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「美しい幾何学」(9月9日発売)の紹介

日刊ベリタに紹介された記事の要旨をご覧ください.

この図鑑(「美しい幾何学」技術評論社)には美しい図形や不思議な図形がたくさん出てきます。そのような図形の仕組みを「見ているだけで理解できるように」したいのです。数式を使えば正確な説明が楽にできますが,そのためには,たくさんの数学準備の回り道があり,焦点がぼけてしまいます。小学生から大学生まで,本書の図を眺めているうちに,図形に隠された仕組みが自ずとわかることを狙いました。普通の数学書のように抽象的な記述だけで終始しません。
内容には大学の専門課程レベルのものもあり,初めはわからないこともあるでしょうが,何度も図を見ていると,不思議なことに理解できる時がきっと訪れるはずです。

実はこの本の各章は,万華鏡で繋がっているのです.1,2章は有限図形,3,4章は周期的な空間,5章は万華鏡,6章は円による反転という数学的な鏡,7章はフラクタル操作という数学的な鏡,8章はイスラミック・デザインの特徴を鑑賞します.それは,黄金比が多く,かつ,局所的に高い対称性がちりばめられた周期平面なので,あたかも我々の住む3次元に高次元宇宙が投影されているような不思議さが魅力です.数式は極力減らしたので,楽しめると思います.

 

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フィボナッチ数列の出現★

0と1だけが並んでいる語を考えます.そのようなn桁の語をn-bit語と呼びます.
連続して1を含まないn-bit語はいくつあるでしょうか.
(1)n=1のとき,そのような語は,0, 1,ですから,計2個あります.
これをa(1)=2と書きます.
(2)n=2のとき,そのような語は,00, 01, 10で,a(2)=3個です.
11は1が連続するので条件に合いません.
(3)n=3のとき,そのような語は,
n=2のときの語の末尾に0を付加した,000, 010, 100,のa(2)個,
および,n=2のときの末尾に1を付加したものと言いたいところですが,
1の連続を避けるために,n=1のときの語に01を付加し,001, 101のa(1)個で,
互いに背反するこの両ケースを合わせて,a(3)=a(2)+a(1)=5です.

連続した1のない語の数の数列a(n)は,このような手順(一般のnで成立)で作れ,
2,3,5,・・・・・と続き,a(n)=a(n-1)+a(n-2)が得られます.
これはフィボナッチ数列の再帰的な定義そのものです.
フィボナッチ数列F(n)は,1,1,2,3,5,・・・・・ですから,
a(n)は3項目から始まるフィボナッチ数列です.a(n)=F(n+2)

それでは,連続した111を含まないn-bit語の数はいくつでしょうか.
これも同様な議論で,a(n)=a(n-1)+a(n-2)+a(n-3) となることが証明できます.

(問題)n個のコインを順番に投げて,連続して表がでない確率を求めよ.
(解)連続して表の出ないに相当する語の数はa(n)=F(n+2)でした.
n個のコインを順番に投げて実現する状態数は2nですから,求める確率はF(n+2)/2nとなります.

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とっとりサイエンスワールドin倉吉

今年のとっとりサイエンスワールドの3回目(in倉吉)は8月25日の日曜日でした.
in米子7月30日(参加者891人)では,万華鏡は30人x4回,in鳥取8月4日(参加者1086人)では,万華鏡は30人x5回,in倉吉8月25日(参加者1090人)では,万華鏡は30人x5回を実施しました.
いずれの会場でも晴天に恵まれ暑い中,皆頑張りました.小さい子供達も一生懸命作って,
出来上がるととても喜んで見せに来ます.誰もがみんな達成感が味わえて満足でき,楽しい経験になるでしょう.このようなことで数学や理科に興味を持つ子が増えることを願っています.

万華鏡で説明すべきことはいくつかあります.(1)合わせ鏡:1対の平行な合わせ鏡が,直線上に並ぶ像を作り出すこと.(2)像の配列は市松模様(正像と反射像が交互に繰り返す).(3)交差する鏡の作り出す映像の配列は円上に並ぶこと.(4)鏡の交差角θの2倍が市松模様のペアに対応し,円周上で映像が規則正しくつながるための条件は.360/(2θ)=整数[割り切れること].
4番目の理解には,1点のまわりは360°ということを知っている必要があり,この知識は4年生で学びます.

作業には,自然に身に着いた物質を扱う手先の感覚が必要なのです.これは大人(学問のあるなしとは関係ないようです.表面張力とか粘性とか知識はあるのですが)でもできない人が多いし,小さな子供でもうまく扱える人もいる.粘性のある液体を壁伝いに流し込み試験管の底まで導き,詰め込んだガラスくずの中の空気と入れ替えることが,なかなか難しいらしい.
昔の私たちは子供の頃,毎日水遊びや泥んこ遊びをしていて,これらの物質の性質や力加減は,すっかり身についています.あたかも熟練の職人がやるように試験管を回転させながらとか臨機応変な手で簡単にできるのですが.このようなことが身についていないと職人にはなれません.
そういう意味で,数学だけを勉強するのは本当はあまりお勧めしません.

