結晶群の一般化(2)

投稿日時: 05/04 システム管理者

空間群の発見
群拡大理論による基礎づけ
空間群の一般化
群の拡大理論に基づく空間群の記述
A.V.シュブニコフ,V.A.コプツィク(1940~1970)らが,結晶群の構成を群拡大理論に基づき記述しました.これは,あたかも電磁気学におけるマックスウェル方程式のような価値があり,群の一般化への道を開いたと言えます.

回転群を拡大して結晶点群を作る.
並進群を拡大して結晶空間群を作る.
結晶空間群を拡大して,シュブニコフ(黒白)群やベーロフ(多色)群を作る.
[定義]
$${H}$$が群$${G}$$の部分群[正規部分群に限定しない]のとき,群$${G}$$のことを群$${H}$$の拡大という.

Lagrangeの定理から,次の展開(直和分解)が保証される: 
$${G=Hg_{1} \cup Hg_{2} \cup \cdots \cup Hg_{s } }$$
部分群$${H}$$の位数は,群$${G}$$の位数の約数であるから,この約数を,部分群の指数$${s}$$という.
部分群$${H}$$の$${G}$$に対する指数$${s}$$(整数)を$${s=\left( G:H \right) }$$と標記する.

{$${ e=h_{1}=g_{1}, g_{2}, \cdots g_{s} }$$}を,群$${H}$$から群$${G}$$を作るための代表系という.

拡大には,正規拡大と非正規拡大がある:

正規拡大   ($${H \vartriangleleft G}$$の場合)
非正規拡大  ($${H \subset G}$$の場合)
非正規の拡大は,この第2回では扱わない.第3回で少しだけ言及する.
Hは正規部分群,→準同型写像,↔同型写像
$${G \to G/H \leftrightarrow G^{*}\textrm{or }G(\textrm{mod}H)}$$

$${H}$$が正規部分群($${H \vartriangleleft G}$$)であるなら
$${Hg_{j} =g_{j}H}$$なので,次の剰余類の積則が成立します:
$${Hg_{j} \cdot Hg_{l}=Hg_{j}g_{l}=Hg_{n } }$$,
すなわち,$${^{ \exists }g_{n } }$$があり,$${g_{j}g_{l} \in Hg_{n } }$$,あるいは,$${^{ \exists }h_{jl,n} \in H}$$をとり,$${g_{j}g_{l}=h_{jl,n}g_{n } }$$になります.
特に,すべての$${h_{jl,n}=h_{1}=e}$$のときは,$${g_{j}g_{l}=g_{n } }$$(代表元の1つ)となり,代表元系は群をつくり,この群を$${G^{* } }$$と標記します.[正規部分群$${H}$$を$${G^{* } }$$で拡大し,共型群が得られる]

一般には,$${h_{jl,n} \neq h_{1}=e}$$であり,
代表元系{$${ g_{1}, g_{2}, \cdots , g_{s} }$$}は,群として閉じません.
そこで,代表元系を閉じさせるために,次の積則を定義するのは自然です.
$${g_{j} \cdot g_{l}=h_{jl,n} \cdot g_{n} \equiv g_{n}(\textrm{mod}h_{jl,n})}$$
代表元系は,この積則(誘導積)に関して,商群$${G/H}$$と同型な群を作ります.代表元系の作るこのような群を$${G(\textrm{mod}H)}$$あるいは,$${G^{H } }$$と標記します.[正規部分群$${H}$$を$${G^{H } }$$で拡大し,非共型群が得られる]

$${G \vartriangleright H}$$ , $${G/H \cong G^{*} \cong G^{H } }$$のとき,$${H}$$の拡大による群$${G}$$の作り方

共型空間群  $${G=H \otimes G^{* } }$$   直積あるいは半直積
非共型空間群 $${G=H \odot G^{H } }$$    条件積
直積で記述できる場合は,$${H, G^{* } }$$ともに$${G}$$の正規部分群であり,$${G/H \cong G^{*},  G/G^{*} \cong H}$$が成り立つ場合であり,半直積で記述されるのは,片方のみが正規部分群,例えば$${H\vartriangleleft G}$$であり,$${G/H \cong G^{* } }$$のみが成り立つ場合である.
条件積が必要になる場合は,一方が法による群(モジュラス群)である場合である.

example:結晶空間群
結晶空間群 $${Φ}$$ には,並進群 $${T}$$ が正規部分群として含まれている($${Φ \vartriangleright T}$$).従って,商群 $${Φ/T}$$ が定義できる($${Φ/T \cong G}$$).
これは,空間群 $${Φ}$$ は並進群 $${T}$$ を核とする準同型写像(並進で移動した点はすべて同値)で,結晶点群 $${G}$$ に還元されるという意味である.
群 $${G}$$ は,結晶点群の場合もあるし,並進を法に持つ結晶点群$${G(\textrm{mod}T)}$$ の場合もある.

example:結晶回転群4, 6を,直積や条件積に分解する
$${4=2 \odot 4(\textrm{mod}2)}$$,    $${6=3 \otimes 2}$$

example:並進群を結晶点群で拡大

直方格子を,結晶点群2mmで拡大する 
P2mm 共型空間群,P2mg, P2gg 非共型空間群