層の対称性

投稿日時: 11/23 システム管理者

層と壁紙模様の関係は,帯と縁飾の関係と同じです.壁紙模様から層に移行するには,特異平面が極性となる要請を緩和する必要があります.層を特徴づける2つの条件は:特異平面(片面または両面)の存在と,2つの並進軸(簡単のために,層の特異平面は常に水平とします).この定義を受け入れるならば,壁紙模様の概念は層の概念に含まれることになり,層に特異点がないという要請もこの定義から導かれることになります.あらゆる種類の層の対称性をすべて導くことは,30年代にドイツの科学者;Hermannヘルマン,Weberウェーバー,Alexanderアレクサンダーらによって行われました.層の対称性は,結晶学では液晶構造,ドメイン界面,双晶,エピタキシャル接合の研究に,物理化学では単分子層や薄膜の研究に,生物学では膜構造やその他の生体組織の研究に応用されています.建築芸術においても, 透かし彫り格子構造,覆い,フェンス,看板などのデザインに応用できます. 

層の対称要素 

壁紙模様は片面だけなので,模様のある表側面から裏側面に模様を移す「反転」という対称要素は存在しません.これらの対称要素は,層の内部に存在し,対称心,水平面内にある位数2の対称軸(単純回転,らせん回転),水平な対称面や映進面などです.古典的な対称原理に留まる限り,未発見の新しい対称要素が層に存在することはありません.しかし,層の対称性を研究することは,対称性の概念自体を拡張し,層や3次元(有限および無限)図形の反対称群の導出に繋がります.

層の対称類の導出.表現と表記法

既に導いた17種類の対称類に加えて,層のすべての対称類の導出の基礎は,これら17種類の中から同一の壁紙模様をペアにするか,あるいは,模様の生成元に「反転」の対称要素を追加することです.まず,各類に水平な対称面を追加すると,層の17個の両面対称類ができます.新しい対称要素を導入した結果,特異平面の単位面積当たりの基本図形の数は,もし,複数の古い図形から作られた新しい図形同士の融合や絡み合いがなければ,明らかに2倍になります. 
層の対称類の表現は,帯で先に使用した方法と同じで,図184-187にその単位胞を示します.図に表示されているのは,観察者方向に向いた面で,黒い3角形が見えれば,その裏側は白い3角形,白い3角形が見えれば,その裏側は白い3角形です.点のある3角形は,「表側面」と「裏側面」が同じ両面3角形です. 
両面層の空間群の非座標記号は,片面層の空間群の場合と同様です(図149参照).シンモルフィック群の対称記号を得るには,2次元並進群$$( a/b)$$ ,$$(a:b)$$ ,あるいは,$$\left( \displaystyle \frac{a+b}{2}/a:b \right) $$を,有限図形に対応する対称群に「乗じる」必要があります(図69参照).点群の対称要素に層平面内の並進を「乗じる」ことになり,いくつかの派生対称要素が生じます.並進群と点群の記号の間には,これらの群の対称要素の相対方位を表示する記号($$・$$あるいは$$:$$)が置かれます. 
どの場合(図187の70-72, 74の層を除く)でも,点群の記号で,最初に左に書かれてい対称要素は,層$$( a,b) $$の平面と並進群の記号で括弧内の最後に書かれている並進軸に,平行($$ ・ $$),または,垂直($$:$$)です.
このような状況下で,点群の記号は必ずしも標準形ではないが,図69と同じ分離記号($$・$$あるいは$$:$$)が用いられます:
$$m:2=2:m, m・2=2・m, m:2・m=m・2:m, m:4・m=m・4:m, m・3=3・m, m:3・m=m・3:m$$, $$2:3=3:2, m・6=6・m, m:6=6:m, m:6・m=m ・6:m$$.
非シンモルフィックの層群の対称記号中で,$$2$$回回転軸の一部または全部が2回らせん軸$$2_{1}$$に置き換えられ,対称面$$m$$が映進面$$\tilde{a}, \tilde{b}, \tilde{ab}=\tilde{n}$$[最後の平面では,並進$$\left( a+b \right) /2$$は単位格子の対角方向]に置き換えられています.層の空間群は全部80で,そのうち45はシンモルフィック,35は非シンモルフィックです.

80種類の層の対称類

層の個々の対称類について詳細を記述することはしません.なぜならば,図形の正則系の投影図(図184~187)から,基本的事項は直接見てとれるからです.これらの投影図には,対称要素は全く表示されず,図形(3角形)の相互配置のみが示されています.図184-186の細い線は,層の単位胞を区分しています.図187では,辺を挟んで隣接する2つの3角形で単位胞は構成されます.層を作るには,隙間も重なりもなく単位胞を並進させて平面を埋めます.
さらに,表11には,図149と同様な軸方位で,層の空間群の非座標表示と座標表示(国際表示)を比較掲載しました.読者は,図149と図69の群の表示を参考にして,両面層の対称要素の配置を投影して描いてみるとよいでしょう.