数学では,√3 などと答えるのが正しいのですが,もの作りでは1.732などと少数で答える必要があります.これらの数値で四則演算するので,工学部の学生には,有効数字という概念を,まず徹底する必要があります.そうでないと,無駄な計算を際限なくやることになります.
このようなことも,学問以前の生活で身に着けるべきことではないかと思っています.

■サイエンスワールド(8月25日)の前日に倉吉に着きましたから,以前から行きたいと思っていた三徳山三佛寺に行って来ました。絶壁の中に建つ投入堂は役行者が法力で作ったという,日本一危険な国宝です.ハイキングではなく修験道の山ですから危険な箇所ばかりで,単独行は禁止されてます.知り合いになったシニアと4人のパーティができました.私以外の3人は山のベテランでしたので幸運でした.鎖で登るのも難所でしたが,下りはもっと難しいです.しかし,皆様の指導がよく無事生還できました.私は足のしびれがあるので足が攣ったときつらかったが,なんとか持ちこたえました.筋肉痛ですが翌日のイベントも盛況に終わりホッとしています.

投込堂や危険なコースのことは,後日項を改めます.

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数理資本主義の時代

数理資本主義の時代だそうだ.この経産省の調査報告の表題には違和感はあるが,
 GAFA(Google,Amazon,Facebook,Apple)と言われるIT企業の繁栄を見れば,
ビッグデータを解析する数学が国富の源泉である(気に入らない表現だが)という主張にも一理ある.
米国では,ビッグデータの時代を迎えて,市民への数学啓発の「数学月間」も「数学統計学月間」に衣替えしている.
日本は米国に20年は遅れているといわざるを得ない.
経産省はあせっているようだが,ことさらに利用できる数学をそのように強調し,
強者になるための道具にすることには違和感がある.
高い年収が得られるとのキャンペーンに動かされて数学を職業とするのでは本末転倒,底が浅いと言わざるを得ない.

これまで,電気電子,計測などの工学部が応用数学の研究と教育を担っていたが,
コンピュータの発展により,数学能力が低下したのは事実と思う.
例えば,理論を何も知らずとも優れたコンピュータ・ソフトを操り,
良い結果を得る状況はしばしば目撃してきた.
しかし,これからのAI(ディープラーニングなど)は,コンピュータ・ソフトを使いこなしてもダメで,
データ・サイエンスの基礎となる数学(確率,統計,情報理論,グラフなどの離散数学,
線形代数,離散Fourier,トポロジーなど)は何でも総動員する.
近年,日本でも工学部にデータ・サイエンス部門が新設され始めている.
データ・サイエンスの基礎となる数学を扱うカリキュラムを作り出す工夫が最も重要であろう.

私は「数学では物は作れない」という意見も正しいと思う.
データ・サイエンスもデジタル制御も強力なコンピュータがあって初めて出来る.
そして,コンピュータが扱うのは数値(解析や予測)のみである.
工学は具体的に物や反応に働きかけねばならない.コンピュータ全盛前には
アナログ制御も工学が応用数学を発展させすばらしい成果を出しているではないか.
これまでの応用数学に敬意を払おう.
「コンピュータは役に立つが数学は役に立たない」とは誰も思ってはいないはずだ.

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亀井図を素数のべき乗が作る1次元格子で拡張する

■2次元,3次元の格子点に配置された約数構造
左図の2次元格子{2n・5m}は,素数2および5が生成する2つの1次元格子{2n}と{5m}の直積で生まれる.10の2次元約数構造が,それぞれ格子点に配置されたものとみなせる.

右図の3次元格子{2p・5q・3r}は,3つの素数2,5,3がそれぞれ生成する1次元格子{2p},{5q},{3r} の直積で生まれる.これは,30の立方体約数構造が,3次元格子点に配置された構造とみなせる.

■4次元約数構造を,新設した1次元格子の格子点に配置してできる4次元+1次元格子の約数構造で,この格子点は37037(右端の4次元超立方体)の約数構造と,新設した素数3の1次元格子{3n}との直積で得られる.

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約数の系統的な構造を示すグラフ(亀井図)

■まず210の約数の構造を例に,亀井図の性質を調べてみましょう.
210の約数の系統的な構造は,4次元の超立方体と同じ構造です.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


210は4つの互いに素な素数の積210=2・3・5・7から出来ているので,4次元超立方体と同じ構造です.
頂点1のレベルには1個,頂点2のレベルには,4つの素数で4個.頂点6のレベルには,2つの素数の積で,4C2=6個.頂点30のレベルには,3つの素数の積で,4C3=4個.頂点210のレベルは,4つの素数の積で,1個です.4次元の超立方体には対象心があり,互いに点対称な頂点の積は210になることも理解できます.
4次元の超立方体の1つの次元(例えば,素数2の方向)を消すと,3次元の立方体の2つに分離します.同様なことを,それぞれの3次元立方体で考え,例えば,素数7の方向の次元を消すと,3次元の立方体は2次元の面(例えば1-3-15-5)に分離します.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このような性質を利用して,さらに高次元の6次元や7次元の超立方体を,同様に作れます.

