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美術・図工 伝統文様の練習問題

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数学月間SGK通信 [2019.03.26] No.260
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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周期的な2次元平面の互いに独立な並進ベクトルは2方向とれます.
これら2本の並進ベクトルが挟む平行4辺形を単位胞といいます.
並進ベクトルの組み(単位胞の形)を対称性で分類したものがブラベー格子です.
2次元のブラベー格子には,図に示す5種類があります.
そして,それぞれに対応する格子の図も掲載しておきました.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて,以下に伝統文様を10種挙げました
図の中に赤色ベクトルで,並進の周期を書き込んだ図もあります.
1.書き込んでない図にも赤色ベクトルを書き込んでみましょう.
赤色ベクトルの選び方はいろいろ可能ですが,
単位胞の形(赤色ベクトルで囲まれた平行4辺形)が
A正方形,B長方形,C120°の菱形,D任意角度の菱形, 
の4種類のどれかにあてはめるようにとれます.
2次元のブラベー格子の5種類のうち,一般形の平行4辺形に属する伝統文様は,
ここの例には挙げていません.
2.それぞれの伝統文様は,A,B,C,Dのどのタイプに属するでしょうか.
3.伝統文様のいくつかを,どこかで見たことがあるでしょうか.
私は立涌を壁紙で見かけます.

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美術・図工 小梁(OSA工房)のパズル★

この透明な立方体の箱(単位胞)が周期的に並ぶと,ページ65の空間の充填ができます.結晶はこのように単位胞が並んだ周期的構造です.
小梁(OSA工房)のパズルは,単位胞だけ取り出して充填させるパズルです.

   図1                   図2                  図3
図1は,透明な単位胞の底面中央に正8面体の上半分が見える様子です.この正8面体の残りの下半分は,見えませんが立方体の底面を突き抜けて存在します.
周期的な空間ですから,透明な箱(単位胞)の天井と床は同じもので,天井から箱内に向かって存在とイメージすると良いです.
単位胞内の底面の4隅には正8面体の1/8が見えます.この正8面体の残りの部分は,周期的な空間なので,図2のように立方体の壁を突き抜けて存在します.
図1のように並んだ正8面体の間隙には正4面体が4つ入ります(図3).

   図4                   図5                 図6

透明な単位胞の6つの面に,半割の正8面体を図4のように貼りつけました.単位胞内に6つの半割正8面体が入っています.単位胞の中心で,これら6つの半割正8面体の頂点が出会い,正8面体は稜を共有してつながります.
単位胞の中に含まれる正8面体の数は,半割正8面体6個と単位胞の8つの隅に1/8の正8面体がある(6×1/2+8×1/8)ので4個です.
図4をよく見ると,単位胞の内部にあるこの多面体(注)には8個の正4面体の間隙があることがわかります.従って,このような単位胞が繰り返される空間は,充填される正8面体と正4面体の個数比は1:2です.
注)半割の正8面体6つと,正4面体8つでできる多面体は,半正多面体{3,4,3,4}です.

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美術・図工 対称性から明らかである


■テープをこのように結ぶと正5角形ができることが知られていますが
なぜでしょうね.証明してください.


 

 

 

 

 

 

 

 

 

右の図は正5角形の外形と内部の対角線でできる星形が見えます.
対角線と正5角形の辺は平行で,赤く着色したものがテープであり,
テープの一方の端が対角線の星形を,もう一つの端が5角形の辺を
交互に入れ替えながら描くことが,軌跡を辿ってみれば確かめられます.
私は,正5角形であることの証明をどのようにしたらできるか
まだ考えたことがありません.案外難しそうです.
どうぞ良い証明ができたらここで教えてください.
いずれにしても,正5角形になることは,対称性から明らかです.
「この5角形の図形には,5回回転対称性があるので,この5角形は正5角形だ」
と言うのは如何ですか.一目でこの5角形は5回回転対称だとわかります.
これなら面倒なことを言わずにすむので,対称性は非常に強力な概念です.
このような論法をいろいろな所で使いたいのですが,乱暴ですか皆様どう思ますか.
■紙を2つ折りにすると折り目が直線になることを証明してください.
これも当たり前なのに,証明が面倒な問題です.
この問題に対する私の解答は,「対称性から明らかである」と言っておきます.

