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2015年5月の記事一覧

空間のデジタル化

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数学月間SGK通信 [2015.05.26] No.065
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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これは私の造語です.あまり耳慣れない言葉ですが,とても気に入っています.
結晶学では「空間格子」という言葉がでてきますが,「空間のデジタル化」はこれと同じ状況の表現です.
空間のデジタル化とは,「空間を,1つの多面体を並べ(面と面が接するよう)て隙間なく張りつめること」
を意味します.例えば,角砂糖のような立方体を並べて,空間を張り詰めたとすると,
このデジタル化された空間の対称性は,立方体の対称性と同じであることはわかりますね.
”立方体(A)”と同等な対称性の多面体で,空間のデジタル化ができる多面体に,
面心格子を生む”菱形12面体(B)”と,体心格子を生む”ケルビン立体(C)”があります.
これらは立方体の対称性に分類される3種類の空間充填です(Fig).
(この図はpov-rayを用いて作成しました)
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/85/16728485/img_0_m?1432564271

1種類の多面体を互いに面が隙間なく接するようにして空間に詰め込んだ状態を想像してください.
この状態が空間のデジタル化です.
空間のデジタル化の様式を分類したいなら,多面体の対称性に注目すべきでしょう.
一様で連続的な空間が,デジタル化によって,異方性があり周期的な空間に変わります.
無限に広がる空間が,単位となる1つの多面体に還元されます.
すでに,アモルファスと結晶の項目で述べましたが,デジタル化された空間はシンプルで扱いやすい.
このような空間を「結晶空間」と言います.
一寸脱線しますが,連続信号をサンプリングして得たデジタル信号の周波数帯域が抑えられるのと似ています.
結局,3次元では14種類の空間のデジタル化の様式があり,
これは結晶学でブラベー格子が14種類ということと同じことです.

(注)2種類の多面体を使って空間を充填することもいろいろ考察できます.
例えば正8面体と正4面体を使って空間を周期的に充填します.
2種類の多面体の混合による空間の充填では,必ず周期が生じるかといえばそうでもありません.
ペンローズのタイリングに相当する3次元非周期充填もあり得ます.

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不思議な数式

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数学月間SGK通信 [2015.05.19] No.064
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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このような不思議で奇麗な法則があります.
https://www.facebook.com/maxplancksociety/photos/a.10150979253928376.447707.324380493375/10153218754768376/?type=1

1³ + 5³ + 3³ = 153
16³ + 50³ + 33³ = 165033
166³ + 500³ + 333³ = 166500333
1666³ + 5000³ + 3333³ = 166650003333
and so on and om and on!

不思議な数式です.証明してみたくなるでしょう.
いや,なぜこのようなことが起こるのかが知りたいですね.
別の話ですが,似たような数式がまだあります.
ただし,こちらの場合は「数字の桁数が増えていっても,いつも成り立つ」
という性質ではありません.
https://twitter.com/Derektionary/status/484852762102857730

166³ + 500³ + 333³ = 166,500,333
296³ + 584³ + 415³ = 296,584,415
710³ + 656³ + 413³ = 710,656,413
828³ + 538³ + 472³ = 828,538472

閑話休題.初めの不思議な法則の証明法の問題に戻りましょう.
考え方は人さまざまで,証明法には色々あるでしょう.
論理が正しくて,命題が証明されるのならば,どのような証明方法でも正解です.
それでも,「美しい」証明とか「エレガント」な証明とか言われるものがあります.
そのような証明は,「命題の本質にズバリと触れている無駄のないシンプルな証明」
のことだと私は思っています.
補助線一本で解けてしまう図形問題の証明などはその例でしょう.
力ずくで計算して証明できても,命題の本質や現象の起こる仕組みが見えていないのでは,
本質にズバリと触れているとは言えません.
本質や仕組みがわかるということは,その仕組みを基礎とするもっと幅広い命題にも適用できる.
つまり「一般化できる」証明法でもあり価値が高いと思います.

