MAM1992

投稿日時: 2019/06/17 システム管理者

数学強調週間 ( MAW )――4月26日〜5月2日, 1992年

「MATHEMATICS & THE ENVIRONMENT/ 数学と環境」

我々は,日常の経験から波の多様性を知っている.電磁波は,テレビやラジオ放送を家庭に届け,超音波は,母の子宮の赤ちゃんの成長をモニターするのに使われる.川面,湖水,海洋には,沿岸の環境に影響を与えるような種々の波が立つ.数学的モデルはこれら全然異なる種々の現象を理解するのに役立っている.
多くの波動現象は,手振り挨拶のような単振動により特徴づけられる.フットボールスタジアムの反対側から見た場合,人体で作り出されたこのような波動はスタジアムを回って伝わって来るように見える.部屋をよぎって音波が諸君の声を伝えるのと同じだ.他の波動現象は,しばしば非線形の相互作用が関与しもっと複雑である.
大幅な減衰なく長距離を伝播できる特別な波動 Solitary wave(孤立波)は,1844年に始めてScott Russellによって,海峡の表面上で観察された.この種の波動はしばしば大洋の真ん中での地震によって始まり,又人間の誤りによっても生起され易いもので,ジェット飛行機の速さで大洋を横切って伝わる.そして波動が硬い海岸にぶつかった時は惨禍をもたらす.地震の破壊的影響と向かい合わねばならない日本人によって津波と名付けられたこの種の波動は大きな波長と小さい振幅のために検知されないままに伝わっていく.
しかしながら海岸線近くの水深が浅い場合は,この波動は海岸地域を水浸しにする程巨大な波動に変わっていく.Solitary waveは,1895年Kortewegとde Vriesによって方程式を用いて解析出来るようになった.驚く事ではないが,この解析モデルは 数学モデルとして万能性を反映して光ファイバ−・ケ−ブルとか注水式反応炉のプラズマを含め他の媒体の波動に対しても当てはまる事が発見されている.この方程式の注目すべき特質は,純粋数学の分野に深く連結している事である.
最近まで その方程式の解法の存在有無に関する数学理論について,批判的な疑問が解かれないままであった.そしてこの方程式の解法には,もっとも強力な完成者の資源が精一杯投入された.しかしながら今や数学的進歩によって,解法は通常的になされ波動進展の正確な予測も可能となっている.当初の方程式を解くための数学技法は手間がかかり そして扱い難いものであった.しかし現在は数種の効果的な技法があって信頼性のある結果を得る事が出来る.
水の波動の数学理論は,環境の理解と保全に役立つのみならず,その洞察は工業発展に意義深い衝撃力を持っている.Solitary waveは今では良く理解されているが,その他の水の波動は環境に対して尚未知の影響を秘めており,活きた数学の研究課題として残されている.