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結晶で見られる多面体

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数学月間SGK通信 [2014.09.09] No.028
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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◆プラトンの正多面体は5種類あります.
これら5種類の正多面体の対称性を考慮して
方位を合わせ重ね合わせた図が以下のものです.
この図のように2つの正多面体を重ね合わせると
それぞれの多面体の対称性で共通なもの(共通部分群)が残ります.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/30/16103930/img_0?1410092475

◆黄鉄鉱FeS2の結晶は,色々な外形(晶相)のものが見られます.
黄鉄鉱は愚者の金とも言われ金色できれいです.
私は,川底に金色の砂がキラキラ光って貯まっているのを見つけて
採集したことがあります.1mm程度の結晶粒ですが
皆整った多面体の形をしていました.
結晶の外形は,正6面体,正8面体,正5角12面体が基本で,
ミラー指数で言うと,正6面体は結晶面(100)面,
正8面体は(111)面,正5角12面体は(210)面で囲まれています.
このほかに,これら正多面体の切頂多面体も見られ,
また,他の指数の面(211),(321)が加わった複雑な多面体もあります.
多面体の形が連続的に変化することを示す良い自然の手本です.
黄鉄鉱の結晶は立方対称の内部構造(原子の配列)ですが,
結晶粒の外形は,どの指数の面が大きく成長するかによって変わります.

◆そこで,昔読んだ記憶のある砂川一郎の論文(1957)を
再度見てみました.奈良県や島根県にある絹雲母の鉱床や凝灰岩の
母岩中に晶出した黄鉄鉱の結晶粒の大きさと形の統計を述べています:
「小さい結晶粒では正6面体,大きい結晶粒では5角12面体の外形が多い」
晶相の変化を起こす機構は大変複雑で一概に言えませんが,
黄鉄鉱結晶の成長に伴って大きく成長する面が,
正6面体の面(100)→正8面体の面(111)→5角12面体の面(210)
と変化し晶相が変る.これは結晶面の性質と母岩(絹雲母化)との
化学的反応がかかわっているらしい.
◆今回,砂川一郎の論文中の図が,
Tシャツとして博物館グッズになっていることを知りました.
http://ameblo.jp/hakubutufes-sub/image-11876822744-12970852035.html

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とっとりサイエンスワールドin鳥取市

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数学月間SGK通信 [2014.09.02] No.027
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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「とっとりサイエンスワールド」in鳥取市(8月31日)に参加しました.
とっとりサイエンスワールドは今年で8年目になり,小さい子供から
お年寄りまで楽しめる市民イベントとしてすっかり定着しました.
学生ボランティア54人(短大・高45人,中9人)を含む先生方150人のスタッフで
運営され,大変さまざまなワークショップがあります.
私は万華鏡のワークショップで参加しました.
1時間のクラスを5回実施し,160人が自分の万華鏡を作りました.
イメージ 1,2
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/03/16089803/img_0?1409575636
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/03/16089803/img_1?1409575636

◆今年,鳥取市で作ったものは,3枚鏡が作る3角形の角が,90°ー36°ー54°のものです.
交差する2枚の鏡が反射を繰り返し生じる結果が群をなすのは
2枚の鏡の交差角が360°を偶数で割り切る角度のときです.
通常の万華鏡はそのような鏡の交差角に設定されます:
例えば,60°(360/60=6).36°(360/36=10)などです.
これは,1817年のブリュースターの万華鏡の特許にも記載されています.
群をなすときには生じる映像は規則正しく美しく見えます.
しかし,今回作成した万華鏡は,3角形の1つの角の交差角だけが
54°(360/54=6.666)と偶数で割り切れません.
このような角度に対応する所はどのような映像が見られるでしょうか?
数学では3周回ってもとに戻る(360°×3)ような空間を想像しても良く,
そのときは10回回転対称が完成するのですが,
実際の物理的な空間の光はそのようには回ってくれません.
他の2つの角の所では規則正しい映像になるのですが,
この角度の所だけ秩序が乱れることになります.
昨年のサイエンスワールドから,このようなシリーズの万華鏡を作っています.