小林昭七先生が「数学と美」というエッセイを,「いまを生きるための教室」角川文庫の中に掲載しています.
(私は小林先生がお亡くなりになる直前の夏の日本滞在中にお会いしこの本を頂きました)
この本から以下の部分を引用しておきます:
「他の科学と同様,数学でも新しい結果は重要である.しかし,数学では既に知られている結果の
別証明や新しい見地からの解釈もかなり評価されている.定理の本質を理解させるような証明,
「なるほどそういうことだったのか」と思わせるような美しい証明は,それが既知の定理の
証明であっても高く評価される」

「数学は美しい」と良く言われますが,美しいと言われても漠然として私にはピンときません.
これを言い換えるなら,「シンプルである」,「本質を見抜いてそれに言及している」,
「話を逸らさないで真摯に課題に集中している」という意味でしょう.

「問題の本質の議論から逃げて,話をそらし,周辺の議論にすり替える」という手法は,
政治や社会で良くみられることです.特に,今の安倍政権では目にあまるものがあります.
「丁寧に説明していく」とよく言いますが,これは聞く耳を持たないと言うことです.
我々の方が説明してあげたいくらい十分な知識があります.国民をバカ扱いしないでもらいたいものです.
論理や数学を軽視する社会に公正はありません.数学月間活動をもっと社会に広げる必要がある所以です.

もう一度,閑話休題で,この不思議な式に戻りましょう.
皆さん証明を考えてみてください.
n桁の数字を $$ (x_n), (y_n), (z_n) $$と書くと,
 $$(x_n+1)=10(x_n)+6,(y_n+1)=10(y_n),(z_n+1)=10(z_n)+3$$

$$(x_n)^3+(y_n)^3+(z_n)^3=(10^2n)(x_n)+(10^n)(y_n)+(z_n)$$ が成立するとして,数学的帰納法で
力ずくで計算して証明することはできるでしょう.でも計算は大変ですし本質は別の所にありそうです.
この問題の本質が何処にあるのか私にもまだ理解できません.皆さん良い証明が出来たら教えてください.
ポイントは循環小数のように続く数字と数の表記法(10進法を使っている)にあるように思います.
多分,以下の表式が利用できます:
$$(x_n+1)=(1+6/9)(10^n)-6/9,(y_n+1)=5*(10^n),(z_n+1)=(3+3/9)(10^n)-3/9$$ 

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今年の米国MAMの感想☆

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数学月間SGK通信 [2015.05.12] No.063
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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2015年米国MAMのテーマ
「数学がキャリアを動かす」
http://www.mathaware.org/mam/2015/highlighted/ より)

自分のキャリアに数学を利用している実在の人物
数学の才能や嗜好を報酬や多様なキャリアに変えた17人

数学が好きだが,数学専攻者にアカデミック以外のどのような仕事があるのかわからない?
幸いなことだが,「数学を専攻するのは今でしょう」というわけだ.
なぜなら,数学がイノベーションの原動力であるようにキャリアも運ぶからだ.
数学の才能と嗜好を,実業界や工業界や政府での多様なキャリアと報酬に替えた17人が紹介される.
彼らが影響を受けたものやそのキャリア・パス選択を見ることは,
アカデミックの外にキャリアを探す数学専攻者にとって,ユニークな見通しや有用なアドバイスになるだろう.

詳しく知るには
http://www.mathaware.org/mam/2015/highlighted/#sthash.gXM8A0oh.dpuf
に17人のプロフィールがあります.17人のうちIBM研究所の人が2人います.
そのほかは,data scientistという人が多いようで,
これらは統計学やコンピュータを用いた数学分野です.

■代表的なプロフィールの例
プロフィール:Jean Steiner
データ・サイエンティスト,Google社,ニューヨーク

私は、工学分野の広告組織Googleのデータ科学者です.
広告主が彼らのgoogle AdWordsアカウントを
どのように管理したらよいかを理解するためにデータを分析し,
彼らに良いツールの提供ができ,彼らのアカウント管理が容易になるようにしています.
私はデータから話を引出し,我々のソフトウエア技術者が良い製品を作るのを助けます.
データ・サイエンティストという役割をする人のほとんどは,
統計学,生物情報学,認知科学,物理学,数学,経済学などの背景を持っています.
私は,アカデミックの場の純粋数学からスタートした
(博士号を取った後,ポスドクフェローシップで研究と教育を行った).
そして,私はやはり定量的であるが,応用的な何かをしたいと思った.
多くの可能なキャリア(例えば、疫学、定量的な金融、経営コンサルティング)
を探しての情報インタビューの結果,Googleで私の関心にぴったり合った仕事を見つけた.
データ解析と,わずかばかりの軽量シェル·スクリプト(コーディング),
ビジネスへの関心が組み合わさっている仕事だ.
当初,私は金融機関で,収益予測,分析,報告をしていたが,
最終的には,より深い分析とより少ない報告を望んでいたので,
データ・サイエンティスの役割に移動した.