■こんどは,5次元の超立方体を調べます.2310を素因数分解すると,2310=2・3・5・7・11ですから,2310は5次元の約数構造を持つ最小の数であるはずです.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この5次元の超立方体は,素数2の方向の次元を消し去ることで,4次元の超立方体1155と2310の2つに分離することはお判りでしょう.
5次元空間は,1次元空間と互いに直交する4次元空間の直積で表現できるからです.
あるいは,互いに直交する2次元空間と3次元空間の直積ともみなすことができます.
例えば,2次元空間の代表を1-2-6-3とし,3次元空間の代表を385とすると,
385,770,2310,1155 の4つの3次元の立方体を見ることができるでしょう.

続く⇒亀井図を素数のべき乗が作る1次元格子で拡張する

 

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約数の構造を表示するグラフ(亀井図)

今日は広島原爆の日です.7月22日の数学月間懇話会では,秋葉忠利(前広島市長)さんの講演がありました.私も,秋葉さんの著書「数学書として憲法を読む」を今読んでいます.
憲法の明文規定を公理として読むと,いくつかの定理が導けるというものです.
そのような定理の1つに,改正してはいけない条項の存在があります.例えば9条や11条はそのような条項で,改正すると自己矛盾を起こします.

8月4日は,とっとりサイエンスワールドin鳥取市でした.多くの高校生,中学生ボランティアの参加がありました.全参加者は,1,086人ということです.万華鏡は5クラス実施し120人が万華鏡を作りました.

 

■約数の構造をわかり易く表示するグラフ(亀井図)について取り上げましょう.この詳細は,
亀井喜久男;1992年数理科学,1992年1月号,p68-73によります.

このようなグラフには数学のいろいろな分野で出会うことがありますから,その性質や応用をじっくり考えてみると面白いでしょう.数学月間の会でも,このようなグラフ(亀井図)について学ぶ機会を企画したいと思っています.

約数の構造に関しては,数学Aの研究課題として高校生にもなじみやすいものであるし,
高次元立体の解釈にも発展できるので興味深いものです.亀井氏は多元構造図とも呼んでいます.

 ■まず実例を示しますので慣れましょう:

(1)30の約数の構造.30=2・3・5

 

 

 

 

 

 

 

 

(2) 210の約数の構造.210=2・3・5・7

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(3) 2310の約数の構造.2310=2・3・5・7・11

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回ここで見た30,210,2310の約数の構造は,それぞれ3次元,4次元,5次元の超立方体と同じ構造のグラフとなりました.大変興味深いことです.

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277■鏡の迷路

7月28日(日)はとっとりサイエンスワールドin米子でした.891人の参加者があり,万華鏡は30人クラスを4回で120人が作りました.前日の27日(土)は米子がいな祭りで街は大変な賑わいでした.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて,米子にあるとっとり花回廊で,期間限定の鏡の迷路をやっていることを知りました.どんなものかちょっとでも見たかったので,帰りに寄ることにしました.オープンが10時で帰りのシャトルバスが10時30分ですから,歩く時間を入れると迷路に居たのは数分でした.急ぐほど迷い込んでしまいますから,速く脱出出来て良かったのですが,もう少しゆっくり楽しみたかったです.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鏡の迷路は正3角形のタイル張りの世界を鏡で作っています.セルが正3角形だと隣のセルへの通路が3つですが,どれを選ぶか迷います.もしセルが正6角形で蜂の巣様だったら通路は6つあり,ものすごく面倒な迷路になるでしょう.作ってみたいものだと思いました.2列に並んだ正6角形セルの帯の上で,1つのセルから逆戻りしない条件で,ハチが移動するとして,n番目のセルにたどり着く異なる道の数はフィボナッチ数列1,2,3,5,8,・・・で増加することが証明されています.セルの数が増えればものすごく面倒な迷路が作れるでしょう.
■肝心の万華鏡のワークショップの様子レポートは,次の写真をご覧ください.

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276■数学書として憲法を読む

本日7/22は,先の号でお知らせした数学月間懇話会を開催しました.
たいへん楽しい会で懇親会も盛り上がりました.
プログラムは以下の様でした.
1.片瀬豊さんと数学月間,谷克彦
2.教育数学と高大接続,岡本和夫
3.数学書として憲法をよむ,秋葉忠利

今回のメルマガでは3の内容の一部だけのホットな速報です.
秋葉忠利(前広島市長)氏の講演は,同名の書籍の発売に合わせタイムリーです.
都合に合わせた解釈や改憲がまかり通るようではなりません.
この時期に特に国会議員は心して読むべきでしょう.
憲法の全体は,無矛盾,自己完結するとして,文字通り憲法を公理の集まりと見て
素直に読んでみます.すると,論理的にいくつかの結論(定理)を導くことができます.
まず面白いのは,
憲法改正の手続き規定である96条の対象にならない「改正不可条項」があることが示されます.
改憲禁止の条項があるとは明示されてはいないが,論理的にそのような結論になる条文は
かなりの数(8か条)あることを論理的に導いています.改正不可能な条文もいれて,
改正の対象にならない条文は30か条を超えるそうです.また,96条は改憲のための必要条件に過ぎないそうです.
義務という言葉は素直に法的義務と読むべきなのですが,
都合の悪いところは道義的要請とよむ「憲法マジック」が通用しているそうです.
99条に対してそのような曲解がなされています.
「国民の総意」というのは大事な文言ですがその意味するところは深いですね.
多数とは違い総意なのです.ゆっくり読んでみましょう.

