2017年8月の記事一覧

数学アートと結晶学

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数学月間SGK通信 [2017.08.22] No.181
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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8月も後半というのに,夏らしい日が戻るのでしょうか.待ち遠しいですね.
8月20日は鳥取,27日は倉吉でとっとりサイエンスワールドが開催されます.良い天気だと良いのですが.
私は,万華鏡作りで参加します.写真は,去年のワークショップの様子です.
https://www.facebook.com/TottoriSW/photos/pcb.1802505856693503/1802505710026851/?type=3
各地でこのような数学への関心を高めるイベントが盛んになることを願っています.

■8月8日は算盤の日でもありましたが.私は,夕方,神保町で開催された数学アート展に寄りました.
ここで取り上げた写真の作品は,三野一也さんの作品です.
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/35/18164535/img_0_m?1502278321
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/35/18164535/img_1_m?1502278321
左図は体心立方のデリクレ胞(切頂8面体{4,6,6},あるいはケルビン立体とも呼ばれる)を隙間なく積み上げたところ.
右図は,準正多面体{3,4,3,4}を積み上げています.
準正多面体{3,4,3,4}も切頂8面体{4,6,6}も双対図形は,菱形12面体(これは,立方体心格子のデリクレ胞)です.
右図は菱形12面体の積み上げ(体心格子)そのものでなく,その逆空間に準正多面体{3,4,3,4}を積み上げた
(ただし,{3,4,3,4}はデリクレ胞ではないので正8面体の穴の残る構造)です.
準正多面体{3,4,3,4}は,正8面体と組み合わせて,空間を隙間なく充填できますが,
それらの個数比はいくつかわかりますか?
空間を充填する立体の組み合わせを,以下に図示したのでご覧ください:
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/83/18167283/img_0_m?1502409506
空間を隙間なく充填する多面体や,その対称性は,結晶学の中心課題でしたが,美しいアートにもなりますね.

■3次元の周期的な空間は,互いに独立な3つのベクトルの線形結合で表現できます(これが格子です).
抽象的には整数環上の加群と言えばそれまでですが,結晶学では,格子を対称性の観点から分類しようとしています.
立方体と同じ対称性の格子は,3種類あり,立方単純格子,立方体心格子,立方面心格子です.
単純格子は単位胞に格子点を1つ含みますが,体心格子は単位胞の中に格子点を2つ,面心格子は格子点を4つ含みます.
単位胞の定義は,不統一に思われるでしょうが,これは単位胞の定義に,
対称性が満たされる最小の単位という条件があるからです.
さて,ベクトルa,b,cで定義される格子に対して,逆格子(a*,b*,c*で定義される)があり,
例えば,a,bで張られる面にC*ベクトルは垂直などです.つまり,格子と逆格子は互いに双対になります.
また,立方面心格子と立方体心格子は互いに双対です.
従って,立方面心のデリクレ胞(菱形12面体)と,立方体心格子のデリクレ胞(切頂8面体{4,6,6},
あるいは,ケルビン立体とも呼ばれる)もまた互いに双対です.
例えば,シリコン結晶(ダイヤモンド構造)は面心格子で,
デリクレ胞(固体物理では,ウィグナー.ザイツ胞という)は,菱形12面体,
シリコンの逆格子のデリクレ胞(第1ブリルアンゾーンともいう)は,ケルビン立体です.

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