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2016年2月の記事一覧

凍土遮水壁

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数学月間SGK通信 [2016.02.23] No.103
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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今回は,話題の凍土遮水壁についての解説にしました.海への汚染を止めねばなりません.
■福一の事故から5年が経った.メルトダウンした原子炉の中がどのようになっているのか,
燃料棒のデブリが地下どこまで汚染しているのか,見た者はまだ誰もいない.
廃原子炉からデブリ取り出しの開始は,早くて2021年である.この間毎日,多量の地下水が原子炉建屋の下を流れ,
デブリを浸している高濃度の放射性汚染水と混ざり海に流れ込んでいる.豊富な地下水の流量は日に400トンと言われる.
読者も航空写真を見たことがおありかと思うが,汚染水貯蔵タンクが1,100基も立ち並び,
もはや敷地内にタンクを作る余地のない状態である.1~3号炉の冷却のために注入する水は400ton/日,
建屋地下を流れ去る地下水400ton/日のほかに,原子炉建屋を浸し冷却水と混合する地下水が400ton/日,
従って,建屋地下から汲み出す冷却水が800ton/日で,分離されてタンクに貯蔵される高濃度の汚染水は400ton/日という.
■従って,地下水を原子炉建屋のデ ブリに触れさせずに,バイパスさせ汚染のないまま海に放出したらどうか
という案は当初からあった.地下水脈は地上を流れる川のように迂回させるという工事 はできない.
緊急に短期間で実施できる対策に,トンネル工事などの水止めで実績のある凍土遮水壁を提案したのは
鹿島建設でこの案が採用された.
凍土遮水壁は原子炉建屋と建屋の周りのサブドレインを取り囲む周囲1,500mで,
深さ30mまで冷却パイプを打ち込み地盤,あるいは流水を凍らせるものである.
事業費約350億円は全額国費で賄われ,完成後も凍結を保つために,年間約20億円の電気代がかかるので,
「国による東電の救済策」との批判もある.(北海道新聞,2/18社説)
■2014.4月に凍結し難い箇 所の試験凍結.5月に山側全体の凍結開始が,2015.3月に凍結開始,
さらにもっと計画がずれ込んだ.凍土遮水壁の工事は2014.6月に 開始し,
毎日約500人が働き,2年を費やしてやっと工事が完成したのだ.工事は犠牲者もでる難工事で現場の努力は評価したい.
凍土壁は,トンネル工事での短期間とか,局所現場に適応実績のあるもので,
このように周囲をぐるりと塀のように囲んだり,何年にもわたって凍結を維持した実績はない.
地下水脈の深度が深かったり,多量の地下流水が熱を運び去ったりして凍結できないのではないかと私も心配している.
原子力規制委員会は,凍結を実施 して地下水の侵入を止めると,サブドレインの水位より原子炉建屋中の水位が高くなり,
デブリに触れている高濃度の汚染水がサブドレインの方に出てくるリス クを懸念し,
やっと完成した凍土壁の稼働にストップをかけている.いまさら何を言っているのかと思う.
規制委員会,田中俊一委員長は効果が期待できないと,この件に関しては冷淡である
(2/17田中俊一委員長定例会見,iwj中継).
3月初めに,水位の影響の少ない海側(建屋からの汚染水の排出側)だけ凍結 し,
様子を見ながら徐々に全周の凍結を行うという案を東電が提出し,これを規制委員会が認可して即実施に入る見込みである.
凍結が始まって順調だと8ヶ月 後に,流入地下水は日に90トンに低減されるという(2/15東電定例会見,iwj中経)
■凍土壁工法は,ローコストな救 急的な工法で,すぐ実施でき海洋の汚染を防止することに意味があったのだが,
計画より2年以上遅れ,今稼働しても凍結までまだ8ヶ月もかかる.この間汚染水は海に漏れま くっており,
対策時期を逸しいる.現場の苦労に同情しうまくいくことを望むが,抜本的な解決策ではないのが残念だ.
■規制委員会は,規制値内の汚染水なら海洋に放出してかまわない(抜本的な手立てを打っていない)との方針だ.
しかし,排水規制は放射能の濃度のみで総量は規制されないので,汚染水放出が続くと海洋汚染は深刻になる.
廃液の規制はCs134で60Bq/L,Cs137で90Bq/L,Sr90で30Bq/Lであり,これらの核種が混ざっていれば合計の放射能で規制され,
これら部分成分の濃度はさらに低く規制されるはずである.
ところが敷地内の海側の井戸水から規制値の何千倍もの汚染が観測されているのが現実で,
地下水も高濃度に汚染されている可能性が高い.
海水のモニタ値に変化が出るなら,海水の量を考えればそれはとんでもない汚染で死の海である.
現地漁協は風評被害というが, 食物連鎖による魚の汚染は進んでいる.
このことを考えると,一刻も早い汚染水の排出を止めるべきで,
規制委員会が効果が期待できないなどと無関心を決めることは許されることではない.
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(注)ちょっとわかりにくいのだ が,原子炉建屋をぐるりと取り巻く凍土遮水壁は全部,陸側遮水壁とも呼ばれる,
それは,現存する海側遮水壁に対する名称で,海側遮水壁は,鋼管矢板594 本を使用し
海の前に作った全長約780mの壁(凍土ではない)で,2015年10月26日に作業終了している.
大雨の折などポンプの能力が追い付かずK排水路から高濃度の汚染水がオーバーフローすることがあるのはこの海側遮水壁である.
本文中で,陸側,海側と使われるのは凍土遮水壁の陸側の部分,海側の部分という意味である.

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