2019年10月の記事一覧

東京ジャーミイ

東京ジャーミイの玄関ホールの陳列棚に飾ってある美しい皿です.直径30cm程度です.

中心(花弁12枚)の大きな花には,花の内部だけで有効な12回対称軸があります.しかし,中心の花の周りに小さい花が6個配置されており,全域的に見ると,これは12回対称軸でなく6回対称軸になります.周囲の6個の花(花弁9枚)は,それぞれ自分の内部に有効な9回対称軸がありますが,全域的に見ると3回対称軸です.6回対称軸と6回対称軸の間,3回対称軸と3回対称軸の間には2回対称軸が生じます.その他,右図に実線で描いたように鏡映面があります.
ここで,全域的とは,この模様がお皿の外にも同様な繰り返し規則で無限に続いていると想定した模様のことです.つまり,無限に続くこの模様の対称性は右図のような対称要素の配列(平面群P6mm)になります.右図で水色に塗った部分が単位胞です.
この皿の模様は,この繰り返し模様から青い点線(右図中)で記した円の内部だけを切り取ったものです.

■それぞれの花の内部の局所的な高い対称性
中心の花の内部は,12回対称(その部分群としての6回対称は全域で通用),周りの6個の花の内部は,それぞれ9回対称(その部分群としての3回対称は全域で通用)です.
12回対称や9回対称は周期性と矛盾するので,繰り返し模様全域で,このように高い対称性は存在できません(周期性と両立できる回転対称性は,2,3,4,6回軸に限られます).このような高い対称性が通用するのはそれぞれの花の内部だけです.
しかし,例えば,5次元空間では,5回対称性が周期と共存することが可能ですから,このような高い対称性が見える花の内部は,高次元空間の断面が2次元の皿の表面に投影されたものと想像することもできます.見えない次元の世界の投影を見るような不思議な魅力を感じるでしょう.

■説教壇横のイスラミックデザイン

写真は説教壇横にある装飾です.次の写真はステンドグラスです.


どちらもイスラミックデザインに特徴的な複雑な図形ですが美しい.
これらの図形の作図は,コンパスと直線定規だけでなされました.
中心に10回対称の星型ロゼットが見えるでしょう.
この「正5角形と180°回転した正5角形を重ね合わせた」星型ロゼット(点群10mm)を
内角が108°と72°の菱形を単位胞とする格子に配置して,繰り返し模様を作りました.
この菱形格子は正6角形(正3角形)のように見えますが,
上下の方向が左右の方向に比べてすこし長く,歪んでいます.
正5角形や正10角形(どちらも最低でも5回対称性がある)を
周期的に並べることは不可能ですから,5回対称性が全域で支配するような格子はできません.「正5角形とその180°回転したものを重ね合わせた」星型ロゼットの対称性(10mm)は,ロゼット内部だけを支配する(局所的)ものです.
この繰り返し模様の対称性(平面群)には,2回軸と水平および垂直に鏡映面があり,記号でいうとP2mmの対称性です.
このように高対称のロゼットをうまくつないで周期性のある模様ができるところがイスラムのデザインの特徴です.

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10回(5回)対称タイルを繰り返し並べる★

10回(5回)対称は,周期的に並ぶことができません.10回(5回)対称タイルを周期的に配列したイスラームの繰り返しパターンを調べましょう.このようなパターンはイスラームに特徴的で,ジャーミイのいろいろな所で見かけます.

10回(5回)対称は周期性と矛盾しますから,それぞれの10回(5回)対称が支配するのはタイルの内部だけです.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このタイルの描き方を習得するのにだいぶ工夫をしました.
作図手順の足跡として,赤色の作図補助線を残しておきましたから,
皆さんも工夫してこの図を描いてみてください.

まず,中心にある円の円周を10等分することから始めます.
円周の10等分は中心角が36°の作図で,前回に正五角形(中心角72°)の作図をやりましたから,
それを応用して円周の10等分を作図してください.

この長方形のタイルが単位胞になり,これを並べることにより繰り返しパターンが作れます.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この繰り返しパターンの平面群はP2mmです.

10mmという対称性の高い部分があります.もし,そのような対称性が全域に作用するなら,
繰り返し(周期性)ができるわけがありません.10mmという点群の作用はそれぞれの赤い円内の領域に限られるので,周期性と両立できるのです.このようなイスラーム・パターンは色々な所に見受けられます.