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275■オーボールとフラーレン

以下の写真はオーボールという赤ちゃんのおもちゃです.

球の表面は互いに接する大きい円20個と小さい円12個でできています.
円を正多角形にすれば,いわゆるサッカーボールの形で,正6角形20個と,正5角形12個です.
正12面体と正20面体は互いに双対な多面体で,
オーボールの小さい円は正12面体の面,大きい円は正20面体の面に対応しています.
オーボールの大きい円は正12面体の頂点,小さい円は正20面体の頂点になり,
両者の頂点32個でできるサッカーボールに双対な多面体は菱形30面体です.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


菱形面の対角線比は黄金比です.
さて,大きい円と小さい円の半径の比はいくらでしょうか?
(解答)これはC60(フラーレン分子)と同じ形なので,
正5角形の1辺も正6角形の1辺も同じ長さ(C-C結合のボンド長)ですから,
オーボールの大きい円と小さい円の半径の比は,
辺の長さの等しい正5角形と正6角形の外接円(あるいは内接円)の半径比となります.

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理数科離れと産業空洞化

■不特定市民を対象に数学への共感を呼びかけるMSAM
米国の数学月間MathsAwarenessMonthは1986年のレーガン宣言により始まりました.
1989年には昭和が終わり,1991年はベルリンの壁崩壊,ソ連邦解体と続きます.1990年には日本の製造業(例えば半導体)は世界一位になります.レーガン宣言は「数学は万学の基礎であり,国力(産業)の基礎である」と謳い,工業力の基の数学力の低下の危機をくい止めようとの政策でした.こうした背景下で,1986年に創始された数学月間MAMは,毎年その年の統一テーマ(1994数学と医学,1995数学と対称性,etc.)を決めて,大学などを拠点に,毎年4月に全国各地で展開されます.統一テーマの変遷をみると公平に見て非常に納得のいくものです.数学関連4学協会が協力したJPBM(Joint Policy Board for Mathematics)が次年のテーマを決め実施します.
日本では,米国のように社会と数学は無縁でないことを啓蒙する動きは弱く,小林昭七教授から米国MAM情報を聞き監視していた片瀬さんが,見かねて日本の数学月間を提唱(2005年),私たちのボランティア活動が始まりました.米国に20年遅れていますし,その規模は比較にもなりません.
■90年代は,世界的な生産の空洞化の始まりです.それ以前から起きていた理数科離れは,これによりさらに加速されます.80年代は,サンシャイン計画,超LSI技術研究組合など,官民共同の技術開発が隆盛で,私たちもアモルファスシリコンの研究をしました.成果が出て技術が完成しても,商品とならないことを,このとき私も経験しました.製造コストで中国に負け生産の空洞化の連鎖が続きます.研究費削減,技術者集団の解散冷遇の社会が,理数科離れのもとになったと思っています.1990年に世界の頂点に達した日本の半導体技術も,その後は衰退の一途でした.
空洞化はグローバル企業による属国化を進め,ラチェット原則による規制撤廃,労働者の流動化,などは,国家の主権を守れず民主主義の危機に陥っています.
■90年代は日本では理数科離れとゆとり教育の時代でした.米国も同様に理数科離れはあったのですが,米国の数学月間MAMは,数学と社会のかかわりを数学の入門から先端まであらゆるレベルで学習できる非常に優れた指標を与えました.
2017年からMAMは統計学Statisticsを加えてMSAMになりましたが,これもGAFAで象徴される大量情報の状況に対応したものです.STEM教育という科学技術工学数理の融合重点教育も米国で始まったものです.
市民に対して数学への共感を惹起する,米国のMAMやMSAMのような活動が日本でも重要です.

