2015年11月の記事一覧

美術・図工 コクセターの万華鏡★

■メビウスの万華鏡とコクセターの万華鏡

■楕円幾何平面の正則タイル張り
球表面が球面正p多角形タイルで{p,q}のように張りつめられているとき,1つのタイルの中を2p個の直角3角形に分割できます.この直角3角形を鏡室とする万華鏡は“メビウスの万華鏡”と名付けます.このときの直角3角形(鏡室)の内角は,それぞれ π/p,π/q,π/2で,この直角3角形を(p,q,2)と表記します.

■双曲幾何平面の正則タイル張り
ポアンカレ円盤の双曲幾何平面でも,双曲正p多角形で{p,q}のように張りつめられているとき,1つのタイルを2p個の直角3角形に分割できます.この直角3角形を鏡室とする万華鏡は“コクセターの万華鏡”と名付けます.
双曲面の{6,4}正則分割の場合の直角3角形(6,4,2)(赤い3角形)を図(左)に,対応する“コクセターの万華鏡”の映像を図(右)に示します.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



■双曲面{6,4}分割の場合の“コクセターの万華鏡”を作る
双極面{6,4}分割の映像を,3角形の万華鏡で作るには,双曲面直角3角形(6,4,2)を用います.この3角形の2辺は平面鏡,残りの1辺は円盤のフチに直交する円弧鏡よりなります.この円弧鏡は,数学的には反転円として定義できるのですが,現実の円柱鏡の反射には収差があるので,数学の定義のように鮮明な万華鏡映像を作るのは困難です.

 

 

 

 

 

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メビウス(1850)の多面体万華鏡

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数学月間SGK通信 [2015.11.10] No.088
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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今日は楕円幾何の世界である球表面のタイル張りを万華鏡で見て見ましょう.
シュレフリーの記号{p,q}は正p多角形が頂点でq個集まってできる正多面体を表します.
例えば,{5,3}は正5角形が各頂点で3つ集まっている正多面体(正12面体)を表します.
球面{p,q}多面体の面は球面正p-多角形です.
1つの球面正p-多角形タイルを2p個の球面3角形(p,q,2)に分割しましょう.
図は球面{5,3}多面体の例で,12個の面はすべて球面正5角形(黄色のタイル)から成ります.
1つの面は10個の球面三角形(5,3,2)(赤色タイル)に分割できます.
(注)3角形(p,q,2)とは,内角が(π/p,π/q,π/2)の直角3角形のことです.
球面幾何の世界では,直線は大円.球面正p-角形や球面3角形の辺はすべてこの世界の直線ですから,
大円です.球面三角形(5,3,2)の内角は,(π/5,π/3.π/2)で,内角の和は,(31/30)π>π とπを越しますが
楕円幾何の世界だからです(ユークリッド幾何の世界では3角形の内角の和はπ).
ユークリッド平面では{5,3}は隙間ができタイル張りにならないが,
球表面ではタイル張りができ,これをユークリッド幾何の世界で見ると立体になります.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/568613/51/17096451/img_1_m?1447081624
球面3角形(p,q,2)の各辺を中心から見込む平面を鏡として,3枚鏡(△OHK,△OKA,△OAH)の万華鏡を作り,
球面3角形(p,q,2)の外側から覗きこむと,球面{p,q}多面体が見えます.
以下に{5,3}多面体用の万華鏡の作り方を掲載します.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/568613/51/17096451/img_3_m?1447081624
(注)青色の3枚の3角形鏡(ただし,頂点Oの周りは半径2.5の円弧を切り取る)を組み立てる.図中の数字は長さ.

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万華鏡と市松模様(平面群)

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数学月間SGK通信 [2015.11.03] No.087
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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秋が深まりました.皆様お変わりありませんか.一寸,万華鏡の数学の話をしましょう.
万華鏡映像の美しさが我々の心をとらえるのは,空間の完全な対称性だけではありません.
時間の流れとともに映し出される「千変万化だが一度きり」の映像に,
生命を感じるからでもありましょう.
ワンドの中を降り行くすべてのガラス屑の運命は,運動方程式ですべて定まっているとはいえ,
ときおりカオスの起こる期待で目が離せません.
万華鏡は,対称性(秩序)とカオス(乱れ)の混在が魅力なのです.そして,
合わせ鏡が生みだす完全な秩序は,無限に繰り返される“結晶世界”に入り込んだようでもあります.
万華鏡 “カレイドスコープ”は,物理学者ブリュースター卿の特許(1817)[発明は1816年]
が起源です.特許には,2枚の合わせ鏡の交差角θ°が,360°を
偶数で割り切る角度にするということが書かれています.
今日はこの数学についてさらに考えて見ましょう.
■平面群と市松模様
本来の市松模様はチェス盤のように正方格子が交互に塗り分けられたものですが,
3角格子などの場合でも交互に塗り分けられていれば市松模様と呼ぶことにします.
Fig1 http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/556602/27/17073327/img_7_m?1446474652 
これらは皆,市松模様と呼ぶことになります.
万華鏡は鏡(位数2の対称操作)の組み合わせだけで作られます.
1回鏡で反射すると鏡像の向きは裏返っています.しかし,2回反射すると
鏡像の鏡像になり始めの向きと同じになります.
市松模様の黒-白は,物体のある鏡室タイル(グレイ色)と同じ向き="正置像”を黒;
“裏返像”を白に塗り分けています.

■正方形の鏡室の万華鏡がつくる市松模様
Fig2 http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/556602/27/17073327/img_8_m?1446474652
図(1)万華鏡の鏡室タイルをグレイの正方形とします.
鏡室のフチの赤線は鏡(4枚)です.
図(2)1回の反射で4個のタイルの裏返像(黄色)が生まれます.
図(3)2回の反射で,その外側に8個のタイルの正置像(緑色)が生まれます.
図(4)3回の反射で,その外側に12個のタイルの裏返像(黄色)が生まれます.
このようにして,鏡室タイルはその鏡像を全平面に広げて行き,
平面を市松模様で塗りつぶします.

■3角形の鏡室の万華鏡は市松模様をつくるか?
Fig3 http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/556602/27/17073327/img_9_m?1446474652
1.左図の鏡室3角形ABCは90°30°60°の3角形です.
各頂点で3角形が偶数個集まっています.3つの頂点のまわりはどれも市松模様ができており,
全平面が市松模様であることがわかります.
2.右図の鏡室3角形ABCは45°60°75°の3角形で,
AおよびBのまわりは3角形が偶数個集まりますが,Cのまわりでは偶数個あつまりません.
そのため,全平面では市松模様が出来ないことがわかります.
3.鏡映操作の集合が平面群を作っている場合は,全平面が市松模様になりますが,
逆に,市松模様が何処かで乱れているなら,その鏡の組み合わせは平面群が作れない場合です.
そのような万華鏡のもう一つの例を(Fig4)に示します.
Fig4 http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/556602/27/17073327/img_2_m?1446474652

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