学豊中キャンパス 理学研究科 D棟 D307教室
講師:村井 聡(情報科学研究科情報基礎数学専攻 准教授)
毎年,興味深いテーマが選ばれ,私も参加したいと思いつつまだ参加できずにおります.
今回のイベントでは受講生が殺到し,準備した教室に定員の2倍近い人(約100人)が
集まり,来年は教室の選択を考える必要がありそうと伺っております.
(以下は私の勝手な解説ですみません).
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多面体はとても古くから考えらてきた図形で、紀元前のギリシャ時代には既にその性質が調べられていました.
多面体で基本的な定理は,オイラーの定理V+F-E=2(3次元)が有名です.
これを使うとプラトンの正多面体(凸多面体)が5つというのがすぐ証明できます.
正多面体というのは,面が1種類の正多面体でできており,どの頂点のまわりの状態も同一なものです.
正多面体の記述は,定義の本質を捉えているシュレーフリの記号を用います.
正p角形が頂点にq個集まっている(同じことだが辺がq個集まっている)状態は,{p,q}と記述されます.
3次元の多面体は,面が3個以上集まらないと作れませんし,面が正3角形の場合には,
6個集まると平面になってしまいますので,正3角形の面をもつ凸多面体は,{3,q},q=3,4,5しかありません.
q=3の場合は正4面体,q=4の場合は正8面体,q=5の場合は正20面体です.

全ての面が合同な正3角形であるが正多面体でないものまで数えると8種類になり
これらをまとめてデルタ多面体と呼びます.
1種類で空間を隙間なく充填できる正多面体は立方体だけですが,
2種類の組み合わせで空間を充填できる正多面体は,正4面体と正8面体です.
結晶学では良く知られていることですが,面心格子と体心格子というのも立方体と同じ対称性を持ち,
それぞれのウイグナー-ザイツ胞(デリクレ胞とも言う)は,それぞれ菱形12面体,切頂正8面体になります.
数学と諸科学[科学や造形]の関わり合いで現れる多面体の性質は,非常に興味を惹く話題です.

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「化学の日」10月23日を手本に

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数学月間SGK通信 [2014.10.07] No.032
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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「化学の日」10月23日は,化学4団体(日本化学会,化学工学会,日本化学工業協会,新化学技術推進協会)が
昨年制定しました.その日を含む月曜日から日曜日までの1週間が「化学週間」です.
もちろんこれはアボガドロ数6.02×10^23に因んでいます.
これも米国が先でNational Mole Foundationが10月23日をMole Dayと定め,
10月23日6時02分にイベントを行うなど色々な活動が盛んだそうです.

日本の「化学の日」初年度の今年は産官学一体となって,化学の普及活動が国民亭イベントとなるように
呼びかけています.我々の「数学月間」もこのような取り組みが必要で,「化学の日」の経緯は手本になります.

*****以下は,化学と工業,Vol67-9,2014,玉尾皓平氏(日本化学会前会長)の記事からの抜粋です*****
◆2年前の会長就任時に提案した2つの具体的提案を紹介します。
「全国一斉オープンキャンパス」:これが 「化学の日」と直結する提案です。
各大学. 研究機関や化学企業で独自に行っているオープンキャンパスやオープンファクトリーを,
「化学の日」「化学週間」にできるだけ 曰程を合わせて一斉に実施いただくことで,
国民的イベントとして認知度を高めようとの取組みです。
「『夢・化学-21』の全国統一ブランド化」: 「夢・化学-21」キャンペーンの強化策として,
そのロゴマークを意匠登録し,上で述ベたようなこれまでのすべての化学啓発活動にロゴマークを付して
ビジビリティの向上を目指すものです。

いずれもいわば全国区の活動ですが,期間限定型で集中的に盛り上げる企画と,
通年活動型で全国津々浦々いつでも「夢・化学-21」ロゴマーク付きのイベントが行わ れている,
という性格の異なる活動を2つ準備し,足並みをそろえて最大の効果を狙おうとする点が特徴です。
提案4団体だけではなく,経済産業省や文部科学省,さらにはマスコミ関係者の賛同も得ており,
産学官一体となった初めての本格的な取組みで,化学の啓発活動,
市民権獲得にとっての決め手となるものと期待しています。

◆「化学の日」「化学週間」のイベントは?
「化学の日」を長く定着させるためには. 活動現場に新たなロードを課さないことが 重要と考えます。
新たに企画するのではな くて,現在行われているイベントの開催日 をできるだけ「化学の日」「化学週間」
の日程に合わせていただくことで.最大の効 果を上げようとの考えです。
すでに,各支 部や産業界に対して,日程調整のご協力を お願いしています。
ただ,初年度の今年は,「化学の日@開成学園」「化学週間@東京大 学」「子ども実験ショー@近畿」
などのキックオフイベントを企画中です。
また,各種一般紙や月刊誌「ニュートン」「化学」「現代化学」「子供の科学」などへの
PR記事掲載の企画も進んでいます。

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