■生徒を対象に豊かな数学を体験させるNMF
米国国民数学祭りNationalMathsFestivalは,MSRI(Mathematical Sciences Research Institute) がMoMathなどと協力し,毎年5月[今年は4日(土)]に,ワシントンDCと40州の科学博物館で実施しています.あらゆる年齢層の2万人の参加者があります.もう少し地道に,学校カリキュラムや試験準備でない豊かな数学能力を育てる活動が,米国の「数学サークル」や「数学の月曜日」です.学校カリキュラムと併用するので,能力別教育により個性を伸ばすことができます.
日本のゆとり教育は,意欲のある生徒と有能な教師にとっては有効であったが,画一的な教育では時間の浪費になりました.
•数学サークル(月1,地域の大学に実施)
•数学の月曜(週1の昼食時,ゲームなどの教材がある)

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ゆとり教育

■ゆとり教育は2002年から実施され2008年に終わりました.学力低下の弊害などが指摘されています.しかし,その理念は競争社会へのアンチテーゼであり,望ましいことでした.「総合的な学習の時間」が作られ,豊かな学習プログラムが可能になり,私なども全国各地の学校に行き万華鏡の授業をしました.子供達には楽しいイベントになり,ほんの少しは数学に興味を持ったでしょう.面白いところだけやる一回きりの授業ですから,毎日授業をしている先生方にはずいぶん迷惑をかけたのではないかと思います.
■ゆとり教育では,少数点以下1位の数までしか使わないとか,円周率は3にするとかがよく例にされます.これは,計算を簡単にして,主題の問題に思考を集中するためなのでしょうが,数字の概念を歪めてしまう欠点があります.数直線上の点は連続で,実数に対応します.「実数」という述語はまだ使わないとしても,将来出会う概念の準備をしたい.「整数」は「実数」のうちの特別なもの.「実数」には分数で記述できる有理数と,分数では記述できない無理数があること.円周率は無理数であることに気づくときがいずれ来ます.自分の知っていた数が属する広い数の世界の体系に感動するでしょう.円周率が整数であるかのような単純化は有害です.

ゆとり教育が終わり,新指導要領とのことですが,分数は分母が2の冪乗のものと,その他の数の場合とは,別々の年度で教えるそうです.2の冪乗は丸いピザの分割で説明しやすいというのがその理由だそうです.しかし,分数の定義では何等分でも一貫したやり方が,概念の把握を明確にします.わかり易くしようとして,数学概念をゆがめるのは有害です.
■さて,ゆとり教育の始まる以前の80年代から,理数科離れと学力低下は始まっていたようです.このような社会風潮は,90年代に始まる産業の空洞化と無縁ではないと思います.報われない技術者と社会の数学軽視の風潮,両親の数学軽視は子供の理数科離れを生み,産業の空洞化はさらにその傾向を加速する負のスパイラルになりました.1990年に世界1位になった日本の半導体技術の凋落ぶりは今や見る影もありません.グローバル企業による属国化,規制撤廃は民主主義の破壊へと向かっています.⇒理数科離れと産業空洞化

■1989年のレーガン宣言ではじまった米国の数学月間活動MAMは,万学の基礎である数学へ関心をもち,産業力の低下を防ぐことを国民に呼びかけます.2017年から,大量データの時代に適応して

数学統計学月間MSAMになりました.学校のカリキュラムと異なる豊かな数学を楽しむ国民数学祭NMFや,数学サークル活動,これを補完する数学の月曜日活動もあります.これらの活動の併用により,能力別数学教育(日本のゆとり教育の欠点は,画一的な実施にあったと思います)の効果が出ているようです.

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球の表面積(立体の表面積が影の面積の4倍になること)★★

球の表面積は,球の半径をRとすると4πR2となることは,知っていると思います.

 

 

 

 

 

 

 

 球の表面を円周が2πRsinθ,幅がRdθの円環に細分し,これを0≦θ≦πで積分して球の全表面積4πR2が得られます.
$$\displaystyle \int_{0}^{\pi}2\pi Rsin\theta \cdot Rd\theta =4\pi R^{2}$$

πR2は,半径Rの球を射影した影(半径Rの円)の面積ですが,球の表面積は,なぜ影の4倍になるのでしょうか.

球表面の円環を球の断面円(赤道の断面)に射影すると,円環の円周の長さ2πRsinθは変わりませんが,幅はRcosθdθになります.上半球の円環をすべて断面円内に射影すると面積πR2の円を埋めます.πR2sin2θdθを0≦θ≦π/2で積分したπR2が得られます.$$\displaystyle \int_{0}^{\pi /2}\pi R^{2}sin2\theta d\theta =\pi R^{2}$$
確かに,球の表面積は,自分の影の4倍であることが計算されます.

■これは,球を包むシリンダーをスクリーンにして,下図のような射影しても説明できます.

 

 

 

 

 

 

 

 

球の表面の微小な面積(緯線と経線で囲まれた矩形)を,球を包むシリンダーのスクリーンに,地軸に垂直平面に沿って射影すると,投影された矩形の縦横の比は変わりますが,面積は変わりません.このことから,半径Rの球の表面積は,幅2R,周囲2πRの長方形(シリンダーの展開図)になり,その面積は4πR2になることがわかります.

 一般に,正多面体の表面積と影面積(方位平均をとったもの)の比は4のようです.正多面体の極限としての球の場合は,表面積と影面積の比が正確に4になります.

