対称性とピエール・キューリーの原理

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数学月間SGK通信 [2016.05.10] No.114
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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連休も終わってしまいましたが,皆さまお元気でお過ごしでしょうか.
大変な日々をお過ごしの方もおられるでしょう・お見舞い申し上げます.

今回は,対称性とキューリーの原理について紹介します.
ピエール・キューリーは,私の最も好きな科学者で,
キューリーの原理も学生の頃から今までずっと心を奪われている事柄です.
半導体や誘電体など色々な材料で,色々なデバイスが作られています.
例えば,半導体結晶を舞台にして,光子や電子が演じるパフォーマンス
を利用するのが,半導体デバイスです.舞台となる結晶世界は周期的なデジタル世界です.
(周期的な空間は「結晶空間」とも呼ばれます)
周期的な空間の数学(対称性)はとても重要で魅力的,いつも私の心をとらえていました.
この分野では,フェドロフ,シュブニコフ,ベーロフ,ザモルザエフなどの学者を輩出した
ロシアが大変魅力的で,1970年代にはロシアの本を一生懸命勉強したものです.

結晶の幾何学(数理結晶学発展史),結晶空間(周期的空間)の対称性
の話は,ぜひ取り上げたいと思っていますが,
今回は,キューリーの原理の易しい紹介にもどります.

色々な「系(もの)」や「そこで起こる現象(こと)」の理解に,「対称性」の考え方が使われます.
ピエール・キューリーは,“結晶という舞台”で起こる”物理現象の対称性”を研究しました(1894).
水晶結晶の圧電効果はその例です.
「舞台の対称性は,その舞台で起こる現象の対称性に反映されるべきだ」という因果律は,
キューリーの原理と呼ばれます.
色々な分野で,原因(舞台)と結果(現象)のそれぞれの対称性間でこの因果律がなりたちます.
例えば,結晶にX線ビームをあてたとき,結晶を通過したX線の作る回折パターンの対称性には,
その原因となった結晶の対称性が反映されています.
あるいは,運動量保存則が成り立つのは,空間が無限に広く一様であり,
平行移動しても変わらないからです.
エネルギー保存則が成り立つのは,時間に関して変わらない時です.

環境舞台とそこで生きる生物の形.結晶構造とそこで起こる物理現象.
万華鏡の鏡室と生じる繰り返し模様.
こられもみんな対称性の因果律が支配しています.
「もの」や「こと」の対称性とは,変換をほどこしても,
「もの」や「こと」が全体として変わらない性質です.
例えば,回転や鏡映で系全体が不変なら,その系には回転対称,鏡映対称があるといいます.

音楽や詩歌の形式や韻律.
絵画,壁紙模様,タイル張り模様,建物,などのデザイン.
.....,芸術を始め色々な分野で,対称性の考え方が役立ちます.