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無限の脅威

投稿日時: 2020/06/09 システム管理者

まぐまぐに投稿したメルマガ(html版)のリメイクです.
数式はうまく表示できているでしょうか?
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数学月間SGK通信 [2014.05.09] No.002
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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■無限の脅威(2014年米国MAMよりhttp://www.mathaware.org/mam/2014/calendar/infinity.html)
今回は,奇妙な数学の話です.


■発散する級数
$$ S=1+2+3+4+....+n+....=-1/12 $$
正の整数すべての総和が無限大でなく-1/12であるという.正気の沙汰なのか?
このとんでもない結果は,1748年に偉大なオイラーにより導かれた.
発散する数列は悪魔の発明であり,無限級数を用いると,どんな結論でも導くことができる.
発散する級数の研究は,アーベル(1802-1829)に端を発する.
数学者がこの悪魔の細部を解決するのに続く百年を要したのだ.
すなわち,リーマンの解析接続の理論(1859)を待ち理論的解決した.
現代では,物理学(超弦理論,量子計算)や数学(ζゼータ関数)で利用している.
リーマンは素数の分布を調べるためにζ関数に解析接続をした関数の0点を研究し,
リーマン予想を提示した(1856).これはまだ解かれていない.
■オイラーの発見が現実に
オイラー+リーマンの ζ関数は無限級数の形で定義される.
$$ ζ(s)=1+2^{-s}+3^{-s}+4^{-s}+5^{-s}+.... $$
この関数は,実部が1より大きいRe(s)>1複素平面で収束するが,
実部が1あるいは1より小さいRe(s)=<1複素平面では発散する.
そこで,全複素平面(ただし1は極)に,ζ 関数の定義域を拡張
するのに解析接続という手段が役立つ.
$$ S=ζ(-1)=1+2+3+4+5+.... $$

$$S_{1}=1-1+1-1+1-1+....=1 $$(奇数項までの和),  $$=0 $$(偶数項までの和)
この和は,偶数項で止めれば0,奇数項まで止めれば1になる.
しかし,解析接続という理論を使うと1/2になることを以下に示す.
 $$f(x)=1+x+x^2+x^3+x^4+x^5+....=1/(1-x) $$
この多項式は公比$$x$$の等比級数だから,$$|x|<1$$なら収束し$$1/(1-x)$$になる.
もとの多項式は$$|x|<1$$の外では発散するので定義できないが,
級数を解析接続した関数$$1/(1-x)$$に繋ぎ,形式的だが
$$x=-1$$を入れると 1/2 が得られる.
$$S_1=f(-1)=1-1+1-1+1-1+....=1/2$$
級数$$S_1, S_2$$ などを等式と見立て加減演算をし,$$S$$を求めてみよう.
$$∞+∞$$などの無限大を数値のように演算しているのが気持ち悪いが
解析接続で収束した級数を用いているので実は正しい結果になる.
$$S_2=1-2+3-4+5-6+.... $$とすると,
$$2S_2=1-2+3-4+5-6+....+[1-2+3-4+5-6+....]=1-1+1-1+1-1+.... =1/2$$
ゆえに,$$S_2=1/4$$が得られる.
$$S-S_2=1+2+3+4+5+6+....-[1-2+3-4+5-6+....]=4(1+2+3+....)=4S$$
であるから,$$S=-S_2/3=-1/12$$ が得られる.

■参考
http://www.mathaware.org/mam/2014/calendar/infinity.html
超弦理論入門,大栗博司,ブルーバックス
リーマン予想を解こう,黒川信重,技術評論社