■個人的な感想-----
今年の米国MAMのねらいは,数学者の働き場所は大学教授や教員の他にも広範な分野があり
需要があるということにある.「だから数学を学ぶなら今でしょう」という調子だ.
この状況は日本でも全く正しいとは思う.

しかし,今年の米国MAMのキャンペーンのなかで,数学のキャリアは年収が高いとか言うのは眉唾物だと私は思う.
2014年度の高年収職業ベスト10とかワースト10とかは馬鹿げたデータだ.
だいたい高収入が欲しくて数学を専門にするなどおかしな話だ.
17人のプロファイルもそれほど面白くない.
広範な各分野で具体的にどのような数学を用いた仕事や研究をしているのかを知りたいと思ったのだが,
週刊誌の表題程度のレポートで,本年の米国MAMの内容には失望した.

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不思議な数字6174

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数学月間SGK通信 [2015.05.05] No.062
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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ゴールデン・ウイークの最中です.
皆様,よい休日をお過ごしでしょうか.
今週は2つの本を紹介しようと思います.

■「数学を楽しむ」西山豊,現代数学社
6174の不思議はこの本のp.130に出ています.

数学はなんでも証明されているかというとそうでもないらしい.
6174の不思議さを理解するのはちょっと大変.私はまだわかりません.
でも,6174に関する不思議な命題が成立しているのは事実です.
 
6174の各桁の数字の並びを変えて,最も大きい数字を作ると7641,
最も小さい数字を作ると1467です.
最大数字と最小数字の差は 7641-1467=6174 になってしまいます.
6174という数字は不思議ですね.

いろいろな4ケタの数字で実験してみます.例えば,
2005なら
5200-0025=5175
7551-1557=5994
9954-4599=5355
5553-3555=1998
.....
このような操作をカプレカー操作というそうです.
(カブレカーはなんでこんな操作を思いついたのでしょうか不思議です)
頑張って,この先をもう少し繰り返して行くと,結局6174に到着します.
全部同じ数字の場合を除き,どのような4ケタの数かtら出発しても
6174に到達するそうです.不思議ですね.なぜなのだろうか?

西山さんはプログラムを作り,パソコンですべての4ケタの数が,
有限回のカプレカー操作で6174に達することを確かめ,系統図をつくりました.

そのほかの桁数の数字ではどうかというと,
3ケタでは存在するけれど,5ケタでは存在しないそうです.

事実は確かめられましたが,なぜこのようなことが起こるのか?
その仕組みをしりたい.数学の不思議さを感じる例です.

■美しい幾何学, 丸善
高木隆司監訳
Eli Maor and Eugen Jost

ルネサンスの時代は,数学とアートの活動は協力して行われ,
心の中で補い合うものと考えられていた(イーリーによるまえがきより).
オイゲンの数学的アートと数学者(数学史)イーリーの協同でできた本書は珍しい数学の本です.
説明には微積分などは出てきません.子供から大人まで数学アートを鑑賞しながら読み進むことができます.
テーマは系統的な幾何学とは異なります.初級の幾何学もあれば無限級数などもあります.
さらに意外なテーマが現れたり変化に富みます.
取り上げられたいくつかのテーマを見てみましょう.例えば,シュタイナーの円鎖.
これはアルベロスとかインドラの真珠などと呼ばれることもあります.
円の中に互いに接する円を詰め込んだ美しい図形です.円による反転操作もあります.
この図形は和算の算額にも登場しますが,それにも言及しているのは著者の専門が数学史だからでもあり,
本書の構成にもそれが現れています.本書の前半に,ピタゴラスから始まり,
素数,無限級数の収束,ユークリッドなどのテーマが現れます.
さらに続くのは,円周率,積み木による調和級数,自然対数の底,らせんや種々の曲線などです.
これらの説明も,数学アートの図が活きていて面白い本です.
本書の後半には,スノーフレーク曲線,シェルペンスキーの三角形などのフラクタル図形の特徴も,
美しく理解しやすい図による記述があります.

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