ブログ倉庫

会議・研修 デジタル思考を止め確率を正しく理解しよう

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
数学月間SGK通信 [2014.05.10] No.003
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆7月22日--8月22日は数学月間(since2005)☆
日本数学協会は,2005年に,7月22日-8月22日を数学月間と定めました.
この期間は,数学の基礎定数 π(22/7=3.142..) とe(22/8=2.7..) に因みます.
この期間に,数学への関心を高めるイベントが各地で開催されるよう応援しています.
イベント情報を,日本数学協会,数学月間の会にお寄せください.
毎年,月間の初日7/22に,数学月間懇話会を開催しています.
お気軽においでください. 詳細は⇒ http://sgk2005.sakura.ne.jp/

■■必要とされる大量データ解析新手法
■大規模データ解析の困難さ!
2011年の数学月間懇話会(第7回)のテーマの一つは,”サイバー世界のモデリング”
北川源四郎氏(統計数理研究所)であった.今日,我々の周囲で莫大なデータが
収集されるようになったが,解析すべきパラメータ数も多くなったので,
データ量がやはり不足している(「新NP問題」).溢れるデータから必要な解析を
行うには,新手法が必要とされる.
数学月間懇話会(第9回)の記録⇒
http://sgk2005.sakura.ne.jp/htdocs/index.php?key=jox165hdn-11#_11

2012年の米国MAMのテーマも,<数学,統計学とデータの洪水>だった.
統計学は,品質管理,医療・創薬・臨床,経済金融,統計調査,データマイニング
などの分野に係わり,現在ますます必要性が増している.
大規模データ(データの洪水)といっても,被験者1人から大量(P種類)の特性データ
を採集できるのだが,解析する特性数より被験者の数(N個)がはるかに少ない
(N<<P)という状態であり,この状態で推論を行うのはとても難しい.
これが「新NP 問題」と呼ばれている.
つまり,大規模データがあるといっても,データはむしろ不足している.
このような状態に適用できる統計的推論の新手法が必要とさる.

■不確かさで満ち溢れた世界!
私達は,観測データからモデル(現象を起こす仕組み)を推定します.
このモデルが,全ての観測データをよく説明したとしても,このモデル(サイバー世界)
が真実であるがどうかは誰にもわからない.将来,このモデルで説明できないデータ
が観測される可能性は消せないのですから.
かように私達の世界は,不確かなことで満ち溢れています.

■■編集後記
私達は,yes/noのデジタル思考に毒されているので,数学や科学は,yes/noの
答えを出せるはずと思い込んでいます.あるいは,判断できないと知りつつ
「専門家の判断」と言って責任転嫁に利用するのは政治の常套手段です.
真実はあるのだが,yesでもnoでもないのが真実.それを,「yes/noに2値化」
するのは科学ではない.まことに理不尽な要求です.
科学が出したグレーゾーンの結論を,自分に都合の良いように2値化するのは,
似非科学で結果だけを報道する大手メディアの数学リテラシーの欠如を憂います.
安全/危険の2値化区分を何処に置きますか?数学や科学で答えを出せません.
その判断は,国民がどのような価値を選択するかの問題です.
これは,科学を超えて判断する<トランス・サイエンス>の課題になります.
数学科学の結果を恣意的に利用され,数学科学の信用を落としてはなりません.
数学月間が今ほど必要な時代はありません.

0

会議・研修 米国MAMの起源=レーガン宣言

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
数学月間SGK通信 [2014.05.07] No.001
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■数学月間を知っていますか
7月22日~8月22日は数学月間です.
日本数学協会は,2005年に,7月22日~8月22日を数学月間と定めました.
この期間は,数学の基礎定数 π(22/7=3.142..) とe(22/8=2.7..) に因みます.
「数学が社会を支えていることを知り,逆に,社会の課題を数学が知る」機会
です.この期間に,数学への関心を高めるイベントが各地で開催されるよう
応援しています.SGK通信に情報をお寄せください.
毎年,月間初日の7月22日には,数学月間懇話会を開催しています.

