2017年1月の記事一覧

美術・図工 雪の結晶★

「雪は天から送られた手紙(中谷宇吉郎)」という言葉がありますが,雪の結晶が生まれ・成長した気圏の状況により,様々な形の雪片が観察できます.これらの写真の中で,絶対にありえない雪の結晶が2つあります.どれとどれでしょうか?

 (以下は,追補)
雪片の形の対称性は6mmです.これは雪(氷)の結晶の内部構造(分子配列)が外に反映されたものです.以下に氷の結晶構造の2次元模式図を示します.水分子はH2O(酸素原子O●の両側に水素原子H●が結合し,その結合角度は約120°)で,両端の水素原子は,隣の分子の酸素原子と弱い相互作用(水素結合)をしています.そのためこのような6mmの対称性の結晶になります.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


(注)雪片(雪の結晶)の形は,デンドライトという形です.
これは,比較的速く結晶が成長するときにできます.
金平糖も似たような現象で出来るデンドライトといえますが,
1粒の金平糖全体で砂糖結晶の方位が揃った単結晶というわけでは
ないので,それが雪の結晶とは違うところです.

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美術・図工 美しい図形と不思議な空間・続

東京ジャーミイの礼拝ホール

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


  

 

 

 

 祭壇の方向(西)に向かって礼拝

東京ジャーミイは,東京,代々木上原にあります.トルコ文化センターも併設されています.
この地には,昔,ロシアカザン州から避難したトルコ人によりモスクが建てられていました.
私の子供の頃,近隣の者は「マジスト寺院」と呼んでいた風情のあるモスクでした.
老朽化のため1986年に取り壊され,東京トルコ人協会の人々が中心になり,
東京ジャーミイの建設が1998年から始まり2000年に完成しました.
トルコから送られた資材を用い,オスマントルコ様式で設計され,2階の礼拝場のドームが印象的です.仕上げにはトルコ人建築家や職人が100人もかかったそうです.
毎日礼拝が行われコーランの声が流れます.特に金曜日には300人以上のイスラムの人々が礼拝に訪れます.皆,西に向かって絨毯にすわり礼拝します.ステンドガラスに西日が入ると,青い光線が,青緑色のカーペットに重なり,とても美しい光で溢れます.
イスラム教は偶像崇拝をしません.幾何学的な完璧な規則で描かれた模様が
宇宙を作った神の原理を思わせるのでしょう.
スペイン,グラナダのアルハンブラ宮殿の,さまざまな幾何学的な繰り返し模様を
表現したタイルは美しいので有名ですが,ここ東京ジャーミイも東アジアでもっとも美しいモスクと言われます.ここで見られるいくつかの幾何学模様を取り上げ鑑賞しましょう.

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美術・図工 美しい図形と不思議な空間

説教壇

 

 
東京ジャーミイ(代々木上原,東京)にある装飾です.写真左Fig.1は説教壇の横にある装飾です.写真右Fig.2はステンドグラスです.
どちらも複雑な図形ですが美しい.
これらの図形の構成を調べて見ましょう.

 

 

 


  Fig.1                 Fig.2 
■Fig.1の図形の構成を,以下のFIg.3で説明します.
Fig.3の一番左は辺の長さが黄金比の2等辺三角形です.
つまり底辺を1とすると,等しい2辺は1.618...,頂角は36°,両底角は72°です.
真ん中の図は,正5角形の中にできる星形で,
星の頂角は黄金比の三角形にでてくる頂角36°と同じです.
一番右の図は,この星型とこの星型を180°回転したものを重ね合わせたものです.
東京ジャーミイの美しい図形Fig.1には,星形を2つ重ね合わせたものが中心にあることに,お気づきでしょうか.

 

 

 

Fig.3

 

 


Q:星形をこのように重ね合わせた図形の対称性は?
A:まず,星形の対称性は.点群5mです(5は5回回転対称軸,mは鏡映面).
2回回転対称軸2が生じるように重ね合わせたので,
重ね合わせた星形の対称性は,結局,2⊗5m=10mmの点群になります.
あるいは,星形の点群5mを「法」にすると,10回回転操作(36°の回転)は
{1,10(mod5m)}のような,位数2の対称操作として理解できます.
注)数学の言葉を使うと,次のように表現されます.
点群10mmは,点群5m(これは点群10mm内の正規部分群)を核として,
群{1,10(mod5m)}に準同型.
この考え方は,奇妙なもので,36°回転を2回続けると元の星形に重なるから
これを振り出しに戻ったと見なすと,我々の3次元ユークリッド空間では
360°回転しないと元に戻らないのに,この奇妙な空間では,
2x36°=72°回転すると元に戻ることになります.
■Fig.2のステンドグラス窓の模様は,繰り返し模様の一部です.
この繰り返し模様をFig.5に再現してみました.