詳しくは3Blue1Brownをご覧ください. https://youtu.be/GNcFjFmqEc8

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米国の数学サークル活動

Fairfax Math Circle(FMC)は,探求と問題解決に焦点を当てた数学を豊かにするプログラムです.やる気のある学生に,数学への理解を深める機会を提供することを目的とします.数学とは何か,数学者になるとは何か,ということの生徒の認識を広げようとしています.
より深く数学と遊べる道具と,新規なやりがいの探求に快適な環境を学生に提供します.FMCは,伝統的な学校カリキュラムでは扱わないような数学概念に彼らをさらすように努めています.FMCがやるのは,補修,テスト準備,競技の数学ではありません.非標準のトピックスや,伝統的なトピックスでもさまざまな観点から深く見ていきます.学生は多くのことを学び,あらゆる種類の数学の意欲的で効率的な学習者になりますが,標準的な数学カリキュラムを加速するわけではありません.

サークルのリーダーは通常プロの数学者(大学教授または大学院生)で,家族のボランティアも受け入れます.
6-12年生のDCメトロエリアに住んでいるすべて意欲のある生徒は資格があり,2つのグループがあります:
グループπ:代数1を修了した中学生のためのもの
グループe:代数2を修了した高校生のためのもの
すべてのセッションは George Mason大学で行われます.会費は家族1人あたり100ドル.2018/19学年度は、秋に9回、春に9回、合計18回のセッションがあります(日曜日に実施されるらしい).
http://www.fairfax-mathcircle.org/

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オイラーの定理とコーヒーカップ

3Blue1Brownのyoutube動画をご覧ください.

コーヒーカップの表面に,3つの家と3つのソース(ガス,電気,水)があり,
パイプラインが交差しないように,3つのソースと3つの家を繋ぎます.
いくら頑張っても交差箇所が1つできてしまいます.

 

 

 頂点の数V,辺の数E,面の数Fとすると,V-E+F=2 がオイラーの多面体定理ですが,
図のように面(領域)の数は4つ(黒い地の部分も1つと数えます)で,
6-8+4=2とオイラーの定理が成立しています.
3つの家はそれぞれ3つのソースに結ばれるわけですから,辺(パイプライン)の数は9本ありますが,頂点6と面の数4ですから,最後のパイプラインはどうしても繋げません.

さてここで,コーヒーカップで実験をしている理由がわかります.
コーヒーカップの取っ手の部分をうまく使うのです.取っ手の中を通り抜けるパイプラインと取っ手の上を這わせるパイプラインで立体交差になります.

コーヒーカップは,穴が1つある浮袋のような位相表面です.先のオイラーの多面体定理は穴のない位相表面に対する表現なので,穴の開いている位相表面では定理が少し変わります.
注)トーラスでは,面の数が2つ減り,頂点の数が3つ減り,辺の数が3つ減るので,V-E+F=0 が成り立ちます)

このような教育グッズがたくさんあり提供されるようすが,国民数学祭NMFのサイトで見ることができます.

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÷と×の演算の順序

60÷5(7-5)=?
この答えは24ですか6ですか
60÷5x2=?と聞かれれば,24と迷わず答えられる人が,なぜ6と答えたくなるのでしょうか.これは5と()の間にxが書かれていないことが心理的に影響すると思います.
5(7-5)は文字式のような錯覚に陥り,ひとまとめにして数値を出したくなります.
÷とxの演算が並んだ式は,前から順番に演算するのが決まりです.

割り算を使わず掛け算だけで書き直すこともできます.例えば,

60÷5x2=60x(1/5)x2 のようにです.

60÷5(7-5)=を,分数で書いてみましょう.しかし,

5だけが分母に来るのか,5(7-5)が分母に来るのか不明確です.
(60/5)(7-5)のことなのか,60/(5(7-5))のことなのか,かっこを1組追加すれば明確になります.

逆ポーランド式に,二項に対する演算の繰り返しとして計算手順のグラフを書くと,
解釈の異なるそれぞれの計算手順は以下のようになります.

 

 

 

 

 

 

 

■さて,文字式の場合は係数と文字の間のx記号は省略されるのが普通です.

9a2÷3a=の答えは,3a か,3a3 のどちらが正しいのでしょうか?

雰囲気的には3aですが,式の機械的な記述は曖昧です.

このような曖昧さを避けるために,()を用いて明確にすべきです.

9a2÷(3a)=3a あるいは,(9a2÷3)a=3a3 のようにはっきりさせましょう.

 

●以下のコメントが読者より寄せられました.この問題はなかなか面白いですね.
 ここに掲載させていただきます.