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ケプラー予想

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数学月間SGK通信 [2014.08.26] No.026
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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この所,正多面体による空間の充填などを見てきました.
今回は,最密充填構造の話です.以下の本が参考になります:
ケプラー予想,ジョージ・G・スピーロ(青木薫訳)新潮社

◆ケプラー予想とは:
「3次元空間で最も高密度に同じ大きさの球を充填した状態は,
1つの球のまわりを12個の球が取り囲む状態で,
その空間充填率は74.04%である」というものです.
これは,結晶学では最密充填構造として常識になっていることがらです.
立方最密充填(=立方面心格子),6方最密充填,および,両者の混合のポリタイプは
無数にありすべて同じ充填率74.04%です.この起源は1883年,結晶学者ウィリアム・バーロウが
6方および立方の最密充填の2つの最密充填構造をネイチャーに掲載したことにあります.
バーロウは結晶空間群の数え上げ(フェドロフ,シェンフリーズもそれぞれ独立に数え上げた)でも有名です.

注:スピーロの著書p.23でバーロウの図に言及し,立方最密充填は6方最密充填とまったく同じ配置なのだ!」
と言っているのは,数学と結晶学との見解の相違.
111面(切断)が同一であるのは当たり前で,その積層様式に結晶学的違いがあるのだ.

◆ケプラー予想は多くの人が挑戦しましたが,どうやってもこれより稠密な充填構造はつくれません.
これより充填密度の高い構造はないという証明はとても難しいのです.このケプラー予想をヒルベルトは,
1900年8月,第2回国際数学者会議の講演で,未解決の23の問題(ケプラー予想は第18問題)として提起しました.
周期的に規則正しく並べる(結晶)という条件では,ケプラー予想は証明できるのですが,
不規則な並べ方まで含めてこれが最密であるということの証明はとても困難です.
正4面体でも正8面体でも正12面体でも正20面体でも,単一では空間の充填ができません.
前号で正4面体と正8面体を2:1で混ぜると周期的に空間が充填できることを示しましたが,
それは面心立方の最密充填構造にほかなりません.さらに高密度な様式はないのだろうか?
例えば,立方最密充填では1つの球の周りに6個の球が囲み,上の段,下の段に3個づつ球が接します.
上下の3角形が点対称であるような配置が立方最密充填,
上下の3角形が周りを囲む6角形を鏡として鏡映対称であるような配置が6方最密充填です.
このような1つの球のまわりに12個の球が配置する構造と言っても,次のようなものがあります.
中心球の赤道面の上側から5個の球,下側から5個の球が接し,上下の正5角形が点対称に配置し,
さらに,中心球の上下に球が1個づつ配置するのも12個配置です.これは正20面体配置と呼ばれます.
しかし,この配置は局所的には充填密度が高いが,正20面体だけでは空間の充填ができません.
どうも数学的にエレガントな証明は無理なようです.

◆ケプラー予想の証明は,トマス・ヘールズ(ミシガン大学)によってコンピュータを用いた
しらみつぶし法で完成したということです.ケプラー予想(1611年「六角形の雪について」
という友人向けの小冊子にあるという)から400年近く経過した1998年のことです.
ヘールズはドロネーの四面体分割を基礎に,シンプレックス法で計算されました.
評価関数を導入して,密度の低い配置は減点,密度の高い配置は加点を繰り返すものです.
300ページもあるヘールズの論文は,トート(Toth)ら審査員12人が4年かかってチェックしましたが
最後まで詰められず99%正しいと報告されました.
そこで,2003年にヘールズ自身が証明支援ツール(HOL Light,Isabelleなど)を使い
チェックを始めやっと証明できたと言います.コンピュータを用いる証明は「4色問題」の時にもありました.