 

 

 

 

 

 


       Fig.4             Fig.5

「正5角形と180°回転した正5角形を重ね合わせた」星型パーツ(点群10mm)を内角が108°と72°の菱形を単位胞とする格子に配置して(Fig.4)繰り返し模様を作ります(Fig.5)です.
この菱形格子は正6角形(正3角形)のように見えますが,
上下の方向が左右の方向に比べてすこし長く,歪んでいます.
正5角形や正10角形(どちらも最低でも5回対称性がある)を周期的に並べることは不可能ですから,5回対称性が全域で支配するような格子はできません.「正5角形とその180°回転したものを重ね合わせた」星型パーツの対称性(10mm)は,そのパーツの内部だけを支配する(局所的)ものです.
この繰り返し模様の対称性(平面群)には,2回軸と水平および垂直に鏡映面があり,記号でいうとP2mmの対称性です.

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電力の自給自足を目指す

■電力を遠方の原子力発電所の様な大規模施設で発電し,消費地に送電するのは無駄ではないでしょうか.それぞれの地域で発電し消費する(地産地消)「分散型」がこれからの合理的なシステムです.遠距離送電も原子力発電も止めましょう.家庭の屋根で太陽光発電しても,100V交流に変換して東電に売っていたのでは,原子力発電の電力の一部とされ,現在の課金システムの枠内です.将来目指すべきシステムの姿は,大規模な送電網から独立した電気エネルギーの自給自足です.
皆さんの家電で必要となる電気の質を考えて見ましょう.ラジオ,TV,パソコン,携帯,発光ダイオード,...これらはどれも,直流(5V,9V,12V,15V,19V,24Vなど)で動くものです.交流100Vのコンセントから使うために,わざわざそれぞれACアダプターが付属し,アダプターだらけで嫌になります.掃除機や工具の様なモーターを使うものでも電池で働きますし,冷蔵庫やエアコンも車載では,12V(あるいは24V)のバッテリーで動かしているではありませんか.交流100Vはいらないということになりませんか.低電圧直流用の家電は,需要が出れば生産できます.その他,各種ヒータや湯沸かしなどは,電気で加熱する必要もありません.目的に合った電気以外のエネルギーもさまざまあります.何でも電気でやろうとするのは止めましょう.
■さて,皆さんの家庭に送電される電気は,ほとんどが,100Vの交流です.電気が送られてくる2本の電線の一方は接地されていてほとんど0V,電線の他方の電位は,±100V(正確には±141V)の間で周期的に変動(sin波の形)しています.その周波数は50Hz(東日本),あるいは60Hz(西日本)です.さわると感電し危険な方は,±100Vで周期的に変動している方です.家庭のコンセントを観察すると,コンセントのプラグの挿入口の切れ込みの長さに違いがあるでしょう.切れ込みの長い方が接地側.こちらを触っても感電しません(電気工事がJIS規格通りに正しく実施されていればの話です).直流は,電圧の周期的変化のない電気で,電池からの電気はその例です.
■エジソンがアメリカ合衆国で電気事業を始めた頃(1880年代),発電所でできた電気を送電するのに直流が良いか交流が良いかの議論がありました.エジソンが直流送電(DC),それに対して,ウエスティングハウスとニコラ・テスラが交流送電(AC)を主張しました.直流送電/交流送電のどちらにも長所・短所があります.例えば,交流は,トランスで変圧できる利点がありますが,表皮効果で電線表面ばかりに電流が集まり電線内部が無駄になる欠点もあります.結局,エジソンの直流送電方式で,アメリカ合衆国の電力事業が始まりましたが,1888年の大寒波のときにニューヨークでは,雪の重みで直流電力送電網が崩壊するなどの事件がありました.ナイヤガラ発電プロジェクトでは,GE社+エジソンに対し,ウエスチングハウス社+テスラが契約を勝ち取り.バッファロー工業地帯への交流送電が1896年に開始されました.現在まで,直流送電/交流送電のどちらも,世界各地でそれぞれに実用化されています.電車では架線に直流を送電しているのはご存知でしょう.
■しかしながら,発電および送電の主流は,現在では交流です.
電力は電圧Vと電流Iの積V・Iですから,同じ電力を送るにも,電圧を高くすれば電流を小さくできます.送電線での発熱による損失は,電線の抵抗をRとすると,R・I^2ですから,電流の2乗に比例し,電流が小さいと損失が減ります.従って,高圧送電方式が採用されています.高圧送電のときは交流送電の方が有利なのは,トランスにより容易に変圧できるからです.
■ここで,立ち止まって現状を見てみましょう.現代は半導体技術の発展により,直流のままでの変圧(DC-DCコンバータ)は容易です.変圧原理は,ACを介することには変わりないのですが,半導体内部で昇圧も降圧も容易にできます.需要のある電力も低電圧の直流になりました.真空管から半導体に,ブラウン管からLCDに,白熱電球からLEDに変ったのです.消費する電力も桁違いに低下し,高電圧でもなくなりました.そのため,太陽光パネルで発電した低電圧の直流電力を,送電せずにそのまま消費することが出来そうです.ただし,このためには鉛畜電池などの2次電池の用意が新たに必要となります.
■私は今,12Vの「ディープサイクル鉛蓄電池」(32Ah)と太陽光パネル(50W級の小型のもの)を用いて検証実験中です.この実験程度の電池(1万円以内)の蓄電量ですと,300W×1時間程度の電気量の貯えしかできません.LED照明などは,たいして電力を消費しませんが,冷蔵庫は1時間40W,冷房は1時間90W程度の電力を消費します.太陽光で発電できない夜間は,電池に蓄えられた電力を使いますから,何を何時間動かすか節約を考えましょう.そうでないと,際限なく電池の容量を増設することになります.DC-DCコンバータによる直流出力(5V,19V,24Vとバッテリ-直結の12V),および,DC-ACコンバータによるAC100Vが利用可能です.使用機器に合わせた1度の変圧は避けられませんが,コンバータの効率は90%以上なのでロスは最小限です.昇圧と交流化後にAC100Vの東電の送電線に上げ,AC100Vの送電線から機器に必要な低圧直流に再度変換する2度手間と比べるとロスがありません.