理学系では『省略演算の優先』を意識している傾向がいくつか見られます。たとえば化学業界では省略演算は優先することが国際的なルールとして明記されていて、先の計算は6と答えなければならないように定められているそうです。
また、物理学のフィジカルレビュー誌の投稿規定にも同様な省略演算の優先が書かれているということですので、こちらも6と答えることが義務付けられていることになります。
算数の世界では、帯分数の計算部分に同様な様子が見られます。{以下テキストの都合上帯分数には()をつけ、整数部分と分数部分の間に『と』を挟みますが、実際には無いものと思ってください}
(2と1/3)×3 は,2+1/3×3 なら,+より×優先なので =2+1=3 と計算するはずですが、
実際には省略演算である+を先に行い、7/3×3=7 と計算します。
ところで、マセマティカで計算すると、メルマガの計算は24が出力されるようです。ソフトのいくつかは24を出力すると聞いています。
以下は想像です。
理学系では古くから省略演算を優先する感覚があったため、そのようなルールが少なくとも上記の物理化学ではルールとして明記された。数学はともかく算数でもそのように教えている部分がある。
一方で後発の計算機業界ですが、こちらはそもそも昔は省略演算は文法違反でエラー扱いでした。それがハードが強力になり対応可能となった時に、理学系の慣習など頭になく、ただ省略演算を補うだけだったために、結果24と計算するソフトが多いのではないかと。実際、カシオの関数電卓では、古い機種では24を答えに出し、新しい機種で6を出力するケースを確認しています。おそらく化学業界あたりから苦情が来てユーザーニーズに合わせたのではないでしょうか?
数学では化学業界と違って国際組織が演算順序をルールとして明記するなんて多分やってないと思います。×が+に優先するなことすら学会による明文化はなく慣習によるものだと思われます。明文化されない以上慣習として定着するまではどちらが正しいとは言い切らないのが無難に思います。ただ、化学業界のルールでも但し書きとして、『ただし、誤解を招かないよう括弧を十分に補うことを推奨する』とあるそうですから、メルマガの式は
(60÷5)(7-5) なり、60÷(5(7-5)) なりにするのが大人の対応ということになりそうです。

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米国の2019数学祭り

数学月間SGK通信 [2019.06.04] No.269
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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2019年の国民数学祭(National Math Festival)は,5月4日(日曜日)に
ワシントンDCと40州の科学博物館で実施されました.
数学のなかを旅し,発見し,ゲームをし,コミュニティのなかで数学の無限の力と喜びを祝いました.
数理科学研究所(MSRI),および高等研究所(IAS)と国立数学博物館(MoMath)の共同研究者は,
この日の素晴らしい成功をもたらした皆様の支援と貢献に感謝します.
ソーシャルメディアであなたの写真を私たちと共有してくださいとのメッセージがあります.
楽しい数月祭りの様子の多くの写真が公開され,雰囲気を知ることができます.
ワシントンDCと各地の科学博物館に,あらゆる年齢の2万人の数学愛好者を惹きつけたものは何でしょうか.

数学の月曜日(Math Monday)という動きがあります.以下にその特徴を述べます.
■楽しい: 子供たちに数学を楽しんでもらいたいので,自分の遊びたいものを選びます.
■無料:ゲーム費用を除いて,始めるのに何もかかりません.
■簡単:始めるのに少数の人々ででき,運営は週に数時間です.
■ボランティアが運営:両親を含み,教師には負担をかけません.
■すべての子供が対象:すでに数学を楽しんでいる数学の弱者だけでなく,すべての能力の子供たちのために.
■ソーシャル:私たちのゲームは子供たちが一緒に遊んで学ぶことを奨励しています.
■毎週(数学月曜日):数学サークルのような毎月のイベントを補完します.

数学の月曜日(MathMonday)をあなたの学校や家庭で始めましょうと呼びかけています.
数学の月曜日はとても良いことで,これは日本の小学校のカリキュラムと全く逆の動きです.
数学の月曜日のやり方は:
- 時間と場所を決めましょう.学生が誰でも来れるような多目的室や図書館のような広い公共スペースで,
昼食時に毎週実施することをお勧めします.
- 保護者のボランティアを参加させ,校長,学校,PTAの支援を受けます.
数学の月曜日で使える無料で提供できるいろいろなゲームがあります.
例えば,
1. ブロックス(プレーヤー4人)
テトリスのようなピースをボードに置き,領土を主張します.
空間的思考力を養います.
2. セット(プレーヤー2~6人)
色,形,数,模様を見て,セットを構成する3枚のカードを見つけます.
3. プライムクライム(プレーヤー2~4人)
素数の加算,掛け算,をし,1から101までピースを進めます.
4. ラッシュアワー
赤い車がでられるように混雑した敷地内で車を滑らせてグリッドロックを脱出.

■数学パズルは,論理,空間思考,計算技術を開発します.
次の問題に挑戦してください:
各式の4つの空所に,すべて1,2,4,7という数を入れて,式が成立するようにしてください.
□+□+□=□
□+□+1=□□
□□+□□=59
□□+14=□□
5□+□□=□5

 

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物理現象に隠れているπ

今日は,YouTubeにある動画の話をします.たいへん興味を引く動画なので,ぜひご覧ください.
この動画の発信元3Blue1Brownは,Grant Sandersonが作ったYouTubeのチャンネルで,
なかなかよくできた可視化された数学入門です.

動画は,物体mは静止しており,物体Mは初速度v0で摩擦のない台上を滑る所から始まります.
Mやmはそれぞれの物体の質量(M>m)で,左側は壁です.
衝突はすべて弾性衝突とすると,エネルギー保存(1)と運動量保存(2)が成り立ちます.

