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2018年5月の記事一覧

対数とスケールの定義

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数学月間SGK通信 [2018.06.05] No.222
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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夏を思わせる日があったと思うと寒い日もあります.
梅雨入りもまじかでしょう,皆様どうぞご自愛ください.
今日は,対数について実用上の役割を見てみましょう.
関数としての対数の微積分は,数学では避けられませんが
常用対数表や計算尺はコンピュータ時代に影が薄くなりました.
しかし,対数は数字の桁を表示することなので,色々な現象のスケールの定義が
対数を用いてなされます.社会や科学の色々な分野で対数が係わることになります.
■対数の発明
ネイピア(スコットランド)は,1614年の著書で対数を提唱しました.
大きな数字の間の乗算は面倒です.
対数を用いれば,掛け合わせるそれぞれの数の対数をとり,それらを加算し,
対数表の中にこの数を探しだし,対数をとる前の数を求めればよい.
積の対数は,それぞれの数の対数の和になるから,乗算が加算に変る.
log(A・B)=log(A)+log(B)
コンピュータのない時代の科学技術計算に,対数表は不可欠だった.
16cの天文学者は対数表で大いに助かったことだろう.
あのニュートンも対数表を用いて計算したに相違ない.
ビュルギ(スイス)も,ネイピアとほとんど同時期に対数を用いているらしい.
計算尺の発明は,ウイリアム・オートレッド(英)1621年と言われる.

対数をとると,乗算が加算に変わる原理は,次のようなことです.
例えば,16や32を2のべき乗で表すと,16=2^4, 32=2^5なので,
16x32=512の計算は,つまり,2^4x2^5=2^9 は,
4+5=9のように,べき乗の可算になります(指数法則).
2を底とする対数をとると,log16=4,log32=5,log512=9であるので
べき乗の可算4+5=9から,log16+log32=log512となります.
このように,対数を仲介することで,積を和に変えることができます.
ここでは,2を対数の底として説明しましたが,対数表の完備しているのは底10の
常用対数です.常用対数は,10進法に相当しています.
注)底は1でない正数.対数が定義できるのは真数が正数のとき定義される.
■対数の応用
対数は科学の様々な分野のスケールに用いられる.例えば,エントロピー.ペーハーpH,
デシベルdB,地震マグニチュード,恒星の等級,...等々.
人間の感覚感度は,べき乗スケールで変わった方が自然なようです.
例えば,
・エントロピーSと,状態のとり得る場合の数Wは,
 S=k・log(W),kはボルツマン定数.
・ペーハーpHは,水溶液の水素イオン濃度の対数です.
純水の水素イオン濃度は10^-7なので,中性のpH=-log(10^-7)=7
・デシベルdBは,ゲイン(増幅率)の対数をベルBと言い,その10倍をデシベルdBと言います.
100倍のゲインならlog100=2B=20dB.
・地震のマグニチュードMは,地震のエネルギーの対数です.
マグニチュードが1段階変わればエネルギーは約32倍になります.
・恒星の等級には,実視等級と絶対等級があります.実視等級は,一番明るい星たちを1等星,
肉眼でやっと見える星たちを6等星に区分したことに始まります.
1等星と6等星では明るさが100倍違いましたので,結局1等級違えば明るさは100^(1/5)=2.51・・倍違います.
絶対等級というのは,恒星までの距離を考慮し,恒星がすべて10パーセク(32.6光年)の距離にあるとして,
実視等級を換算し直し,地球からの距離にはよらぬ恒星本来の明るさを表します.
この換算には,明るさは距離の2乗に反比例することを使います.

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ハワイの火山

ハワイ島には3つの主な火山があり,北がマウナケア,中央がマウナロア,南東がキラウエアです.5月に噴火しているのはキラウエアの東端ブナ地区の一部です.ホットスポットからマグマが上がり,地殻プレートは西に移動していますので,活動はだんだん東に移ります*注.
注)
ハワイが乗っている太平洋プレートは,東太平洋海嶺(アメリカ大陸の西側に沿ってある)から生まれて,日本海溝で沈みます.海嶺はマントル対流の上昇箇所にできる山で,ここを中心に,東西にプレートが送り出されます.東に送り出されたプレートは米国大陸の下に潜り込み(サンアンドレアス断層=地震の巣),西に送り出されたプレートは日本海溝で沈みます.マグマの発生源は上部マントルのホットスポットにあり,移動するプレート(地殻)を通り抜けてマグマが上がって来ます.プレートが西に動いているので,火山の活発な場所は,地上で見ると東に動くように見えます.
マウナケア,マウナロアは4,000mを越す山ですが,キラウエアは活動中で標高もまだ1,000mちょとです.マントル上部からマグマが上昇して来ますが,海洋底の地殻は薄いので,マグマだまりで地殻成分を融かす暇がなく,ケイ酸塩成分の少ない流動性の高い玄武岩質のまま穏やかに噴火し溶岩流となります.セントへレンズ山や富士山の様な内陸部では,マグマのケイ酸塩成分が少し増えますから粘性が上がり爆発的な噴火があります.写真(玄武岩basalt)は,私が昔採集したマウナケアのKapa'ahu溶岩です.溶岩流の筋跡が見えます.白っぽく見えるのは,リューサイトKAlSi2O6の小さい結晶です.この溶岩は気泡が抜けて穴だらけ状態(アア溶岩)とは違い,かつ,リューサイトも結晶化しているので,溶岩流の内部でゆっくり固まったものと思います.