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空間を充填できる多面体

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数学月間SGK通信 [2014.08.19] No.025
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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お盆休みも終わりました.皆様お元気でお過ごしのことと存じます.
お知らせがあります.今までバックナンバーをまぐまぐにすべて公開していましたが,
お盆休み中に,公開は最新号のみに変更しました.
バックナンバーをご覧になる場合には,
ブログ:http://blogs.yahoo.co.jp/tanidr/ あるいは,
公式HP: http://sgk2005.sakura.ne.jp/ で
メルマガ倉庫の項目をご覧ください.

◆今回は,空間を隙間なく充填できる正多面体についての話です.
正6面体(角砂糖の形)が隙間なく積み重ねられ空間を充填する
ことはご存知でしょう.
◆それでは,正4面体,正8面体はどうでしょうか?
どちらもそれだけでは隙間なく空間を充填することはできません.
しかし,正8面体と正4面体を1:2の比率で混ぜると
周期的に空間を隙間なく充填できます.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/78/16052778/img_1?1408372931

http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/78/16052778/img_2?1408372931
このパズルは,osa工房,小梁さんが販売しています.
さて,幾何学的にこのようなうまい構造を思いつくのは
特殊なことなのですが,
自然界でこのような空間充填構造はたくさんあります.
結晶学では,ダイヤモンドがこのような構造であることは
古くから知られています.半導体で知られるシリコンも
ダイヤモンド型結晶構造です.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/78/16052778/img_3?1408372931

他の例では,ペロブスカイトと言う鉱物があり,
常温超伝導などの多くの有用な材料がペロブスカイト型の結晶構造です.
正8面体が骨組みを作っています.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/78/16052778/img_4?1408372931

◆菱形12面体はこれだけで空間の充填ができる多面体です.
菱形12面体は,面心格子のウイグナー-ザイツ胞であるので
空間を充填できることは明らかです.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/62/16035662/img_3?1407801148

切頂正8面体は,体心格子のウイグナー-ザイツ胞であり
もちろんこの多面体も空間を充填できます.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/78/16052778/img_0?1408372931

面心格子の格子点に原子を配置した結晶構造は,銅やアルミニウムなど
多くの金属の結晶構造で知られています.
また,体心格子構造は,鉄,タングステン,セシウムなど
多くの結晶構造で知られています.

◆今回の話の眼目は,純粋に数学的に空間充填構造を導くのは
とても大変なことですが,結晶学などでは昔から知られていたということです.
自然科学の分野から数学への多くの貢献がなされてきました.
結晶点群や空間群なども化学や鉱物学で発展し数学に貢献した例です.

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立体万華鏡(続)

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数学月間SGK通信 [2014.08.12] No.024
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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お盆休みの時期ですが,皆様いかがお過ごしですか.
今回のメルマガは,No.023に続き多面体に関してです.

(1)多面体の分類を整理しておきます.
■正多面体
1種類の正多角形で囲まれた凸多面体です.
頂点のまわりに集まっている多角形の状態は,すべての頂点で同じです.
もちろん,辺のまわりの状態もすべての辺で同じです.
プラトンの正多面体とよばれる5種類があります.
■半正多面体
2種類以上の正多角形で囲まれた凸多面体です.
頂点のまわりに集まっている多角形の状態は,すべての頂点で同じです.
しかし,辺のまわりの状態は,すべての辺で同じとは限りません.
アルキメデスの半正多面体といい13種類あります.
(右回りと左回りを区別するなら15種類)
特に,辺のまわりの状態が.すべての辺で同じものは,準正多面体と言います.
■準正多面体(半正多面体に含まれる)
立方8面体と12・20面体の2種類があります.