 

 

(1)は楕円の式ですが

 

  の変数変換をすれば,新しい変数v3を採用したv1,v3平面では半径v0の円になります.
(2)は,2つの物体m,Mが衝突したとき2つの物体から成る系全体の運動量が保存される(運動量変化が0)ことを示しています.こちらの式も,v2からv3へ変数変換すると,v1,v3平面で傾き-√M/mの直線になります.物体mとMの衝突後に分配される速度変化⊿v1と⊿v2の比は,それぞれの質量に反比例するわけですが,質量mの速度v2を変換したv3に対しては,v1,v3の速度変化の比はそれぞれの質量の平方根に反比例します(2').つまり,v3=-√(M/m)v1+C で,傾き-√(M/m)の直線です.

 

 


物体mが壁と衝突するときは,壁は動きませんから,v3の符号のみ変えます.
横軸を速度v1,縦軸を速度v3としてグラフを描くと,
式(1')は,半径がv0の円で,エネルギーが保存される系の状態はいつもこの円上にあるべきです.式(2')は運動量保存を示すグラフで,(-v0,0)の点から出発し傾きー(M/m)の直線です.
この直線が円と交差する点が,物体mと物体Mの最初の衝突後の速度v1,v3の状態です.
その後,物体mはそのまま滑り壁に衝突し,v3だけが符号を変えます.これは,最初の衝突点のv3の符号を変えた円上の点になります.
このように続けると,円内に納まるのこぎり歯状のグラフができます.

衝突のたびに円周上の,のこぎり歯の先の状態を移るわけで,衝突回数を求めることができます.
YouTubeのアニメーションのように,Mの質量を増加させると,直線(1')の傾きが急になり,
のこぎり歯が細かくなるので衝突回数は増加します.
きちんと計算すると,tanθ(m/M)として,

衝突回数Nは,N=2[π/2θ]となり,
Mが大きくなればなるほど,Nは大きくなります.([]は数値の整数部分)

m/M=10-2pとおくと,Mが大きくなる(p→)のとき,N→π×10pの整数部分になります.

 

 

 

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そろばんと脳★

この記事は数を記憶する方法 https://note.com/sgk2005/n/n15dcfd723999 の続編です.

藤井聡太君の活躍はすごいですね.彼の頭には自分の棋譜はもちろんのこと数多くの棋譜が記憶されており,盤面の映像として取り出せるのでしょう.2019年,5月19日の日本数学協会の講演会の一つに,田村聡子氏(大阪市公立小学校教諭)の講演「ソロバンを取り入れた算数」がありました.
今日の学校教育は,教科書からはみ出たことは一切できない,指導要領にないことは入る余地のない時代だそうです.そのうえ,ソロバン塾よりも公文に行ってしまう時代で,ソロバン教育はなかなか大変です.

私も小学生の頃,ソロバン塾に数か月通ったことはあります.たし算ひき算しか出来ない初級ですので,上級者の技には感嘆するばかりです.その脳の働き方は想像もつきません.
田村先生の話によると,数字がソロバン珠の配列パターンで見えるそうです.私も暗算の時はソロバンを見ていた方が楽ですので,その状態はなんとなく想像できます.

2014/06/10発行のメルマガ13号で,「数を記憶する方法」という英国のエッセイを紹介したことがありますが,3.141592...などの数字の列を,色彩豊かな色の列として見る人がいるそうです.
記憶術でも,こじつけのストーリをつくり,それを映像化して記憶するという方法があるそうです.どうも映像で覚えるのが決め手のようですね.私にはかえって面倒でその良さがわかりません.
日本語では語呂で覚えることはよくやります.英語の語呂合わせは日本語よりも面倒で,この点では日本語の方が有利なようです.

√5=2.2360679は「富士山麓オウム啼く」とやる方が,各数字を同じ韻を踏んでいる言葉と結び付け(例えば),oneワン=バンbun,twoトゥー=シューshoe,threeスリー=ツリーtree,fourフォー=ドォーdoor,.....などとやるより優れているでしょう.


■ソロバンの上級者は,数字でも英語のアルファベットでもピアノの楽譜でも,ソロバン珠の配列パターンで見えるそうです.ソロバンの上級者になると,英語にも音楽にもこの能力は役立つそうでうらやましい限りです.
読み上げ算や読み上げ暗算では,ものすごいスピードで読み上げるのを
聞き逃さず,聞き分け,記憶する.その集中力がすい.
試験会場の自分の座席とスピーカーの位置で,聞きやすい座席位置と聞きにくい座席位置があるそうですが,その違いが明瞭に出るほどの極限状態の集中力です.
場所は指定されているので始めは運ですが,間違った人が抜けて前に詰めるときは,聞きやすい場所を見抜ける人は皆,そこを狙っているそうです.
そろばんの頭の使い方と集中力はいろいろなことでも役立つでしょう.

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