hawaiicountygis.maps.arcgis.com
噴火地図

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モーリーの定理

モーリーの定理:「3角形の各内角の3等分線の交点(最初に出会う3点)が作る3角形は,常に正3角形である」
1899年にフランク・モーリーによって発見されたこの定理の証明はとても難解です.一般角の3等分自体が,定規とコンパスで作図不可能ですから,この定理の証明も困難そうです.この定理の背景に不可能作図の角度の3等分があるので,この定理は盲点だったのでしょう.ユークリッドの時代に発見されても良さそうな初等幾何の定理なのに,発見は最近百年の出来事です.

 

■Frank Morlay(1860年英国生まれ.ケンブリッジ卒業.1887年より米国定住)学生時代から始まるThe Edcational Timesへの数学問題(主として幾何学)掲載は,50年にわり,60題を越す.1900年,ジョンズ・ホプキンス大,数学教授
米数学協会Bulletinの編集,ジョンズ・ホプキンス大では the American Journal of Mathematicsの編集を30年間務めた.

http://jwilson.coe.uga.edu/EMT668/EMAT6680.F99/Estes/morley/morley.html

■モーリーの定理の証明は,モーリー後も,いろいろな人が,さまざまな方法で証明しました.三角関数を使ってM. Satyanarayana,初等幾何学的にN. Naranjengar(1909), Alain Connes(1998), John Conway などなど....
数学では,定理を発見し証明するのは価値がありますが,すでに証明されている定理でも,別の方法で証明することは重要です.特に,その証明法が飾りを削ぎ落し定理の本質を暴き出すものであれば非常に価値が高い.皆様もこの定理に挑戦ください.

■ Taylor and Marr(1914)は、2つの幾何学的証明と1つの三角関数を使った証明を提示しました.
この定理を広げて,さらに美しい驚くべき結果も得られています.内部の正3角形に加えて、外部に4つの追加の正3角形があります(Wells 1991).

 

 

 

 


http://mathworld.wolfram.com/MorleysTheorem.html

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月形の面積

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数学月間SGK通信 [2018.06.12] No.223
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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練習問題
(左図)直角3角形の各辺上に半円形が描いてあります.これらの面積に以下の関係があります.青い半円+黄緑の半円=オレンジの半円
ピタゴラス(3平方)の定理,a^2+b^2=c^2 (a,bcは直角3角形の辺長で,cは斜辺)が成立するのだから,当然ですね.
(右図)青い月形+黄緑の月形=三角形の面積(ピンク)を証明しなさい.

 

 

 

 

 

 

 

 

■解説

 

 

 

 

 

 

 

 

直角3角形で成り立つピタゴラスの定理はa^2+b^2=c^2(ただし,cは斜辺の長さ).この関係を面積で表現すると,それぞれの辺を1辺として描いた正方形の面積の関係であることはご存知でしょう.今度は,それぞれの辺を直径とする半円を描いたものが左の図です.それぞれの半円の面積は,piを円周率とし,(pi/8)・a^2,(pi/8)・b^2,(pi/8)・c^2ですから,ピタゴラスの定理を各辺を直径とする半円の面歳の関係だと言ってもよいのです.ピタゴラスの定理は2乗和の関係で,2乗と言えば面積ですから,例えば,それぞれの辺の上に正3角形を描いて,それらの面積の間に成り立つのがピタゴラスの定理ということもできます.
さて,ピタゴラスの定理から,左図の半円の面積に関して,
青い半円+緑の半円=黄色の半円
が成立します.
右図をご覧ください.左図の黄色の半円は,右図でcは白い円の直径ですから,じっと見ると,ピンクの直角3角形が,この白い半円に入っていることがわかるでしょう.面積の関係は,青い半円+緑の半円=白い半円 です.
結局,青い半円と緑の半円と白い半円の巨通部分を減じると,
青い三日月+緑の三日月=ピンクの直角3角形
の関係が得られます.

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今年の数学月間懇話会テーマ

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数学月間SGK通信 [2018.05.08] No.218
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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■皆様,連休をどのようにお過ごしでしたか.私は,数学月間のHPの改装を進めています.
当分は,現状HPの方 http://sgk2005.sakura.ne.jp/ を訪問ください.
5月5日は,友人の出るハーモニカの発表会を聞きに行きました.
ファミリー和谷クロマティック・ハーモニカ発表会(ルーテル市ヶ谷センター)です..
オルガン,手風琴のようでもあり,オーボエ,フルートのようにも,時にはバイオリンのようにも聞こえる音色.
ジプシー風,タンゴ風の曲想に似合いながら,四重奏も合奏も協奏曲もこなせる凄いポテンシャルのある楽器です.
フルートでも難しい速いパッセージの超絶技巧に感動.和谷奏扶先生はハーモニカ音楽の開拓者.
目からうろこの発表会でした.