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美術・図工 球に近い正多面体は作れるか★

2018年もあと数日になりました.今年も,いろいろなことがありました.
おつき合いいただき有難うございました.
皆様にとって,2019年は良い年になりますように.
数学と社会の架け橋=数学月間の会からのお知らせです.この会を,
数学好きの同好会ではなく,分野横断的な市民活動にしたいと思っております.
社会でどのような数学が使われているのか?
上滑りでも言葉遊びでもなく,基礎を踏まえ本質をとらえた,見通しの良い説明で,そこにある数学に気づくことを目指します.
特定非営利活動法人「数学月間の会」が,来年早々スタートし,会員募集をする予定です.多くの皆様のご参加を呼びかけます.

■球に近い正20面体は,5つの正多面体(プラトン立体)のうちで,
最も対称性が高い(面の数が多い)もので,正3角形の面が20個でできています.
正多面体とは,正多角形(正p角形)の面でできていて,どの頂点の周りも同数の面(q個の面)が会している立体です.この立体を,シュレーフリの記号で{p,q}と記述します.
正多面体(プラトン立体)は,正4面体{3,3},正8面体{3,4},正6面体{4,3},正12面体{5,3},正12面体{3,5}の5つしかないことは証明できますから,
面数20より多い正多面体が存在するはずはありません.
しかし,例えばゴルフ球のディンプルはいくらでもたくさん作れるように思えなす.
正多面体の面を分割し続けると,いくらでも球に近い正多面体が作れるように思うかもしれません.しかし,そのようなことが可能なはずがありません.
ここで作るいくらでも球に近い多面体は,面が正多角形からわずかに歪むので,正多面体ではないのです.
正20面体の1つの正3角形の面を4つの三角形に細分化します.このとき,中心の三角形は正3角形ですが,その周りの3つの3角形は正3角形から歪むのを確認ください.
以下,細分化の操作を繰り返すたびに,面の数は4倍ずつ増加します.そして,細分化された面で正3角形のものは,初めの正20面体の面の中心にあるものだけです.
だから,正20面体を細分化して,球に近い多面体を作っても,その対称性は正20面体と同一(細分化しても対称性は上昇しません).素性は隠せないのです.細分化された多面体の面は正3角形ではないので,細分化でできる多面体は正多面体ではありません.
(この細分化で用いたjavaプログラムは郡山彬氏が作成しました)

 

 

 

 

 

 

 

私はいくつかのゴルフ球のディンプルを調べましたが,
正多面体{4,3}の細分化の系列と,{5,3}の系列のものがありました.

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美術・図工 イスラムのデザイン

「美しい図形と奇妙な空間」
 
東京ジャーミイ(代々木上原,東京)にある装飾です.左写真は祭壇の横にあります.
イスラム特有の美しい複雑な図形です.右の写真はステンドグラスです.
これらの図形の美しさの原因の一つは,これらの図形が黄金比だらけだからでしょう.

 

 

 

 

 


もう一つの原因は,折りたたまれた空間のような不思議感じがあるからでしょう.
図の一番左は辺の長さが黄金比の2等辺三角形です.
つまり底辺を1とすると,等しい2辺は1.618...
真ん中の図は,正5角形の中にできる星形で,
星の頂角は黄金比の三角形にでてくる頂角36°と同じです.
一番右の図は,この星型とこの星型を180°回転したものを重ね合わせたものです.
東京ジャーミイの美しい図形は,星形を2つ重ね合わせたものになっているのに
お気づきでしょうか.

 

 

 

 


星形を2つ重ねた図形の対称性はどのように記述しましょうか.
まず,星形の対称性は.点群5mです(5は5回回転対称軸,mは鏡映面).
重ねた図形には,2回回転対称軸2があるので部分群として点群2を含みます.
結局,2つの点群の直積として2⊗5m=10mmの点群になります.
あるいは,星形5mを「法」にすると,10回回転操作(36°の回転)は
{1,10(mod5m)}のような,位数2の点群としても理解できます.
この考え方は,奇妙なもので,36°回転を2回続けると元の星形に重なるから
振り出しに戻ったと見なすわけで,我々の3次元ユークリッド空間では
360°回転しないと元に戻らないのですが,この奇妙な空間があるとすると
2x36°=72°回転すると元に戻ることになります.

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