(2)菱形12面体と菱形30面体について
これらの多面体は,準正多面体の双対として得られます.

http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/62/16035662/img_0?1407764464

■菱形12面体と菱形30面体を万華鏡で作ろう

http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/62/16035662/img_1?1407764464

http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/62/16035662/img_2?1407764464

■菱形12面体は空間を充填できる
実は,菱形12面体は,立方面心格子のウィグナー=ザイツ
(あるいはデリクレ)胞に他なりません.

http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/62/16035662/img_3?1407764464

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立体万華鏡

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数学月間SGK通信 [2014.08.05] No.023
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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皆さま如何お過ごしでしょうか?書中お見舞い申し上げます!
現在,数学月間(7/22~8/22)の期間中です.暑い最中ですが
数学月間懇話会(7/22),とっとりサイエンスワールドin米子
も無事終了しました.

■プラトンの正多面体

正多面体とは,次の(1),(2)を満たすもので,
特に凸多面体がプラトン正多面体と呼ばれる:
(1)すべての面が同一の正多角形でできている
(2)すべての頂点まわりの状態は同一である
従って,正p多角形が頂点まわりでq個集まっている正多面体は
{p,q}と表記できる.これを正多面体のシュレーフリの記号という.

http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/27/16014627/img_0?1407156023

■5つのプラトン正多面体を万華鏡で作る

上図の各多面体には鏡映対称面がたくさんあります
(煩雑になるので記入していません).
各多面体で3つの鏡映面を選び,これを鏡とする万華鏡を作れば
それぞれの多面体の映像が見られるでしょう.
ここでは,幾つかの多面体に共通な鏡映対称面を利用して
まとめてプラトンの正多面体の映像を生成してみましょう.

http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/27/16014627/img_1?1407156023

http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/27/16014627/img_2?1407156023

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とっとりサイエンスワールド2014in米子

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数学月間SGK通信 [2014.07.29] No.022
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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8月2日(土)は「とっとりサイエンスワールドin米子」です.
2014年度〔西部in 米子〕は,日本数学教育学会第96回全国算数・数学教育研究(鳥取)大会
とコラボで実施されるので,会場が例年の児童文化会館とは異なるようです.
米子コンベンションセンターにて(12:00~16:00) 

私も万華鏡で参加します.
米子では110人分用意しました.分数型の万華鏡を作製します.
以下に画像を掲載します:
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/37/15996337/img_0?1406563191

http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/37/15996337/img_1?1406563191

http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/18/15996418/img_0?1406562991

http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/18/15996418/img_1?1406562991

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数学月間の初日

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数学月間SGK通信 [2014.07.22] No.021
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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本日は数学月間(7/22-8/22)の初日です.
22/7=3.14....=π ,22/8=2.7...=e
数学に興味を集めるようなイベントが
各地で盛んになることを応援しています.
まず初日は数学月間懇話会です.
◆数学月間懇話会(第10回)
日時●7月22日,14:00-17:10
1.人口の集合関数としての「民力指数」
 松原望(東京大学名誉教授,聖学院大学)
 14:10-15:10
2.スパゲッテイを巡る旅,
 中西達夫(株・モーション)
 15:20-16:20
3.数学月間の狙と効用,今年の米国MAM
 片瀬豊,谷克彦(日本数学協会)
 16:30-17:10
ーーーー
会場●東京大学(駒場)数理科学研究科棟,002号室
最寄り駅●京王井の頭線「駒場東大前」
参加費●無料
問合せ先●日本数学協会,数学月間の会(SGK)
sgktani@gmail.com,谷克彦(SGK世話人)
直接会場においでください(開場13:30).ご参加お待ちしています.
17:30より構内で各自払いの懇親会も予定しています.