■■お知らせ
数学月間懇話会(第10回)
日時●7月22日,14:00-17:10
プログラム●
1.人口の集合関数としての「民力指数」
松原望(東京大学名誉教授,聖学院大学)
2.スパゲッテイを巡る旅,
中西達夫(株・モーション)
3.数学月間の狙と効用,今年の米国MAM
片瀬豊,谷克彦(日本数学協会)
会場●東京大学(駒場)数理科学研究科棟,002号室
最寄り駅●京王井の頭線「駒場東大前」
参加費●無料
問合せ先●日本数学協会,数学月間の会(SGK)
sgktani@gmail.com,谷克彦(SGK世話人)
一般の方が対象ですご参加お待ちしています.直接会場においでください.
17:30からは,構内で各自払いの懇親会も予定しています.
----------------------------------------------------------------------

■■数学に関心を(第1回)
■米国MAMはレーガン宣言から始まった
連載第1回目は,米国MAMのスタートとなったレーガン宣言です.
全文を掲載します.
どなたの草稿か知りませんが,格調高く今日でも心を打ちます.
米国MAMのスタート時は月間行事ではなく,週間行事MAWでした.
⇒http://sgk2005.sakura.ne.jp/
----------------------------------------------------------------------
アメリカ合衆国大統領による宣言5461
「国家的数学週間」1986年4月17日

宣言(National Mathematics Awareness Week)

およそ5000年前,エジプトやメソポタミアで始まった数学的英知は,
科学・通商・芸術発展の重要な要素である.
ピタゴラスの定理からゲオルグ・カントールの集合論に至る迄,
目覚ましい進歩を遂げ,さらに,コンピュータ時代の到来で,
我々の発展するハイテク社会にとって,数学的知識と理論は
益々本質的になった.
社会と経済の進歩にとって,数学が益々重要であるにも拘わらず,
数学に関する学課が米国教育システムのすべての段階で低下する傾向にある.
しかし依然として,数学の応用が医薬,コンビュータ・サイエンス,宇宙探究,
ハイテク商業,ビジネス,防衛や行政などの様々な分野で不可欠である.
数学の研究と応用を奨励するために,すべてのアメリカ人が日常生活において,
この科学の基礎分野の重要性を想起する事が肝要である.
上院の共同決議261で,国会が1986年4月14日から4月20日の週を,
国家的な数学週間に制定し,この行事に注目する宣言を出す事を
大統領に要請した.
今日,アメリカ大統領,私ロナルド・レーガンは,
1986年4月14日から4月20日の週を国家的数学週間とする事を,ここに宣言する.
私はすべてのアメリカ人に対し,合衆国における数学と数学的教育の重要性を
実証する適切な行事や活動に参加する事を勧告する.
その証拠として,アメリカ合衆国の独立から210年の西暦1986年の4月17日,
ここに署名する.ロナルド・レーガン(Ronald Reagan)
----------------------------------------------------------------------

■米国MAM活動の様子(2006年当時の記事)

各地の大学を中心に,講演会,講習会,展示会等が展開される.
婦人向け数学講習会,女性数学者の伝記奨励,数学に関する優れた記事を
書いたジャーナリストの表彰,教え方の優秀な高校の数学教師と大統領が
食事を共にする等々の行事が報告されています.[いかにも米国らしい]
毎年,国家的に統一テーマが選定され,開発されたテーマ用素材は,
電気自動車[2006年当時は先端だった]を使って配られる.
活動の総括と結果集計は、毎年,春に行い,次年度への企画の検討に入る.
力を結集し参加を奨励するために,AMS,MAA,SIAMのリーダー,部門長,
選ばれた高校の先生,公共政策の代表者,関係する団体のリーダー達へ,
その年のMAMの小包が送付される.これには,カラーポスター,はがき,
現地の活動に役立つ素材のリスト,特別なMAM行事を行うにあたりメディア
報道等を含んでいる.
MAMの活動は,学部,先生,諸学年の生徒,両親,他の公共社会のメンバー,
公的政策リーダーやビジネスマンなど幾千人もの意見で評価される.
----------------------------------------------------------------------
■MAMの年度別テーマ

1986数学----基礎的訓練
1987美と数学の挑戦
1988米国数学の100年
1989発見のパターン
1990通信数学
1991数学----それが基本
1992数学と環境
1993数学と製造業
1994数学と医学
1995数学と対称性
1996数学と意思決定
1997数学とインターネット
1998数学と画像処理
--MAWからMAMへ------
1999数学と生物学
2000数学は全次元に
2001数学と海洋
2002数学と遺伝子
2003数学と芸術
2004ネットワークの数学
2005数学と宇宙
2006数学とインターネット保全
2007数学と脳
2008数学と投票
2009数学と気候2013持続可能性の数学
2010数学とスポーツ
2011解明進む複雑系
2012統計学とデータの洪水

注)略語表
MAM:Mathematics Awareness Week
MAM: Mathematics Awareness Month(4月)
AMS:American Mathematical Society米国数学会
MAA: Mathematical Association of America米国数学協会
SIAM: Society for Industrial and Applied Mathematics工業応用数学会
ASA: American Statistical Association米国統計学協会
JPMB: Joint Policy Board for Mathematics米国連結政策協議会
*)2006年から、ASAが加盟することになった.

