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数学に関心を

投稿日時: 2020/05/13 システム管理者

このマガジンの数学月間とは題名に違和感を感じている方もおられるでしょう.「数学月間」とは7/22-8/22のひと月を指します.この期間は22/7=3.14・・・(π)と22/8=2.7・・・(e)に因みます.
日本の数学月間は,(故)片瀬豊さんの提案により2005年に日本数学協会が7/22-8/22を数学月間と定めたことに始まります.2005年の発足以来,ボランティア・ベースながら,毎年,「数学月間」の初日7/22に,「数学月間懇話会」を開催し,啓蒙的な講演を一般市民に対し実施してきました.2020年の7月22日にも第16回の開催予定です.今年は,集会の実施は困難が予想されるので,初のZOOMによるリモート開催の計画です.
「NPO法人数学月間の会」のホームページhttp://sgk2005.saloon.jpに情報を随時掲載します.
(注)2005年から始まった「数学月間の会(代表:片瀬豊)」は,昨年から,「NPO法人(理事長:岡本和夫)」になりました.このような数学月間活動は米国MAMに学んで始めたものですが,米国MAMのように国家的行事として行うべき性質のものです.現在は個人寄付金とボランティア・ベースで実施していますが,活動を社会に波及させたいものです.「NPO法人数学月間の会」は,数学同好会ではありません.数学の内部にとどまらず社会の諸分野に横断的に呼びかけ活動し,「社会と数学の架け橋」を目指します.情報を共有しましょう.仲間に入りませんか.
問い合わせ先や詳細はhttp://sgk2005.saloon.jp にあります.
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■米国MAM(Maths Aeareness Month)はレーガン宣言から始まった

全文を掲載します.どなたの草稿か知りませんが,格調高く今日でも心を打ちます.米国MAMのスタート時は月間行事ではなく,週間行事MAWでした.

原文は以下にあります.
https://www.gpo.gov/fdsys/pkg/STATUTE-100/pdf/STATUTE-100-Pg4430.pdf
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アメリカ合衆国大統領による宣言5461
「国家的数学週間」1986年4月17日
宣言(National Mathematics Awareness Week)

およそ5000年前,エジプトやメソポタミアで始まった数学的英知は,科学・通商・芸術発展の重要な要素である.ピタゴラスの定理からゲオルグ・カントールの集合論に至る迄,目覚ましい進歩を遂げ,さらに,コンピュータ時代の到来で,我々の発展するハイテク社会にとって,数学的知識と理論は
益々本質的になった.社会と経済の進歩にとって,数学が益々重要であるにも拘わらず,数学に関する学課が米国教育システムのすべての段階で低下する傾向にある.しかし依然として,数学の応用が医薬,コンビュータ・サイエンス,宇宙探究,ハイテク商業,ビジネス,防衛や行政などの様々な分野で不可欠である.数学の研究と応用を奨励するために,すべてのアメリカ人が日常生活において,この科学の基礎分野の重要性を想起する事が肝要である.上院の共同決議261で,国会が1986年4月14日から4月20日の週を,
国家的な数学週間に制定し,この行事に注目する宣言を出す事を
大統領に要請した.今日,アメリカ大統領,私ロナルド・レーガンは,
1986年4月14日から4月20日の週を国家的数学週間とする事を,ここに宣言する.私はすべてのアメリカ人に対し,合衆国における数学と数学的教育の重要性を実証する適切な行事や活動に参加する事を勧告する.
その証拠として,アメリカ合衆国の独立から210年の西暦1986年の4月17日,ここに署名する.ロナルド・レーガン(Ronald Reagan)
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長くなりますので,活動の様子は省略し,年度別テーマのリストを掲載します.(注)2017年からMSAMに変わりました.追加されたSはStatistics統計学です.

■MAMの年度別テーマの推移
http://www.mathstatmonth.org/mathstatmonth/msamhome

1986数学----基礎的訓練
1987美と数学の挑戦
1988米国数学の100年
1989発見のパターン
1990通信数学
1991数学----それが基本
1992数学と環境
1993数学と製造業
1994数学と医学
1995数学と対称性
1996数学と意思決定
1997数学とインターネット
1998数学と画像処理
--MAWからMAMへ------
1999数学と生物学
2000数学は全次元に
2001数学と海洋
2002数学と遺伝子
2003数学と芸術
2004ネットワークの数学
2005数学と宇宙
2006数学とインターネット保全
2007数学と脳
2008数学と投票
2009数学と気候2013持続可能性の数学
2010数学とスポーツ
2011解明進む複雑系
2012統計学とデータの洪水
2013持続性の数学
2014マス,マジック,ミステリー(Martin Gardner記念)
2015数学はキャリアを駆動する
2016予測の未来
2017年より,MSAMがテーマになる
注)略語表
MAM:Mathematics Awareness Week
MAM: Mathematics Awareness Month(4月)
AMS:American Mathematical Society米国数学会
MAA: Mathematical Association of America米国数学協会
SIAM: Society for Industrial and Applied Mathematics工業応用数学会
ASA: American Statistical Association米国統計学協会
JPMB: Joint Policy Board for Mathematics米国連結政策協議会
*)2006年から、ASAが加盟することになった.

■編集後記
数学月間は数学者のものではなく,一般人が対象です.数学は,ものごとの本質を追求し,装飾を剥ぎとり,その本質をあぶりだします.
出来上がった抽象化された概念体系(定理)を,数学者は美しいと感じます.数学とは,そのような理論体系であるべきことは確かです.
しかし,このようにして出来上がった抽象的な数学を見せられても,
一般人は興味が湧かない.そこで,数学月間は<数学と社会の架け橋>として,数学が実際の課題に使われていることを示して行こうと考えています.
かつて,物理学の現場で数学が生まれている時代がありました(ニュートンの微積分もその例です).数学は自分の生まれた源泉を離れて抽象化に専念していることに,著書の前文で警鐘をならしたのはクーラントとヒルベルトでした.源泉に立ち返って数学を見るときっと共感を感じることでしょう.

大学の数学では,完成され抽象化された数学を,数学科の先生が教えます.
これは,数学科の学生に対する教程としてはオーソドックスなものですが,
数学科でない学生には不親切であります.工学,薬学,経済学など,
それぞれの専門に適した数学の基礎教程が必要でありましょう.