次に,この繰り返しパターンを3つの部品によるタイル貼りと解釈してみましょう.
つまり,図に示したように正10角形タイルと,ピンクのタイルと黄緑色のタイルの3種類です.
今日は,この3種類のタイルで平面が隙間なくタイルhave貼りされていることを確認してください.

 ■応用例

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

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イスラミック・タイリング・パターン 工事中記事

Darb-e Imam寺院(イラン)のイスラミック・タイリングのパターン(1453年)は,その500年後に発見されるPenroseタイリング(1973年)と同じものであるのが興味深い.Penroseタイリングは,その10年後に発見される準結晶(1984年)の構造解明に用いられる.

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正5角形の作図いろいろ★

 

 

 

 

 

 

 

 

■正5角形の性質

 

 

 

 

 

 

 

 

 


正5角形の中に相似な2等辺3角形(頂角36°)が次々に組み込まれていく様子を見てください.
赤い2等辺3角形→緑の2等辺3角形→青い2等辺3角形
辺の比率は,いつもΦ:1です.Φは正5角形の対角線(星形の辺)で,1は正5角形の1辺です.
このとき成立する方程式,Φ2-Φー1=0を解いて(Φ>1をとる),Φ=(1+√5)/2=1.6180・・が得られます.Φは黄金比の値です.

■正5角形の実用作図法で以下のものがあります.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この作図はつぎの式が成り立ちます.AH=HB=1/2,MH=√3/2 であるので,
PH=(√3ー1)/2,従ってPB=(√[(√3-1)2+1])/2=(√[5-2√3])/2
AB/PB=2√(65-26√3)/13=1.6138・・・
この作図法は,イスラームのタイル作図で便利ですが,厳密な正5角形ではありません.
しかし,誤差は0.26%なので実用上問題ない恐るべき精度です.

 ■厳密な正5角形の作図

 

 

 

 

 

 

 

 


AB=1,AH=1/2,PH=1 ですので,AP=(√[1+22])/2=√5/2
従って,QP=(1+√5)/2=Φ
この作図で得られるのは厳密に正5角形であることが証明されました.

■折り紙で作る正5角形(1)の精度

 


この図は折り紙で正5角形を作る原理を示しました.y=3xの直線とx軸のなす角θを求めると
θ=arctan3=71.5651・・° となりますが,正5角形では72°になるべきです.
この誤差は.0.6%ですのでかなり良い精度と言えましょう.

他の角度は,72.1087(0.2%),
72.6524(0.9%)程度です.(カッコ内は誤差)

 

 

 

 

 

 

 

■折り紙で作る正5角形(2)の精度

折り紙の一太刀切で大変作り易い星型です.この原理は以下の図を見てください.
正5角形(星型)の一辺の中心角は360°/5=72°ですから,一太刀切りに対応する中心角は36°です.
以下の図を見ると,一太刀切りの中心角は,35.783°(36°からのハズレは-0.6%)to,36.870°(+2.4%)に収まっています.

 

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イスラミックタイル10mmの周期的配置

対称性10mmのタイルを周期的に配置するならば,10mm(あるいは5m)の対称性が全域で残ることはあり得ません.これらの対称性はタイルの内部だけ(局所的)に作用できます.
周期的なイスラームのデザインでタイル(10mm)はどのように配置されているのでしょうか.
大変興味深いことです.このようなタイルはどのように配置されているでしょうか.

 

 

 

 

 

 

 


(1)まず,一つの例を示します.並進周期をあらわす単位胞は内角が54°と126°の平行4辺形です.正3角形格子(菱形)のようにも見えますが,そうではありませんので注意しましょう.
オレンジの6角形ベース型は正10角形の内部にある花弁の6角形ベース型とまったく同じ型です.

10回対称軸の作用はそれぞれの正10角形内部でのみ有効で,オレンジの6角形ベースには作用できません.従って,それぞれの正10角形はそれぞれの独立した宇宙であるという解釈ができます.



 

 

 

 

 

 

 

 

 

(2)もう一つの配置例を示しましょう.MirzaAkbar

この例では並進を表す単位胞は長方形です.



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


(3)このほかにも,正10角形タイルを周期的につなぐ美しい配置の実例を発見することができるでしょう.探してみましょう.

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