■■編集後記
数学月間は数学者のものではなく,一般人が対象です.数学は,
ものごとの本質を追求し,装飾を剥ぎとり,その本質をあぶりだします.
出来上がった抽象化された概念体系(定理)を,数学者は美しいと感じます.
数学とは,そのような理論体系であるべきことは確かです.
しかし,このようにして出来上がった抽象的な数学を見せられても,
一般人は興味が湧かない.そこで,数学月間は<数学と社会の架け橋>として,
数学が実際の課題に使われていることを示して行こうと考えています.

大学の数学では,完成され抽象化された数学を,数学科の先生が教えます.
これは,数学科の学生に対する教程としてはオーソドックスなものですが,
数学科でない学生には不親切であります.工学,薬学,経済学など,
それぞれの専門に適した内容の数学が必要であると考えられ始めました.
このような議論は,英国のMMPや日本の「教育数学の構築」などで見られます.
SGK通信にご意見などをお寄せください.

0

正方形の車輪

国立数学博物館MoMath(National Museum of Maths)は,米国唯一の数学博物館で,ニューヨークのマディソン・スクエアに,2012年12月15日オープンした.
ここには30以上の対話型展示がある.
ホールの展示で目立つのは,正方形の車輪の3輪車が滑らかに走る光景である.
たいへん興味深いので,床面の曲線がどのような形であるかを計算してみた.
ここに掲載する結果は,2013年7月22日の数学月間懇話会(第9回)で
谷が発表したスライドである.
注)2013年10月2日に開設された東京理科大学「数学体験館」にも
同じような4角い車輪の車の展示がある.

数学月間懇話会(第9回)スライド

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

0

会議・研修 マット・パーカーの27枚のカード・トリック

◆27枚のカード・トリック
米国の数学月間MAMは毎年4月です.今年は,マーティン・ガードナーの生誕百年にあたります.
それを記念して,MAMのテーマは,”Maths, Magic and Mystery”でした.
4月は,毎日一つの面白い話題が発表されました.
27日に発表されたのは「27枚のカード・トリック」でした.
27の枚カード・トリックは,マーティン・ガードナーが1956年に発表したものですが,
それをマット・パーカーが発展した新バージョンです.
詳しくは⇒ 数学月間の会

◆Matt Parker
エジンバラ・フェスティバルでは大人気のコメディ・ショーを持つ数学コミュニケータ.楽しいです.⇒ http://www.standupmaths.com/

◆27枚カードのトリックは次のように演技される:
観客に任意のカード1枚(例えば,スペードA)と,27以下の数字(例えば18)を選ばせる.
演技者は,選んだカードが何んであるか知らない.選ばれたカードを含む27枚のカードは十分に混ぜられ,裏向きの束に積み上げられている.演技の最後には,27枚のカード束の上から18番目の位置に,選ばれたカードを移動して見せる必要がある.つまり,スペードAの上に17枚のカードがあるようにしたい.
この演技のプロセスに,3進法が利用されている.
3進法で17を表すと17=2x30+2x31+1x32で,221と表記される.
(ここでは,1の位から先に表記しているので,慣れている表記と逆順になるのに注意)
演技者は,27枚のカードを,3つの山に,1枚づつ配り分けていく.
選ばれたカードがどの山に入っているか聞いてから,3つの山を,さりげなく重ね合わせる.
再度同じ操作を繰り返す.結局全部で,この操作が3セット繰り返され,1つの束ができるが,不思議なことに求めるカードは,上から18番目に置かれている.
このトリックのミソは,3つの山を重ねる順番にある.重ねる機会は3回あるのだが,
各回の束を作る時,どの山を上(Top=0),中(Middle=1),下(Bottom=2)の
何処に置いたら良いだろうか?
さりげなく手際が良いので見分け難いが,ビデオの後半で,マットがその仕組みを説明する.
日本語の解説は⇒ 数学月間の会
ビデオをよく見て練習しましょう!⇒

0