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美術・図工 円による反転の性質★★

■円による反転鏡映の性質
①反転円の円周上の点は,反転しても元の点と同じ位置.
②反転では,円は円に変換される(直線も半径∞の円の仲間)
下図に反転円(赤い円)による,反転鏡映の例を示します.
●図1・反転円Oと交差する円Cは,交差の2点を共有する円cに変換される.
●図2・反転円Oと直交する円Cは,自分の上に変換される.
円周に直交するような反転円で分断された円の2つの部分は,反転円によるそれ
ぞれの鏡像になる.
●図3・反転円Oの中心を通る円Aは,直線aに変換される.
特に,円Bが反転円Oと交差する場合は,交差する2点をよぎる直線bに変換される.
③反転円が直線なら,普通の鏡映像になります.
直線鏡の組み合わせで作られる映像は,良く知られた万華鏡です.
反転円を用いたアポロニウスの窓も拡張された万華鏡の映像と言えるでしょう.

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美術・図工 エッシャーの「極限としての円」★★

■エッシャーのトリック(引用先:コクセター論文)

M.C.エッシャーの「極限としての円」Circle limit IIIを鑑賞しましょう(図左).
この円盤内は双曲幾何の世界(ポアンカレの円盤モデル)です.
この円盤内を旅する人は,円の縁(世界の果て)に近づくほど時間がかかる.
つまり,[世界の果てに到達するには無限の時間がかかる]ようになっています.
この世界で定義される直線(最短時間で移動できる経路)は,円盤世界の縁で直交する円弧です.
エッシャー作品(図(左))の円盤は,魚の流れを示す白い線で分割された双曲面の
[4,3,4,3,4,3]分割のように見えますが,実は図(中)に示すような,黒い線で分割した{8,3}正則分割です.
白い線は,双曲幾何の円盤世界の縁に80°で交差し,直線ではないのです.
図(中)の正8角形の黒い線がこの円盤世界の直線であることは,図(中)に書き込んだ赤い円弧
(いずれも円盤縁で直交する円弧)を見れば理解できるでしょう.
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

双曲平面の正8角形タイルは,双曲平面の直線(円盤の縁で直交する円弧)で囲まれています.
タイルの大きさは円盤の縁に行くほど小さく見えますが,円盤内は無限に広い双曲幾何平面なのですべて同じ大きさです.
1つのタイルの中には4匹の魚がおり中心に4回軸があります.
正8角形の頂点には3回軸があり,魚の白い流れは3回軸の場所に集まっています.
エッシャーは{8,3}分割に用いる直線をわざと隠し,白い流れが分割であるようなトリックを見せます.
もちろん,白い流れの円弧(直線ではない)に関して鏡映対称はありません.

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美術・図工 双曲面万華鏡(コクセターの万華鏡)★

■直角3角形(7,3,2) によるコクセターの万華鏡

正7角形のタイルは,直角3角形(7,3,2)[内角の組(π/7,π/3,π/2)の3角形のこと]の14個に分割できる.
直角3角形(7,3,2)を鏡室とする万華鏡を,コクセター万華鏡と呼びます.


 

 

 

 

 

 

 

 

 

(1) {7,3}の正7角形タイル(赤)張り. (2)   (1)の双対である{3,7}の正3角形タイル(緑)張り.(3) 菱形タイル(青)張り.

 

 


3枚鏡(直線鏡2枚,円弧鏡1枚)のコクセター万華鏡により,
ポアンカレ円盤内の双曲平面は市松模様に塗られます.
生じるタイル張りは,正7角形のタイル張り,正3角形のタイル張り,菱形タイル張り,に見えます.

 

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美術・図工 エッシャー作品の生まれるまで★

■エッシャー作品の生まれるまで

 

 

 

 

 

 

 

 


コクセター               エッシャー
直角3角形(6,4,2)            直線魚のモチーフ    「極限としての円I」
双曲面の{6,4}分割を細分                       Circle Limit I

コクセターとエッシャーはオランダで開催された1954年の国際数学者会議で出会いました.
1958年にコクセターはこの分割を掲載した論文*をエッシャーに送り,
これがエッシャーの「極限としての円」の作品群を生むことになります.

*By S.H.M.Coxeter
Crystal Symmetry and ItsGeneralizations (published in the Transactions of the RoyalSociety of Canada in 1957).

 続く⇒ 極限としての円Ⅲ

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美術・図工 コクセターの万華鏡★

■メビウスの万華鏡とコクセターの万華鏡

■楕円幾何平面の正則タイル張り
球表面が球面正p多角形タイルで{p,q}のように張りつめられているとき,1つのタイルの中を2p個の直角3角形に分割できます.この直角3角形を鏡室とする万華鏡は“メビウスの万華鏡”と名付けます.このときの直角3角形(鏡室)の内角は,それぞれ π/p,π/q,π/2で,この直角3角形を(p,q,2)と表記します.

■双曲幾何平面の正則タイル張り
ポアンカレ円盤の双曲幾何平面でも,双曲正p多角形で{p,q}のように張りつめられているとき,1つのタイルを2p個の直角3角形に分割できます.この直角3角形を鏡室とする万華鏡は“コクセターの万華鏡”と名付けます.
双曲面の{6,4}正則分割の場合の直角3角形(6,4,2)(赤い3角形)を図(左)に,対応する“コクセターの万華鏡”の映像を図(右)に示します.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



■双曲面{6,4}分割の場合の“コクセターの万華鏡”を作る
双極面{6,4}分割の映像を,3角形の万華鏡で作るには,双曲面直角3角形(6,4,2)を用います.この3角形の2辺は平面鏡,残りの1辺は円盤のフチに直交する円弧鏡よりなります.この円弧鏡は,数学的には反転円として定義できるのですが,現実の円柱鏡の反射には収差があるので,数学の定義のように鮮明な万華鏡映像を作るのは困難です.

 

 

 

 

 

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