球の高密充填

投稿日時: 2021/12/08 システム管理者

球の密な充填(積層).結晶学と構造工学における重要性

球の3次元充填でこれがが最密であるというKepler予想は肯定的に証明されました.この予想の証明は難問で400年もかかりました.しかし,ここでは,その構造が最密であるという断定はあえて避け,密な充填というレベルにとどめます.さらに,ここで考察するのは,厳密に言うと,球のランダムな充填は検討外で,球の最密配列層の積層(規則的)の範疇に留めていますです.そのため,充填ではなく積層という言葉を使うようにしています.

(注)ケプラーはまた、球を敷き詰めたときに、面心立方格子が最密になると予想した。 この予想はケプラー予想と呼ばれ、規則正しく敷き詰める場合に関してはカール・フリードリヒ・ガウスによって早々に証明されたが、 不規則な敷き詰め方に関しては、400年もの間未解決の問題であった。ケプラー予想は1998年に、トーマス・C・ヘイルズによって、コンピュータを駆使して解決された。wikiより引用----
現在,離散体(=結晶空間)の対称性は,結晶学や固体物理学で関心を持たれていますが,その理由は,すべての結晶は離散体であるからです.しかし,この問題は,他の学問分野や工学分野からも少なからず関心を集めています.特に,建築美術では,空間的な構造を計算する方法がなく,「平面的な問題」にとどまっていましたが,今日では,離散体の対称性理論は,建設工学に応用されるようになりました.ここでは,レンガ積みやトラス構造などや,物体を最も密に詰めるという問題に係わります.隙間や重なりなく平面を充填したり分割する様式や球の密な充填様式は,N.V. Belov(1947年)とToth(1953年)の問題提起が参考になります.


一見すると,球を高密度に充填する方法は1つしかないように見えますが,実際には無限にあります.これを理解するために,同一の球を,それぞれの球が6つの球に接するようにして1層並べてみましょう(図195のa)[パチンコ珠をトレィに並べた様子です].この配置は平面では,最も密度の高いものになることがわかっています.これを,第1層として層の積み重ねを考えます.第2層の球を,第1の層の上に,最も密な配置となるような唯一の方法で配置することができます:第2層の球の 1 つは,2の位置または 3の位置の窪みを占めることができますが,これらは,どちらも同じ結果になります.次に,第3層を,出来上がった2層系の上に積み重ねるわけですが,2つの方法があります:第3層の球は,第1層の球と同じ位置を占めるか,第2層の球が2の位置にある場合は3の位置(第2層の球が3の位置にある場合は2の位置)を占めるかです.このようにして得られた2種類の3層系の違いは,第3層の層の球を投影した時,第1層の球と一致するかしないかにあります.
球の中心を平面に投影すると3種類の位置ができますが(図195のb),どのような積み重ねであろうとも,この3つの位置以外に球は存在しないことがわかります.したがって,球の最も密な充填は,数字の1,2,3からなる記号で表すことができ,これらの数字の有限または無限の列のなかで,同じ数字が2つ続かないようにします.明らかに,この条件を満たす3つの数字の配列様式は無限です.したがって,球の最密充填は無限にあります.無限に続く数字の列が,ある同一の有限の組み合わせを周期的に繰り返すならば,その構造は対称的(周期的)です.そうでなければ,同じように球を高密度に積み重ねても,少なくとも層に垂直な方向には,非対称(非周期的)な構造になります.例えば,12312 12312 12312....は,12312という組み合わせが周期的に繰り返されていることから,対称的(周期的)な5層構造と定義されます.この列の2つの数字の間に,1つの余分な数字を挿入すると,構造の並進対称性が一気に崩れます.
対称的(周期的)な積層において,すべての球(半径は等しい)の構造中で占める位置は,互いに同価ではないことに注意しましょう(同価性は3層構造の場合にのみ当てはまります).多層構造のすべての球には,構造のすべての層ではないが,異なる層にある並進同価な球の無限集合があります.非対称な積層では,同じ球は同じ層の同じ位置にしか入りません.
球の最密充填は,どのような対称群になるでしょうか.ある対称的な積層に対応する数字の配列を見ましょう.数の列が,左から右に読んでも、右から左に読んでも同じなら,構造には対称面となる層平面が存在します.例えば,列1213121312.....では,対称面は層2と層3にあります.もし,順方向と逆方向の読み取りで,数の並びが違っているなら,構造に層(水平方向)に沿った対称面はありません.水平方向の対称面を持つすべての構造は,同じ6方対称($$P6_{3}mmc$$)を持っています. 例えば,6方対称の2層積層12(図196のa)は,このような対称性です.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

