2019年5月の記事一覧

物理現象に隠れているπ

今日は,YouTubeにある動画の話をします.たいへん興味を引く動画なので,ぜひご覧ください.
この動画の発信元3Blue1Brownは,Grant Sandersonが作ったYouTubeのチャンネルで,
なかなかよくできた可視化された数学入門です.

動画は,物体mは静止しており,物体Mは初速度v0で摩擦のない台上を滑る所から始まります.
Mやmはそれぞれの物体の質量(M>m)で,左側は壁です.
衝突はすべて弾性衝突とすると,エネルギー保存(1)と運動量保存(2)が成り立ちます.

 

 

(1)は楕円の式ですが

 

  の変数変換をすれば,新しい変数v3を採用したv1,v3平面では半径v0の円になります.
(2)は,2つの物体m,Mが衝突したとき2つの物体から成る系全体の運動量が保存される(運動量変化が0)ことを示しています.こちらの式も,v2からv3へ変数変換すると,v1,v3平面で傾き-√M/mの直線になります.物体mとMの衝突後に分配される速度変化⊿v1と⊿v2の比は,それぞれの質量に反比例するわけですが,質量mの速度v2を変換したv3に対しては,v1,v3の速度変化の比はそれぞれの質量の平方根に反比例します(2').つまり,v3=-√(M/m)v1+C で,傾き-√(M/m)の直線です.

 

 


物体mが壁と衝突するときは,壁は動きませんから,v3の符号のみ変えます.
横軸を速度v1,縦軸を速度v3としてグラフを描くと,
式(1')は,半径がv0の円で,エネルギーが保存される系の状態はいつもこの円上にあるべきです.式(2')は運動量保存を示すグラフで,(-v0,0)の点から出発し傾きー(M/m)の直線です.
この直線が円と交差する点が,物体mと物体Mの最初の衝突後の速度v1,v3の状態です.
その後,物体mはそのまま滑り壁に衝突し,v3だけが符号を変えます.これは,最初の衝突点のv3の符号を変えた円上の点になります.
このように続けると,円内に納まるのこぎり歯状のグラフができます.

衝突のたびに円周上の,のこぎり歯の先の状態を移るわけで,衝突回数を求めることができます.
YouTubeのアニメーションのように,Mの質量を増加させると,直線(1')の傾きが急になり,
のこぎり歯が細かくなるので衝突回数は増加します.
きちんと計算すると,tanθ(m/M)として,

衝突回数Nは,N=2[π/2θ]となり,
Mが大きくなればなるほど,Nは大きくなります.([]は数値の整数部分)

m/M=10-2pとおくと,Mが大きくなる(p→)のとき,N→π×10pの整数部分になります.

 

 

 

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