歩道タイルの市松模様の反転

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数学月間SGK通信 [2016.05.17] No.115
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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皆さんお変わりありませんか.良い季節になりました.
今日は町の歩道で見かけたタイルの景色についての軽い話です.

■問
Fig.1Aをご覧ください.綺麗な市松模様が見えます.
確かに斜めから見ると(Fig.1B)コントラストがあります.
しかし真上から見ると(Fig.1C)コントラストがつきません.何故か?

Fig.1
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/77/17449077/img_3_m?1463289592

■正解発表
タイルの条線がコントラストに差を生じると思ったでしょう.その通りです.
条線に直角な横方向から浅い視射角で見下ろす場合Aと,
条線方向から浅い視射角で見下す場合Bを比較すると,前者Aの方が暗く見えます.
だから,条線が市松模様になっているタイル張りを,浅い視射角で見下すとコントラストの市松模様が見えます.
見る方向を90°変えると,いままで条線方向を見せていたタイルは,条線が横方向になりますので,
タイル張りの市松模様コントラストは逆転します.

では,条線の横方向から浅い視射角で見下すAは,条線方向から見るBより,
タイルが暗く見えるのは何故でしょうか?

Fig.2
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/06/17451706/img_2_m?1463289812

Fig.2をご覧ください.視射角θが浅い(A)の場合は,条線の底(図中の緑)が見えません.
しかし,(A)の場合でも視射角θが大きくなれ条線の底(図中の緑)が見えます.
実地にタイルを観察してみると,条線は1mm程度凹んだ底で,
その上,条線の底はタイルの凸部より白くなっている(散乱光の光量が多い)のです.
従って,視射角が浅くなると条線(図中の緑)から散乱光が視点まで来なくなりタイルは暗く見えます.
一方,条線の方向から見た(B)の場合は,視射角にかかわらず,いつも条線の底(図中の緑)が見えますので,
タイルは大体明るく見えます.
この解答へのヒントとして,浅い視射角で撮影した写真(Fig.1B)と,
タイルの真上から撮影した写真(Fig.1C)を掲載しました.

■以上で,この話は完結で,私のfacebookに掲載したところ.読者の方から反響やコメントがありました.
写真(Fig.1A)で,横方向の条線タイルの中がさらに明・暗のコントラストに2分されている所があるのは何故かという疑問です.

写真(Fig.1A)の写真撮影では,できるだけ見やすく,均一な効果が出る場所を選ぶのに苦労しました.
説明通りに均一な市松模様のできる場所はありますが,1枚のタイルの中が明・暗に2分される場所もあるのです.
言及しないつもりでしたが,その説明が必要になり考えました.
タイル真上から見た写真(Fig.1C)を詳しく見なおしても,タイルの条線の幅も深さも均一です.
このような1種類のタイルで市松模様を作るという条件で,この現象の説明を考えるなら,
タイルが平面ではなく,タイルの表面が円柱表面のように(条線方向を円柱の軸方向)わずかに反っている場合
しか考えつきません.しかし,facebookの読者は,タイルの反りでの説明は満足しないようです.
そこで,タイル張りの別の場所(Fig.3A)で,真上から撮影した写真(Fig.3B)がありましたので,それも調べて見ました.
写真(Fig.3B)を見ると,タイル内の半分領域の条線がつぶれているタイルもあることがわかります.
これでこの疑問は解決しました.
つまり,完璧な条線のタイルだけで市松模様を作るという仮定から導けるパターンではなかったのです.
Fig.3
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/06/17451706/img_3_m?1463289812