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がん登録と数学の役割

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数学月間SGK通信 [2016.12.06] No.144
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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数学月間は,数学同好者のためでもないし数学の講習会でもありません.
<数学と社会の架け橋>を目指しています.毎年,数学月間の初日7/22(これは,22/7≒3.14・・・にちなみます)
に懇話会を実施しています.ご参加ください.
今年の「数学月間懇話会」の講演から紹介しましょう.
がん登録の可能性.田渕 健(都立駒込病院,東京都がん登録室)

駒込ピペットは,感染症の避病院であったこの病院の発明(140年前)だそうだ.
今年(2016年)新たにがんと診断される患者は,101万人を超える予測で,98万人(2015年),88万人(2014年)と増加し,
この3年間のがん死亡も,年間37万人程度ですが.増加傾向です.
2014年から,多いがんのランキングや死亡率などが話題になり,がん検診も叫ばれています.
一方,過剰検診の問題もあり,がん検診を増やすことがどれほど有効なのかはわからない.
がん罹患率の統計が整備されると,過去年のがん罹患数のデータを用いて,
今年のがん罹患数を予測したり,次のような質問に答えることができるようになります.
・助かるのか,助からないのか,どのくらいの人が助かるのか?
・同じような病気の人がどのくらいいるのだろうか?
・この病気を治してくれる病院があるのだろうか?
・どんな治療法があるのだろうか? 治療成績に違いがあるのだろうか?
がん登録推進法が,遅ればせながら今年スタートしました(人口統計は,明治に確立している).
がん統計は,データ収集→処理登録→統計解析の流れで行い,
特に,生データからがん登録を行うところが,混沌としていてとても難しい.
これは数学者の仕事なのだが,数学者の参入がないのが問題です.
(注)統計解析は,良いツールソフトがあり実施に問題はない.
具体的には,がん登録の届け出がされていない/複数病院からダブって届けられる/一人で多重がんをもつ,
などの混沌とした状態が生データで,まず,同一性の判定が必要になります.
死亡状況から,届け出がなかったがんを判定発見することも必要です.
病院は電子カルテに変わり,医者が患者の顔を見なくなった弊害に加え.
そのカルテ情報が構造化されておらず,残念ながら統計には役に立たないそうだ.
病気を分類し,がんの定義を満たすリストを作る.そして,いろいろな届け出病名から,がんを特定する.
例えば,肺炎には肺がんが含まれているかもしれない.
心不全というのは死因ではなく,死因の特定には,第1次原因,第2次原因,...,第5次まで見ることが必要とのことだ.
いずれにしろ,生のデータは斯様に混沌としている.同値関係を定義したり,
同値分類したりしてデータの構造化が必要であり,これは数学者の仕事なのです.