◆幾何学的な消滅
さて,メルマガ020に掲載した 幾何学的な消滅 のその後の記事です.
メルマガ020の図面のように作製してみましたが,
断層を挟んだ行だけが明らかに(目立って)小さくなるのです.そこで,
初期状態のこの行だけ目立たない程度大き目に作ろうかと考えていたところ,
以下の動画を発見しました.
http://youtu.be/QbpfjM0NP7Q
さすがマジシャンもうひとひねりあったのです.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/497823/11/15935811/img_2?1405950272
パーツ2は表面が(A)で裏面が(B)です.
従ってこのパーツの断面形状は台形です

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幾何学的な消滅

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数学月間SGK通信 [2014.07.15] No.020
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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幾何学的な消滅

◆7×9の板で1コマが幾何学的に消滅する
これは今年の米国MAMで取り上げられたマジックです.
http://www.mathaware.org/mam/2014/calendar/areapuzzles.html

まずは,アルゼンチンのマジシャン,ノルベルトジャンセンによるプレゼンを
ご覧ください. http://youtu.be/3PszMaZ5Ipk
7x9のエリアにタイル片が配置されています,断層に沿って滑らせ
上部の左3コラム分と右4コラム分を入れ替えると,不思議なことにタイルが1つ減ります.
この操作を繰り返すたびにタイルが1つづつ減り3つまで減らせます.
タイルが1つ減っても,2つ減っても,3つ減っても,
元通りの7x9枠内にタイルはきちんと配置され変わらないように見えます.
これは不思議ですね.どうしてタイルが1つづつ余るのでしょうか?

ビデオを観察していると,タイルが消滅する原理がだんだんわかってきます.
原理理解を助ける図を以下に作成しました.
青色の面積がだんだん減じているのがわかります.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/497823/11/15935811/img_1?1405218032

このおもちゃを作製して見ようとする方は,この原理図を参考にしてください.
数学マジシャンの使っているタイルのパーツは目地が太いですね
私の原理図には,目地はありませんが,作製するときは目地の効果も考慮すべきでしょう.
結局,断層をはさんだある行だけ,1コマ縦の長さが1/7だけ縮むので,
7コラムあるから面積としては1コマ分取り出せることになります.

◆なぜタイルが1コマ減るのか
左のコラムと右の3列を入れ替えると,1コマ減る.
1コマの高さをbとすると,断層を挟んでb/4だけ縮みます.
ただし,右端のコラムの断層ではコマ間の目地が消えるのが残念!
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/497823/96/15937596/img_3?1405215030

◆真ん中を取り除いたお札が再現できる
http://youtu.be/-h0AXeLIHqQ
お札の中心を取り除いて,裏向きにして並べると
完全な1枚が再現できたように見えます.
真ん中が消えるとは,あり得ないことが起ったように見えます.
数学マジシャンの使っているおさつの裏面には
再配列したときに完成するようなお札の裏面の絵が描いてあるので
お札が再現したように錯覚します.以下の原理図を参考に作製してください.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/497823/96/15937596/img_0?1405215030

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完全なる建築=モダーン建築術を支える数学(下)

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数学月間SGK通信 [2014.07.12] No.019b
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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ロンドンシティホール
ロンドンシティホールは,ロンドン市長,ロンドン議会,大ロンドン当局を収容する.
ガラスの使用と内部の巨大ならせん階段が,
透明性と民主的プロセスへの近づき易さを象徴しているようである.
外部から見たとき,最も印象的なことは,建物の奇妙な形である.

http://plus.maths.org/issue42/features/foster/egg.jpg
テムズ川にかかるロンドンシティホール.

