ピエールキューリーの原理★

投稿日時: 2022/11/05 システム管理者

結晶格子を黒格子,その逆格子を赤格子で図示した.結晶格子で水色で塗った部分は単位胞.結晶によるX線の散乱はボルン近似(平面波)が成り立つから,結晶の電子分布$$ρ(r)$$をFourier変換したものが,この結晶によるX線の散乱振幅$$F(q)$$である.

変数$$q$$は観測空間(逆空間)のベクトル,$$r$$は結晶空間のベクトルで,逆空間と結晶空間は,互いにFourier変換で結ばれた「双対空間」である.

結晶の電子分布$$ρ(r)$$は,単位胞の電子分布$$ρ_0(r)$$と格子$$ Ш(r) $$とのコンボリューションであるから,結晶によるX線の散乱振幅$$F(q)$$は,単位胞の電子分布$$ρ_0(r)$$のFourier変換$$F_0(q)$$と,逆格子の積.つまり,$$F_0(q)$$を,逆格子点でサンプリングしたものになる.Fourier変換で結ばれた$$F_0(q)$$と$$ρ_0(r)$$の対称性は同一だが,X線回折像の対称性は,逆格子点のみを問題にするので,$$F_0(q)$$の対称性は回折像の対称性より低い可能性があり,特殊な結晶軌道の対称性が関与する.

結晶構造の対称性とX線回折像の対称性の関係は,ピエール・キューリーの原理「現象が起こる舞台の対称性は,すべて現象に反映されるべきである」という因果律の一例である.

部分構造の重畳で構成された全体系の対称性は,部分構造の対称性より全体系の対称性が上昇する場合も減少する場合もある.これには,非正規の拡大が必要で未解決の困難な課題である.