日刊ベリタ(2017.01.09)に掲載

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アラビア数学奇譚より

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数学月間SGK通信 [2017.01.03] No.148
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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皆様,新年おめでとうございます.こちらは晴天に恵まれたとてもよいお正月でした.
良い年であることを祈ります.今年は,ゴミ屋敷状態だった私の部屋から,
書類ファイルや文献コピーファイルなどを,不要なものを捨て,必要なものを選んで搬出しました.
何も正月にやりたくなかったのですが,皆が留守のときでないとできないので,
31日,1日,2日と突貫工事的に働きました.まるでブラック企業の社員のようです.
毎日こんな仕事をやらされたら体がもちません.
重い段ボールを持ち上げて運び,ちょっとまた腰痛が心配です.予定通り2日の夕方に一応けりをつけました.
今年はまだ街にも,神社にも行っていません.異例な年の始まりでしたが,良い年にしたいものです.
ですから,私にとっては明日が元旦というこにします.
正月ですので,「アラビア数学奇譚(白揚社)」から,軽い問題です.お考えください.

■(第3話より)
「あっしらは兄弟なんですがね.ここにいる35頭のらくだを遺産として3人で相続したんでさ.
で,おやじの遺言によれば,半分があっしのもん,3分の1が弟のハメド,9分の1が末のハリムのもんなんです.
とはいうものの,どう分けりゃいいのか,さっぱりわからねえんで」
35頭の1/2も,1/3も,1/9も割り切れません.
この問題に出会った数え人(ベレミズ)は,友人と一緒に,
1頭のらくだでバクダットに向って砂漠の旅の途中でした.
うまく解決したベレミズは自分のらくだ1頭を手に入れることになります.....
さて,どうしたのでしょうか?
(コメント)3人合わせても残ります.1-(8.5/9)=0.5/9=2/36

■(第28話より)
2,025ですが,ちゃんと計算すれば平方根が45であることがわかります.
つまり,45x45は2,025ということです.ところで,45は2,025をまんなかで分けた2組の数字,20と25の合計でもあります.
同じことが3,025でも起こります.この平方根は55です.
55は3,025を2つに分けた30と25の和でもあるのです.同じことは9,801についても言えます.
平方根は99,つまり,98+1なのです.
これら3つの例から,不注意な数学者は次のような規則があると考えてしまうかもしれません.
4桁の数字の平方根は,4桁の数字をまんなかから左右に分けた2組の数をたしたものである,と.
明らかに誤りであるこの法則は,3つの実例から導き出されました.
数学では,単なる観察だけでは真実に到達できません.
ことに,こうした誤った推論を避けるように注意を払う必要があります.
(コメント)99まであっても,100回目で違えば正しくありません.証明するとは,そのようなことが起きないことです.

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