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ケプラーから宇宙エレベータまで

投稿日時: 2020/07/13 システム管理者

■お知らせ
7月22日~8月22日は,数学と社会の架け橋=数学月間です.この期間は,22/7=3.14(π)と22/8=2.71(e)に因みます.毎年,7月22日に数学月間懇話会を開催していますが,今年(第16回)は集会ができないので,
ZOOMを用いリモート(参加無料)で行います.

数学月間期間内に,次の4つの講演を行います.
●7月22日,15:00~16:30,AstronomyとAstronautics(ケプラーから宇宙エレベータまで),八坂哲雄(九州大学名誉教授)
●7月23日,15:00~16:30,Do★MATH同志社中学校数学博物館の紹介,園田毅(同志社中)
●7月29日,14:00~15:30,感染症の数理モデル,稲葉寿(東大)
●8月22日,15;00~16:30,X線や中性子で見る表面・界面,桜井健次(元物質・材料研究機構)
主催●NPO法人数学月間の会
参加方法●会員でなくても参加でき,無料ですが事前申し込みが必要です.
氏名,メールアドレス,参加日,を明記して,sgktani@gmail.comまで申し込むか,http://sgk2005.saloon.jpでオンライン参加申し込みができます.
後ほど,各回のミーティングIDとパスワードをお送りします. 
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7月22日(月間初日)には,八坂哲雄氏の表題の講演があります.
今回の記事は,八坂哲雄氏の講演の予備知識になるように書きました.

■ケプラー

地動説の始まりはコペルニクス(1510年)です.地動説を支持したガリレオやケプラーはコペルニクスの死後の20~30年後に生まれます.ケプラーは1571年生まれで,1599年にティコ・ブラーエのもとで働き始めますが,ティコ・ブラーエはその1年半後の1601年に亡くなります.ティコ・ブラーエは20年以上の長きにわたって正確な天体観測を行ってきた偉大な観測者です.
ケプラーはティコ・ブラーエの観測記録から火星の記録をもらい,太陽に対する火星の軌道の解明を手掛けました.天体の逆行運動を合理的に説明でき地動説に立ち,円軌道を仮定し解明を進めましたが,どうしても観測値と$$8’$$の誤差がでます.苦心の末,ケプラーは火星の軌道は円でなく楕円であることを発見しました.ケプラーの発見した惑星の軌道に関する3つの法則は(1609年,1618年):
第1法則
惑星の軌道が円ではなく楕円である.太陽の位置は楕円の焦点の1つである.当時,惑星の運動は円であると信じられていたが,火星のデータは円では説明ができなかった.
第2法則
「面積速度一定の法則」
面積速度とは,惑星の位置ベクトルと速度ベクトルの外積なので,ニュートン力学の「角運動量保存の法則」に同じ.
第3法則
惑星の公転周期の2乗は,軌道の長半径の3乗に比例する.
公転周期の長さは楕円軌道の長半径のみに依存し,楕円軌道の離心率に依存しない.楕円軌道の長半径が同じであれば,円運動でも楕円運動でも周期は同じになる.


これらの3つの法則は,ケプラーの死後(13年後)生まれたニュートンによるニュートン力学(万有引力)で,すべて導くことは容易ですが,ニュートンがやったように,逆に,ケプラーの法則からニュートン力学を作るのは非常に難しいことです.ニュートンの天才が必要でした.

■静止衛星から宇宙エレベータ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆さん,BS放送(波長25mmのマイクロ波)の電波を受信するパラボラアンテナは,例えば,東京では,方位角224°(南西),仰角38°に向けます.これは,赤道上空にある静止衛星の方位です.

静止衛星は,赤道上空約$$h=36,000$$[km]の静止軌道にあり,地球の自転と同じ周期で公転しているので,地球から見ると静止しているように見えます.地球の赤道半径は,約$$R=6,400$$[km]ですから,静止軌道の半径は,約$$r=R+h=42,400$$[km],静止軌道の一周$$2πr=266,000$$[km]を,周期$$T=24$$[時間]で回りますから,秒速$$3$$[km/s]となります.
地球の自転と同じ角速度で地球の周りを公転する静止衛星は,静止軌道上で遠心力と地球に引かれる重力が丁度釣り合っています.衛星が地球から見て静止(衛星の公転の角速度を地球の自転の角速度と同じに保って,つまり,角速度$$ ω=2π/T=7.3×10^{-5} $$[rad/秒])している状態で,もし衛星の軌道半径が静止軌道のより小さくなれば衛星は地上に落下するし,静止軌道の半径より大きな軌道半径になれば衛星は地球から離れていきます.それでは,静止衛星を上・下(地球から遠くなる・地球に向かう方向)にすこしづつ伸ばしていけば,静止衛星で長く伸びたものが作れるでしょう.これが宇宙エレベータの原理です.これを実現するために,どのような研究がなされているでしょうか,八坂哲雄氏の講演を聞きましょう.

宇宙エレベータの発案は,宇宙旅行の父,ソ連のコンスタンチン・ツィオルコフスキー(1895年)です.軌道エレベータ,ヤコブの梯子などの呼び名もあります.