テムズ川の土手の上に置かれて,建物は,川原の小石を思わせる.
そのまるみが再び民主的な理想を思わせる.けれども,ガーキンと同じように,
形が決められたのは,単に形のためだけではなく,エネルギー効率を最大化するためでもある.
これを実現する1つの方法は,建物の表面積を最小にすることである.
それにより,望まない熱の損失と流入を防ぐことができる. 諸君の中の数学者は,
あらゆる形の中で,体積を基準にすると,球形が最も表面積が小さいことを知つている.
これが,ロンドンシティホールが球に近い形をしている理由だ.
建物の不均衡も同じくエネルギー効率に貢献する:南面のオーバーハングが,
ここの窓を上階の床で陰にして,夏季の冷房需要を低下させる.ガーキンでと同じく,
コンピュータモデリングが,建物の中で気流が如何動くか示し,
自然の換気が最大になるように建物内の形が選ばれた.実際,建物は冷房を必要としない.
同程度のオフィススペースのエネルギーに比べ,たつた1/4と伝えられる.
螺旋階段さえ,単に審美的理由で選ばれたのではない.それらの分析の一部として,
ロビーの音響効果,人々の声が適切に聞こえるような建物をSMGは設計した.
初めは音響効果は,広いホール内をエコーが跳ねるという状態でひどく,
何らかの対策が必要だった.Foster+パートナーの過去のプロジェクトの1つが手がかりを提供した:
ベルリンの Reichstag は大きいホールを含むが,大きい螺旋の傾斜路があり反響が起きない.
SMG はロンドンのシティホールに同様な螺旋階段のモデルを作り,
Arup Acoustics会社がこの新モデルの音響効果を分析した.諸君は,
以下のアニメーションで,音が階段後ろに閉じ込められ,エコーが減じるのを見ることができる.
このアイデアは最終設計に採用された. (アニメーション © Arup Acoustics.)

ロンドンシティホール
http://plus.maths.org/issue42/features/foster/gherkin_outside_web.jpg
ガーキンの全貌.平面パネルが曲面を近似していることに注意.映像 © Foster + Partners

ガーキン,ロンドンシティホール,他の多くのFoster+パートナー作品がたいへんモダーンに見えるのは,
外側が曲面であるためだ. これらは,名うての困難さで,建設費が高くなる.
そこで幾何学者のチャレンジがある:単純な形から作る一番良い方法は何か?
” これは我々の主たるチャレンジの一つだ,”De Kestelierは語る,
”我々のプロジェクトの実に99%は,いかなる曲面も使っていない.
例えばガーキン,1種類の曲面パネルはトップにあるレンズのみ.
建物が曲面という印象は,多数の多角形の平面パネルで曲面を近似的に作ることで生じる.
パネルが多いほど錯視も真実味をおびる.
複雑な表面を記述するこのような平面パネル解を見いだすことで,
SMG は専門家になった.De Kestelier が説明するように,幾何学[その形]は,
しばしば経済により決定される:”我々は矩形に近いパネルを使う傾向がある.
なぜならそれはいっそう経済的であるからだ.資材をカットするとき安くなる.
三角形では,多くの材料ロスがあるが,矩形に近いとロスが少ない.
矩形に近いと構造が少ないので,視覚的にもさらによい.”これは,
表面が完全に矩形から成り立っているロンドンシティホールで例証される.
実際、ロンドンシテイホールは,理想的な幾何学形と建設容易さのバランスをとる必要性を
よく例証している: 扱い難い丸い形はスライスに切ることで扱われた.スライス一つ一つは,
僅かに傾いたコーンで,容易に数学的に記述でき,平面パネルでの近似も容易である.

合理的な設計
数学的な方程式で記述されるコーンのスライス,トーラス,球などの表面は,
しばしば,SMGデザインの基礎となる. これらを,バーチャルモデル創造に使うときに,
数学的に生成される表面はコンピュータ上で容易に表現できるので,たいへん利点がある.
多くの個別座標を蓄え記述する構造ではなく,方程式を蓄えるだけでよい.
表面の正確な形は方程式のパラメータを変じて制御できる(例として下図を見よ).
平面解はやはり比較的容易に設計できる:ソフトウェアはオリジナルの表面の
ノードポイント集合に直線を引くようにする.

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これらの表面は,関数z=e^-a(x^2-y^2) のグラフである.ここで,
3次元座標系は,x,yと垂直z軸である. a は表面の形を決める.
第一の表面はa=1 ,第二の表面はa=5 ,第三の表面はa=7 .