対称要素と球の積層構造の投影図を重ね合わせ,第1層の球を実線で,第2層の球を破線で示します.第1層から第2層への変換は,紙面に垂直な螺旋軸$$6_{3}$$と$$2_{1}$$の回転(単位胞への投影はこれらの軸のよぎる点で,それぞれ羽付きの黒い6角形とレンズで表示),反転(紙面から$$c/4$$上にある白丸),並進$$c/2$$を伴う回映(破線)の垂直な映進面(破線で表示)が担う.これらの要素に加えて,この投影図には,垂直方向と水平方向の対称面が描かれています(後者は1番目の層の球の中心と一致しています).水平な対称面間を通過する水平な2回軸は,投影図には表示しません.
水平な対称面を持たない球配列(立方体の3層配列を除く)は,すべて3方対称性を持つ.例えば,12132の3方対称の5層積層は,空間対称群が$$P\bar{3}m1$$である(図196, b).与えられた投影図は,各層1,2,3の球をそれぞれ長短の点線と実線で表しています.
4番目の層の球は1番目の層の球と,5番目の層の球は2番目の層の球と,投影が一致しています.紙面上にある対称心(小さな白い円)は,3番目の層の球の中心と接点に一致しています.同じ中心で,4番目の層の球(紙面上)は2番目の層の球(紙面より下)に,5番目の層の球は1番目の層の球に映されます.
この投影図には,対称心のほかに,垂直方向の対称面(実線),映進面,垂直方向の単純軸と回反軸$$3, \bar{3}$$が示されています.水平方向の対称軸$$2, \bar{2}$$は,投影されていません.

図196のcは,立方面心格子の対称性を持つ3層構造の投影図です$$Fm\bar{3}m$$.図193のcとは対照的に,このグループの対称要素は,垂直軸$$3$$に沿って図面上に投影されており,点群$$m\bar{3}m$$のステレオ投影の中心は,球の中心と一致しています.1番目の層の球の中心は紙面の中心にあります.1番目の層の球から2番目の層および3番目の層の球(図中に数字で示されている)への移行は,垂直な螺旋軸$$3_{1}, 3_{2}$$で回転させることによって行うことができます(それらの投影は,羽付きの小さな黒い3角形で示されています).また,対称心(レベル$$c/6$$および$$c/3$$の小さな白い円)で反射させることもできます.2番目の層と3番目の層の球の中心は,投影図に対応する数字で示されているように,レベル$$c/3$$と$$2c/3$$にあります.さらに,この投影図では,レベル$$c/2$$にある対称心が,2番目の層と3番目の層3の球と映進の垂直面を結んでいます.群$$Fm\bar{3}m$$の対称要素の一部は,投影図には表示されていません.

立方および6方の高密度充填の3次元モデルを図197のa,bに示します.2層積層では、位置3(図195のa参照)が球で占められておらず,層に垂直に走る構造的なチャネルが,6次の$$6_{3}$$の3方向のらせん軸とその方向で一致している.立方積層には,構造上のチャンネルがありません.この2つの積層は,ほとんどの化学元素の結晶構造や,多くの無機化合物や鉱物の構造における陰イオンの積層に対応しています.