■数学月間懇話会(第14回)のお知らせ
●場所:東大駒場キャンバス,数理科学研究科・002号教室
●日時:2018年8月22日,14:00-17:00
●参加費無料
直接会場にお出で下さい.
●主催:数学月間の会,日本数学協会
●問い合わせ:sgktani@gmail.com
●プログラム:
1.企業での数学活用の実際,渡邉好夫(リコーICT研究所AI応用研究センター,技術顧問)
2.エントロピーと対数,対称性,宮原恒昱(首都大学東京名誉教授・客員教授)
3.パズル玩具と数学の接点-「解ければ終わり」ではもったいない,秋山久義(数学遊戯研究家)
●17:30より構内カフェテリアにて懇親会(飲食は各自払い)
皆さんのご参加をお待ちします.
今年は,例年(7月22日)とちがい8月22日ですご注意ください!

■企画意図の口上
(1)googleやamazonなどが典型ですが,色々なデータが収集され予測に使われています.
皆さんも日ごろ実感されていることでしょう.このビッグデータの時代に,
企業もデータサイエンスに無関心ではいられません.しかし,ビッグデータの以前から,
機器の設計にあたっては動作原理のシミュレーションなどの数学モデルが企業でも使われておりました.
数学が色々な分野で技術を支えているのが具体的に実感できるでしょう.

(2)天才ボルツマン(オーストリアの物理学者)の墓碑には,S=k・ln(W)と刻まれているそうです.Sはエントロピー,
Wは状態のとり得る”場合の数”,ln(W)は”場合の数”の自然対数をとること,kはボルツマン定数です.
対数をとると,ln(A・B)=ln(A)+ln(B) のように,積が和になりますので,
”場合の数”の積は,エントロピーの和に対応します.だからここに対数がでてくるのですね.
ボルツマンは1906年自殺しました.分子の実在も証明されない時代に,
気体分子運動論,統計力学を主張した天才は学会に受け入れられませんでした.
あと1年頑張っていればよかったのですがね.

(3)パズルやマジックの多くは,数学に深いかかわりがあります.
試行錯誤して,答えが見つかればそれで終わりとするのが普通です.
でもそれでは勿体無い.正解が発見でき,本質に肉薄した所にいるのだから,
その手順を整理してみると,その奥にある数学原理が発見できるでしょう.
2010年没のマーチン・ガードナーの著作が懐かしいですね,
おいでになれば,珍しいパズルグッズにも触れることができます.

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フィボナッチ数列と対数螺旋・続き

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数学月間SGK通信 [2018.05.01] No.217
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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皆様,ゴールデンウイーク(この頃あまり使われないようですが)の真っただ中
良い休日をお過ごしでしょうか.私は数学月間の会のウエブサイトの改装の準備中です.
公開までにまだ日にちがかります.
桜が咲き始める3月末から,顔見知りのシジュウカラさん達が姿を現さなくなりました.
しじゅう来ていたのにぱったり来なくなり心配になりますが,これは毎年のことです.
林の奥の方ではシジュウカラさん達の良い鳴き声がさかんに聞こえます.巣にいて
きっと忙しいのでしょうね.
シジュウカラさん達がまた来る日までに,百日紅の葉はすっかり茂っているでしょう.

◆前号でフィボナッチ数列と対数螺旋の話をしましたが,図を示しておきます.
フィボナッチ数列を1辺とする正方形で平面を埋めていくと,螺旋ができます.
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/91/18506991/img_0_m?1525098033

◆互いに隣り合うフィボナッチ数は互いに素です.
[F(n+1),F(n)]でF(n+1)とF(n)の最大公約数を表示することにします.
[F(n+1),F(n)]=[F(n)+F(n-1),F(n)]=[F(n-1),F(n)]
この関係はn=1のでも成り立ち[1,1]=1ですから,隣り合うフィボナッチ数はいつも互いに素です.

◆話は変わりますが,合同式についてちょっと触れます.
a=b(mod n) と書いて,aはnを法としてbに等しい(合同)と読みます.
つまり,a-bはnで割り切れるということです.
この関係を使うと整数全体をnで割った時の余りが,0,1,2,・・・,n-1のn個のグループに分類できます.

例えば,(mod 3)の時には,すべての整数を3で割った時の余りで3つのグループに分類できます.
余りが0,1,2のグループ(集合)です.集合の名前を余りで表記し,
それぞれ0,1,2としますと,次の性質があることがわかります.
0+0=0,0+1=1,0+2=2,1+1=2,1+2=0,2+2=1
3つのグループ0,1,2は,加法で群を作るようです.

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