数学的に定義された要素の集合からなる複雑な構造を考えるのは,
バーチャル世界では有用ではない:実際にどのようにそれを建設するべきかを,
建物モデルの建設の一歩一歩のガイドにつくる.合理化のこのプロセスは,
もう一つの SMG の仕事の重要な部分だ.前と同じように,数学的な完全性は,
実用性のために道を明渡さなければならない:"2~3週間前に,
誰かが楕円の一部である壁のプランのことで私のところに来た”De Kestelierは語る.”
もちろん楕円は数学的には描くのは易しい.それをさらに合理化することをなぜ望むのか?さて,
私は楕円のこの部分を3つの円弧に合理化することを決めた.
理由は,壁の建設で,コンクリート壁用の型が要るためだ.これは全体の形を建設するのに
多くの型パネルを使ってなされる.もし諸君が楕円にしたいなら,
すべての型パネルは異なっていなければならない:楕円の周囲を進むと,
楕円の曲率はたえず変化しつづけるのだから. もし楕円をやめて3つの弧にするなら,
諸君が必要とするのは,3セットのパネルだけで,各セットのパネルは同じである.
これはずっと簡単になる." 数学者に理想的なものは常に建築家に理想的であるわけではない.”

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英国博物館の屋根.設計Foster+パートナー

博才の人
SMG が,建物の外見と気流・音響のような物理現象の双方をモデル化するには,
コンピュータプログラミングを使う.幾何学[形]の理解は,デザインと建設プロセスに直結する.
建築家でなく数理科学の専門家なのか?SMGメンバーの8人中7人が,プロの建築家だが,
専門的知識は,複雑な幾何学,環境シミュレーションからパラメトリックなデザイン,
コンピュータプログラミングにまで及んでいる.
グループの8番目のメンバーはエンジニアで,主プログラマーである.
こみいった数学に基づき,物理的特徴をモデリングするとなれば,
チームはしばしば専門コンサルタントを使う.”チーム内で予備的な解析を行う.
もしさらに知りたければ,別の解析を行う.我々は,専門コンサルタントとデザイナー間の接点となる,
”Petersは説明する.純粋数学,幾何学は如何? どれぐらい複雑なのか?
"オフィスに1Aレベルの本がある. ” とDe Kestelierが語る.結局のところ,
それはすべて建設可能な構造を作ることに関わり,古典幾何学を越えるものはここでは用いない.
SMG の大部分の活動には数学が付随しているのだが,彼らのデザインとは,
仕事に対して制限を与えるものであるとPetersとDe Kestlierは主張する.
"悟るべき重要なことは,我々はアーキテクチャで働くプログラマーではなく,
プログラミングをするアーキテクトだということだ,”De Kestlierは語る.
Ptersは同意する:”我々の主な仕事はモデリングではない.
プロジェクトのパラメータは何かを理解し,噛み砕き定義できる規則にする.
我々は,何処に適応性があり何処に制限があるかを理解できるようにする.
”制限の最適化と建設可能な物体の創造.もちろん,建築家はいつもそうしてきたし,
PetersとDe Kesteierも建築の仕事は本質的には変わっていないと思っている.
現代のデジタルツールにより,今日の建築家は,
過去の世代には夢であったデザインオプションの領域も探索できるようになっただけだ.
形と模様,科学とコンピュータの言語として,これらのツールを譲渡処分にしたのは数学だ.
数学は,確かにその料金を取り戻している. (訳:谷克彦)
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Xavier(左)とBrady(右)はFoster+Partnersのモデリング専門家メンバーである.
プラスは,ロンドンの数学と芸術ブリッジ会議(2006年)で,二人に出会った.
ブリッジ会議の詳細はウエブサイトにある.
著者:Marianne Freiberger(プラス編集者)

◆編集後記
019号はa,bで完結です.ところで,
ガーキンに良く似た超高層ビルが新宿にあります.2008年に完成した
東京モード学園が入っているコクーンタワーです.コクーンとは繭のことですが
どちらかというとセミに似ているビルです.設計は丹下都市建築設計です.
新宿で大変目立つビルです.写真は以下のブログにあります.

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